【月影塔】上層階を阻む蛇竜を倒せ！｜リアクション

【月影塔】上層階を阻む蛇竜を倒せ！

　桜井もまた、空中に浮かぶ氷の塊を飛び移りながら蛇竜の傍へ接近してゆく。
「目が潰れたならチャンスだ！　真白！　奴の翼を狙え！」
　地上で待機していた真白は、すかさず全魔力を注ぎ込んだ硬化矢を発射！
　氷の足場を砕きながら、冷気を帯びた痛烈な一撃が蛇竜の片翼を撃ち抜いた！
「なるほどね、翼を叩けばいいのか」

　剣の柄から光の散弾を発射していたティオレは一点集中！
　宣言通り、ゼロ距離から青光剣の刃をグレートソードにし、そのエネルギーを叩きつけるかのように蛇竜の翼ごと刺し貫き、硬い鱗を斬り裂いた。
「ざまあみろ！　これであんたは火を這う蛇だ！」
　揚力を失った蛇竜が墜落！　地鳴りと共に巨体が石畳に叩きつけられた！
「やったよ！　あとは仕上げだね！　ハイヨー、ハダル！」
　ここまで仲間の自動回復に努めてきたタルトが躍動する。
　再び蛇竜の鼻先まで行くと、ハダルの後ろ脚でキック！
「ここまでおいで～♪」
　散々コケにされ続けてきた蛇竜は我慢の限界だ！
　視界が潰れ、冷気で感覚器官がボロボロだが、まだ嗅覚でタルトを必死に追跡してゆく。
　なんていう執拗さ！　しかし、これも桜井の織り込み済みの知識であった！
「蛇のしつこさは初めから知っている！　だからこそ、今だ！　いっけ！　響！　ちょうちょ結び作戦だ！」
「オッケー！　ハダル、蛇竜の身体を飛び越えて！」
「ヒヒーンッ！」
　後ろから迫る蛇の頭から逃げるハダルは、何度も蛇龍の身体を障害物競走のハードルめいて飛び越してゆく。
　これを何度も繰り返すと、急に蛇の頭が前へ進まなくなってしまったではないか。
「やった！　蛇竜の身体を絡めてちょちょ結びに出来ちゃった！」
　もとよりそこまで知能が高くない上に、重要な感覚器官を潰された今の蛇竜ならば、自分の身体が追跡で結わえられてゆくなど想定できるはずもないのだ。
　
「トドメだ！　まずは新兵器のねばねばトリモチ弾を発射できるロケットランチャーを使うぞ！　名前はええと……『ネバーギブアップ』だ！」
　粘り強く諦めない心のままに名付けた新兵器を、絡み合った蛇竜へ向けて乱射！
　すると、蛇竜の結び目はおろか呼吸器官まで粘着弾で覆われてしまい、敵は苦悶で暴れ出す！
　次の瞬間、この場にいる勇士達が一斉に最後の一撃を放つ！
　萌々子が生成した火炎弾を、ぴりりが直接フルスイングで撃ち放つ！
　刀とティオレは残り力を振り絞って蛇竜の鱗ごと肉を断つ！
　真白は魔力が尽きて攻撃はできないが、代わりに武道の扇を刃物のように硬化させた。
「ありがと、真白ちゃん！　最後くらいは、直に殴るぜぃ！」
　凍える刃となった扇の一撃が、蛇竜の鼻柱をカチ割った！
「ハダル！　もう一回キックだよ！」
「ヒヒーンッ！」
　タルトの手綱捌きで加速したハダルが、すれ違い様に蛇竜の腹を強かに蹴り上げる！
　そして決定打は、凍った床を自ら巻き起こした向かい風に乗って滑走する桜井の槍の一撃！