冒険野郎に捧げる歌｜リアクション

冒険野郎に捧げる歌

「ん？」

　シーサイドタウンのとある空き地。
　倉前七瀬は何かを見つける。

　本来なら何も無いはずの場所。
　しかし今日は何やら不思議な入口がぽっかりと空いており、そこに入ろうとするネコがいた。
　ヘッドライトを付けた帽子を被り、色々なものが詰まったリュックサックを背負ったネコ。
　彼は自分を『ヒロシ』と名乗っていた。

「ヒロシ……もしかしてキミ、名字がFから始まったりせん？」
「ニャ？　そんなワケないニャ」

　何やら七瀬の頭にはある有名な探検隊を思い浮かべていたが、ヒロシ本人から否定されたので話はそこで終わる。

「あっ、いたいた～！」

　そんな２人のやり取りの中、落合まゆらが合流する。
　事前にヒロシから話を聞いていたので、この場所での合流を約束して前もって準備をしてきていた。

　同じように八神修は七夜あおいを連れてくるための準備をしてきており、彼女の手を引いて洞窟前へ集合。
　いい景色を見れるならと、カメラまで準備してくれたようだ。

　そんな冒険隊が組まれるのなら、七瀬に行かない理由はない。
　あの人へいい土産話を持っていけるかもしれないと、前準備をすることなく探検隊の仲間に入った。

「それじゃ、さっそく出発ニャ！」

　シーサイドタウン近くに現れた、様々な色の輝きを見せる結晶で出来た洞窟――七色結晶坑道。
　入口から沢山の光を吸い取っては鉱石そのものの色を鮮やかに反射し、それはもう美しい道を作り上げていた。
　探検猫のヒロシに連れられて、４人は共に七色の輝きを浴びながら、ゆっくりと奥へと進んでいく。

「うわぁ……本当に七色……いや、これもう百色じゃない？！」
「外からの光を全部の結晶が跳ね返してるから、色が凄い混ざってる……」

　まゆらとあおいの２人はその輝きに驚く様子を見せ、時には懐中電灯をかざして新たな色を作ったりと楽しんでいる様子を見せている。
　途中でまゆらがスマホの録画モードを使って録画を開始したため、その輝きは永遠に映像に残される形になった。

「すごかぁ……シーサイドタウンにおったはずなのに、別の世界に行った感じで不思議か～」

　辺りを見渡し、幻想的な世界にうっとりとする様子の七瀬。
　様々な結晶によって光が乱反射する世界に、ここがシーサイドタウンの空き地から入った洞窟だということを忘れてしまいそうだ。

「この結晶、音も面白いよ。ほら」

　近くにそびえる結晶を軽く叩いてみた修は、不思議な音に面白さを見出している。
　１度叩けば甲高い音、２度叩けば別の音、３度叩けばまた別の音を鳴らす結晶のようで、その様子にまゆらとあおいも楽しんでいた。
　どうやら結晶は強く叩いてもヒビも入らず壊れることのない強度のようで、何度叩いても音を鳴らすだけのようだ。

「よーし、それじゃあ……」

　ヒロシからピッケルを借りて、いくつかの結晶で音を鳴らしたまゆら。
　音の法則性さえわかればあとは即興で音楽を奏で、光り輝く洞窟内をまるでクラブパーティのように盛り上げる。

　その音楽に合わせて、七瀬も修もあおいもノリノリで結晶を鳴らして音楽を重ねていく。
　次第にリズムがいい感じに合わさって、さながらオーケストラにもなっていた。

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