浜辺が教える恋の音｜リアクション

浜辺が教える恋の音

「修ちゃん遅いのだ！　真央ちゃんがどれだけ風紀委員に絞られたと思ってるのだ！！」
「ご、ごめん……途中であおいと会って話を――いや、部室の整理をしてただけだ」
　真央が怒っているのはそれだけではない。折角早起きをし、各種委員や先生を切り抜け、階段前のお説教を耐え……そこまで苦労してやったのに、占いの結果がさっぱりわからない。
　誰か現れるわけでもなし、おみくじのように何かの暗示があるわけでもなし。むくれる真央は、小さな声で呟いた。
「担がれたとしか思えないのだ……」
「いや、検証材料は多い方が良いだろう。俺も今から試してみる」
　だから安心しろ、と部長らしく振る舞ってみせるが、先ほどの女性との相性を占いたいだけだろう。
「センパイ、明日からやり方を変えてみるのが良いかもなのだ」
「それも後でゆっくり聞くから、暫くそっとしておいてくれないか」
　何やら用事があるらしかったあおい。もしかしたら、同じようにおまじないをしたいのに、恥ずかしがって言わなかったのかもしれない。こうして自分がカップを叩くことで、あおいが屋上に現れるかもしれない。
　そんなことを思いながらも顔は冷静を装って、手順どおりに試す。……が、そこには生温い風が吹くだけだ。
「別に期待してはない。迷信みたいなものだし」
　今日は既に、あおいと会っている。もしかしたら、明日はもっと会話が弾むかもしれないし、事故的ななにかで抱きしめたりだとか、あまつさえ事故チューなんてことになったりしたら――！
「修ちゃん、それで明日のこと……」
「な、なんだ！？」
　少々自分の欲望に正直になりすぎた。
（彼女には誠実に対応したい、こんなおまじないに振り回されるとは、まだまだだな……）
　眼鏡をかけ直し、さも驚いてはいないかのように真央の話を聞けば、手順に間違いがあるのではないかと言う。
「――よし、それも検証が必要だな！」
　今日は、手順が違ってあおいが現れないだけかもしれない。真央の思いつく限りの手順で試せば、いつかはあおいが現れるなんてこともあるかもしれない。

　その後――。
　プラコップに入れた砂を山盛りで海水で固め、ビニールで包んで運んでみたり。
　朝７時に踏まれていない砂を集めて新聞紙で作った紙コップに砂入れてみたり……様々な手法を試した新聞部だが、これといった効果はあげられなかった。
「……かくて結果は全敗した。まじないも呪いも同類項、適当な所で終了するのが良さそうだ――と」
　校内新聞の記事を書き上げた真央は伸びをして、思い出したように携帯を手に取る。

「修君、携帯鳴ってるんじゃない？」
「本当だ、ちょっとごめ……」
『修ちゃん、記事じゃなくても上手くいくの祈ってるのだ』
「――！？」
　声にならない叫びをこらえ、あおいの前で取り繕う修の様子は、とても滑稽だったことだろう。
　幸いにも、相手にそれが伝わらない天然さだったことを、今日ばかりは感謝するのだった。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希
ファンレターはマスターページから！

初めまして、浅野悠希と申します。
ご参加頂きました皆様、どんなマスターかわからない方が大多数だったかと思いますが、
満了という形で執筆できて、とても嬉しく思います。

事前にマスターページをご覧になられた方にはお分かりかと思いますが、
主に乙女ゲーム関連のお仕事をしていたため、一般的な糖度がわかっておりません。
（看板のセリフは普通レベルです）
そのため「こんなに甘くなくていいのに！」とか「もっと甘くしてよかったのに！」
というお声を頂きそうですが
その都度精進していければと思いますので、ご意見ご感想はどこかで頂けると幸いです。

ご参加の皆様、本当にありがとうございました！

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