【進路・合格発表】寝子島に、サクラ咲くころ｜リアクション

【進路・合格発表】寝子島に、サクラ咲くころ

　◆夏朝と夏夜の合格発表

「……やった、あった！　合格だ……！」
　絞り出すように言葉にして、夏夜は傍らの夏朝を見る。
「夏朝、そっちはどう？」
「夏夜ちゃん、合格したんだね……良かった！　僕は……僕は、えーと……」
　夏朝は自分の番号を見つけるのに手間取っていた。
　文学部の方が芸術学部写真学科より人数が多いので番号の羅列が長いのだ。
　夏夜も夏朝の番号を探す。自分は落ちたとしても夏朝だけでも受かってほしいと願うくらい、彼女の合格をこそ願ってきた夏夜だから、探し方も必死だ。
　そうして――先に顔をほころばせたのは夏朝だった。
「……あった！　僕もあったよ……合格してる！」
「よかった……！」
　夏夜は潤む瞳で夏朝にしがみついた。
「嬉しい……本当に嬉しい」
「僕もだよ。これからも夏夜ちゃんと一緒に、同じ大学に通えるなんて……」
　高校に入ったときは、こんな日がくるなんてまるで予想もしなかった。
　夏夜は夏朝の、夜の部分。この世界の表舞台に立つ存在ではなかった。
　それがこうして青空の下、ともに同じ晴れやかさを味わう日が来ようとは。
「後で皆に知らせないと、だね」
「そうだね……皆、きっと喜ぶよ……！」
　家族や友人の顔を思い浮かべて喜びあっていると、ふたりが合格だと見て取ったラグビー部のみなさんが、わらわらと周りに集まってきた。
「おめでとうございまーッス！　合格を祝してー！　胴上げ行きまーッス！」
「え、え、なに？」
「ど、どちらさま……！？」
「マタ大ラグビー部ッス！！」
　屈強な筋肉の群れにふたりいっぺんに持ち上げられて、ワーッショイ、ワーッショイ！
「う、うわぁっ！　夏夜ちゃんと胴上げされるの、初めてかも……！」
　夏朝はびっくりしつつも、頬を紅潮させて喜んでいる。
　ともに宙に舞い上がる夏朝の姿をみて、夏夜も心が弾んだ。
　それに、胴上げをしてくれている彼等がマタ大ラグビー部ということは。
（木天蓼大学の先輩、という事……！）
　先輩たちがこんなに祝ってくれるなんて。寝子高に負けず劣らず楽しい学校のようだ。
「あ、ありがとう……ございます……！」