冒険野郎に捧げる歌｜リアクション

冒険野郎に捧げる歌

　最後にヒロシは稲積柚春とウォルター・Bと共に九夜山へと向かう。
　不思議な景色を見に行けると聞いて、ウォルターの休みを利用して柚春が連れてきた形になった。
　道中、月原想花とねこねこ記者と合流したため、猫が２匹になってしまったが。

「いいのかな……」
「いいのにゃ。記者はおもしろいものを書くのがお仕事なのにゃ！」
「じゃあいっぱい、面白い記事を書いてもらわねば困るニャ！」
「それに、皆で見るほうが楽しいと思うしねぇ。気をつけながら向かおうかぁ」
「そうだね。でも、この山に何があるの？」

　柚春の問いかけに対し、ヒロシはまあ落ち着くニャ、と嗜める。
　先程から森の中をぐるぐる回っているようにしか見えないが……数分もすると、目的地へと辿り着く。

　空に向かって伸びていく、カラフルで透き通った宙に浮かぶ飛び石。
　その名は『天空の階段』と呼ばれており、ヒロシもこの場所を探すのには苦労したと汗を拭う。
　今日限りの特別スポット。これを登らない理由は何処にもない。

「こ、これを……登るの……？」

　想花の身体が少し震える。飛び石の幅は十分に出来ているとは言え、手すりなどは何処にもなく、ただ平面の透明な石が浮かんでいるだけ。
　もし、これで足をすべらせてしまったら、一体どうなってしまうのだろうか。それが頭に過って、いつものヘタレな自分が表に出てきてしまう。

　しかしそんな想花を後押ししたのは、誰でもないねこ記者だった。
　彼はいい記事の題材になる！　と喜び勇んで、ヒロシよりも先に飛び石に飛び乗って上へと登っていく。

「大丈夫？」

　そんな想花の様子に柚春が声をかけた。
　危ないから少し登るだけでも、と１つ提案を促したが、想花はゆるく首を横に振って、覚悟を決めた。

「ぼく、登るよ。こ、怖いけど……怖いけど、題材のために！」

　ここで登らなかったらねこ記者にもヒロシにも笑われてしまう。
　そんな気がしたからか、想花は意を決して最初の飛び石に足をかけて、ゆっくりと登っていった。

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