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携帯戦記カプセルギア 第九話「生まれ変わる、カプセルギア！」
虎穴に入らずんば虎子を得ず――という考えがあったかはさておき。
何となく嫌な予感はしながらも、蒼はアンケートに回答するための列に並んでいた。こういうときの『カン』ほど軽視できないことは、ゲームの攻略中でも何度となく救われて実感している。なら、どうして列に並んでいるかというと、相手の狙いを知るためだ。
自分の身だけを守るのなら、関わらないべきだということは分かっていても、巻き込まれている人が多数いる以上は無視できない。言葉巧みに誘導され、妙な事態になるやもと身構えている間に、蒼の順番が回ってきた。
けれど、アンケートはありふれた物で、『どんなエフェクトが好きか』や『追加してほしい機能は』など、特段警戒するような設問は一切無い。……本当に、愛光堂の社員なのだろうか。少し気が立っていただけで、やっぱり事件は解決していたのだろうかと安堵しかけた、その時。
「ではこちらが、ご協力頂いた皆様にお渡ししている新パーツです！」
差し出されたのは、『天然石付きのミサンガ』とそれによく似た『輪状のパーツ』で、トレーディングカード程の台紙に小綺麗に固定されていた。ちょっぴり豪華には見えるけれど、アンケートの謝礼なのだから驚くほど高価ではないはず。なのに――蒼の直感は『受け取るな！』と告げていた。
「ギアとお揃いで付けられるんですよ。ぜひバトルが上達することを願って、一緒に身に着けてくださいね」
ぞわりとした何かが体中を駆け抜け、頭の中に警告音が響いているような気さえする。蒼は反射的に差し出しかけた手を引っ込め、丁重に断りを入れようとよそ行き用の笑みを浮かべた。
「いえ、私はカプギアでもっと楽しく遊べるようになったら、それで……」
「そうおっしゃらずに！ 貴重なお時間とご意見を頂きましたので、ぜひお試し下さいっ！」
押し切られる形で手に握らされ、蒼の疑心は確信に変わる。恐らくこの一団の目的は、新パーツと称した何かを配るために、アンケートという形を取ったに違いないだろう。
無料配布は大々的に行われていないと警戒されやすくなってしまうが、そのためには事前に配布場所の許可なども必要で、愛光堂を詐称して不審物の配布をするのには向かない。けれど、何かを行った謝礼であればひっそり行っていても素直に受け取って貰いやすくなるし、騒ぎになりそうであればすぐに雲隠れできる。
つまり――これは、絶対に身に着けてはいけない。
「ありがとうございます！ どこに着けようか迷っちゃうな～」
浮かれているフリで列から遠ざかり、蒼は広場に目をやった。早速の新パーツを付けて見せ合う人、バトルを楽しむ人。たくさんいるのに、瑠樹だけはぬいぐるみとギアを抱きしめて必死にスマホを操作している。
「どうしたの？」
海堂の病室などで見たことある顔だと思って声を掛ければ、彼は驚いたように肩を跳ねさせ、スマホの画面を慌てて閉じた。そうさせたのは蒼の手元にあるパーツが要因らしく、少し警戒するように蒼を見上げると、瑠樹は勇気を振り絞り問いかける。
「……あの人たちは、愛光堂さんだったかねぇ」
「んーん、違うと思うよ」
あまりにあっけらかんと蒼が言うものだから、瑠樹は言葉を失ってパーツと蒼の顔を見比べた。その様子に苦笑して、蒼は瑠樹と肩を並べるようにしてしゃがみ込む。
「ちょっと敵情視察みたいな？ 使う気はないから、安心して」
今まで一緒に戦ってきた仲じゃないかと浮かべた笑顔に安心して、瑠樹はスマホの画面を見せた。
そう投稿したＳＮＳでは、「決めつけるのは良くない」と否定的な意見もあれば、「危機管理ができててエライ！」と褒める声まで様々ある。瑠樹はそんな声と真っ当から戦うことはせず、それらも愛光堂の問い合わせ窓口に連絡を行っていたと言う。
今は本物か偽物かと判別する材料が足りない。愛光堂からの連絡が無い限り、絶対偽物だと断定するための確固たる証拠がない限りは、この場で注意喚起することが危険を伴うと瑠樹にだって理解できる。だからと黙っているのも悔しくて、瑠樹は１人ネットの海で戦っていたのだ。
それほど、あの一団が胡散臭そうに見える。その意見には蒼も同意するし、警戒するのは悪くない。しかし、このままでは『アンケートに答えなかった子』として悪目立ちしている瑠樹が書き込み主だと感づかれ、直接狙われかねない。
何せ、普通の小学生である瑠樹のアカウントは、決して拡散力があるとは言い難いはずだ。なのに、投稿してさほど時間が経っていないうちから、こうした反応がある。いくらカプギアが幅広い年齢層に流行り始めたとは言え、この投稿が多くの人の目に留まりこそすれども、わざわざコメントを付ける必要はない。
あくまで瑠樹も『可能性』と言っているのに、否定的なコメントを付けてしまう理由。暫し考えるように、２人の間には沈黙が流れた。
何となく嫌な予感はしながらも、蒼はアンケートに回答するための列に並んでいた。こういうときの『カン』ほど軽視できないことは、ゲームの攻略中でも何度となく救われて実感している。なら、どうして列に並んでいるかというと、相手の狙いを知るためだ。
自分の身だけを守るのなら、関わらないべきだということは分かっていても、巻き込まれている人が多数いる以上は無視できない。言葉巧みに誘導され、妙な事態になるやもと身構えている間に、蒼の順番が回ってきた。
