ずっとあなたといたいから｜リアクション

ずっとあなたといたいから

●到着
「これが本物のイギリスのお城……！」
　早朝出発の眠気など、一瞬で消えてしまった。
　雄大な森を背景に建つ美しい城を見て、稲積柚春は感嘆の声を上げた。
「今日が晴れでよかったよ。青空の青にお城の白が映えて、とっても素敵だもん。ねえ、ワット」
　跳ねるような声で言いながら、傍らに立つウォルター・Bを見上げる。
「そうだねえ。イギリスの田舎で暮らしたときのことを思い出すなあ」
　ウォルターは懐かしそうに目を細めた。
　その隣では、メアリ・エヴァンズも、うっとりと微笑んでいる。
「もうずいぶん昔のことですが、ほんとうに懐かしゅうございます。まさか日本でこのようなお城が見られるなんて……今日はお誘いくださいまして、ありがとうございました。ウォルターさま、柚春さま」
　メアリは二人に向かい、丁寧に頭を下げた。
「そんなっ、お礼なんて！　顔を上げてください、メアリさんっ」
「いえ、二人きりのお時間を邪魔して、ご一緒させていただいているわけですので……」
「あっ、えっと、大丈夫！　僕も連れがいるのでっ」
　柚春は急いで、鞄の中からворを取り出した。
　いつも連れ歩いている子を見せれば、メアリは一瞬、きょとん。その後「ふふふ」と笑顔を見せる。
「大切なお友達なのですね」
「うん！　だから、みんなで記念写真撮りませんか？」
「それはいいねえ」
「ではわたくしが撮影いたしますね」
　スマホを取り出した柚春に、手を差し出すメアリ。しかし柚春は「メアリさんも一緒に撮りましょう」と言った。
「スマホスタンド持ってきたから、これでこう用意して……っと。タイマーセットしまーす。はい、みんな、もっと寄って～」
　カシャッ、という音とともに、お城を背景に、柚春とウォルター、ворにメアリが並んだ写真撮影が完了した。
「うん、上手に撮れた」
　スマホ画面を確認した柚春は笑顔だ。
　だから彼女は気づかなかった。「やっぱりいるんだね」という表情で、ウォルターがворに目を向けたことを。

このページにイラストを設定する