夜光照らす百花の先触れ｜リアクション

夜光照らす百花の先触れ

　ライトアップされた梅林に包み込まれるようなミニカフェは、連日多くの人で賑わっていた。もちろん、ミニカフェのスタッフは連日大忙しだ。
「お待たせしました。こちら、ご注文の品でございます」
　軽やかにテーブルの間を動き回るヴィーゼ・ベルンスタインも、そんなスタッフの中の一人だった。
　普段から霊界でウェイトレスをしているだけあって、盛況な中でもよどみなく仕事をさばいていく。
「すいませーん」
「は～い、ただいまお伺いします」
　届けたそばから声がかかって、すぐに次のテーブルへ。
「ホットの梅ドリンクと……えっと、スイーツのおススメってあります？」
「梅タルトはいかがでしょう？　甘酸っぱさがクセになりますよ。もし酸味が苦手でしたら――」
　聞かれればスラスラと、聞かれなくても迷っている気配を感じたら、すっとおススメをご提案。見事な仕事ぶりを見せるヴィーゼだが、こう忙しいとひとつだけ困ったことが。
　未配膳の品が溜まりはじめているのを見かけ、まとめて運ぼうと血の腕を――ってダメダメダメ！
（……危なかったわ）
　そう。忙しさのあまり、いつもの癖で血の腕を使ってしまいそうになるのだ。
　操作するのは自分なので、大変さはほぼ変わらない。だけどやっぱり、慣れた「手」をついつい使いたくなってしまう。
　そこへちょうど、注文を流しに鴻上彰尋がやってくる。
「５番テーブルさん、梅タルトふたつとホットチョコレート、梅ドリンクです」
「ちょうど良かった。鴻上くん、３番さんと４番さんのご注文、お願いできる？」
「はい、任せてください」
「ありがと、じゃあお願いね。あとは私が持っていくから」
　彰尋に半分任せ、ヴィーゼは残りを運んでいくのだった。

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