けれど、アンケートはありふれた物で、『どんなエフェクトが好きか』や『追加してほしい機能は』など、特段警戒するような設問は一切無い。……本当に、愛光堂の社員なのだろうか。少し気が立っていただけで、やっぱり事件は解決していたのだろうかと安堵しかけた、その時。
「ではこちらが、ご協力頂いた皆様にお渡ししている新パーツです！」
差し出されたのは、『天然石付きのミサンガ』とそれによく似た『輪状のパーツ』で、トレーディングカード程の台紙に小綺麗に固定されていた。ちょっぴり豪華には見えるけれど、アンケートの謝礼なのだから驚くほど高価ではないはず。なのに――蒼の直感は『受け取るな！』と告げていた。
「ギアとお揃いで付けられるんですよ。ぜひバトルが上達することを願って、一緒に身に着けてくださいね」
ぞわりとした何かが体中を駆け抜け、頭の中に警告音が響いているような気さえする。蒼は反射的に差し出しかけた手を引っ込め、丁重に断りを入れようとよそ行き用の笑みを浮かべた。
「いえ、私はカプギアでもっと楽しく遊べるようになったら、それで……」
「そうおっしゃらずに！ 貴重なお時間とご意見を頂きましたので、ぜひお試し下さいっ！」
押し切られる形で手に握らされ、蒼の疑心は確信に変わる。恐らくこの一団の目的は、新パーツと称した何かを配るために、アンケートという形を取ったに違いないだろう。
無料配布は大々的に行われていないと警戒されやすくなってしまうが、そのためには事前に配布場所の許可なども必要で、愛光堂を詐称して不審物の配布をするのには向かない。けれど、何かを行った謝礼であればひっそり行っていても素直に受け取って貰いやすくなるし、騒ぎになりそうであればすぐに雲隠れできる。
つまり――これは、絶対に身に着けてはいけない。
「ありがとうございます！ どこに着けようか迷っちゃうな～」
浮かれているフリで列から遠ざかり、蒼は広場に目をやった。早速の新パーツを付けて見せ合う人、バトルを楽しむ人。たくさんいるのに、瑠樹だけはぬいぐるみとギアを抱きしめて必死にスマホを操作している。
「どうしたの？」
海堂の病室などで見たことある顔だと思って声を掛ければ、彼は驚いたように肩を跳ねさせ、スマホの画面を慌てて閉じた。そうさせたのは蒼の手元にあるパーツが要因らしく、少し警戒するように蒼を見上げると、瑠樹は勇気を振り絞り問いかける。
「……あの人たちは、愛光堂さんだったかねぇ」
「んーん、違うと思うよ」
あまりにあっけらかんと蒼が言うものだから、瑠樹は言葉を失ってパーツと蒼の顔を見比べた。その様子に苦笑して、蒼は瑠樹と肩を並べるようにしてしゃがみ込む。
「ちょっと敵情視察みたいな？ 使う気はないから、安心して」
今まで一緒に戦ってきた仲じゃないかと浮かべた笑顔に安心して、瑠樹はスマホの画面を見せた。
愛光堂の研究員を名乗る怪しい人が、
アンケートとバトルを楽しもうと誘ってくるようです
愛光堂を騙る詐欺の可能性もあるので気を付けて！
そう投稿したＳＮＳでは、「決めつけるのは良くない」と否定的な意見もあれば、「危機管理ができててエライ！」と褒める声まで様々ある。瑠樹はそんな声と真っ当から戦うことはせず、それらも愛光堂の問い合わせ窓口に連絡を行っていたと言う。
今は本物か偽物かと判別する材料が足りない。愛光堂からの連絡が無い限り、絶対偽物だと断定するための確固たる証拠がない限りは、この場で注意喚起することが危険を伴うと瑠樹にだって理解できる。だからと黙っているのも悔しくて、瑠樹は１人ネットの海で戦っていたのだ。
それほど、あの一団が胡散臭そうに見える。その意見には蒼も同意するし、警戒するのは悪くない。しかし、このままでは『アンケートに答えなかった子』として悪目立ちしている瑠樹が書き込み主だと感づかれ、直接狙われかねない。
何せ、普通の小学生である瑠樹のアカウントは、決して拡散力があるとは言い難いはずだ。なのに、投稿してさほど時間が経っていないうちから、こうした反応がある。いくらカプギアが幅広い年齢層に流行り始めたとは言え、この投稿が多くの人の目に留まりこそすれども、わざわざコメントを付ける必要はない。
あくまで瑠樹も『可能性』と言っているのに、否定的なコメントを付けてしまう理由。暫し考えるように、２人の間には沈黙が流れた。
シナリオ
シナリオデータ
- 担当ゲームマスター
- 前回シナリオ
- シナリオタイプ（らっポ）
-
- シルバーシナリオ（150）
- グループ参加
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- 3人まで
- シナリオジャンル
-
- 日常
- バトル
- オールジャンル
- 定員
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- 20人
- 参加キャラクター数
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年10月29日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年11月05日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2024年11月05日 11時00分
