義を見てせざるは勇なきなり？｜リアクション

義を見てせざるは勇なきなり？

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　かくして黒服たちを無事に撃破した五人は、白い髪の少女の元へ集まっていた
　白い髪の少女は包丁を握り締めたまま、五人を見上げている。といっても包丁を向けてくるでもなし、不安だから握ったままになっているだけなのだろう。
　莉鳥がしゃがみこみ、目線の高さを少女に合わせて声をかける。

「もう、大丈夫だからね」
「……！　う、うんっ」　
　少女がうなずく。すると手の力が抜けたのか、おもちゃの包丁が滑り落ちた。
「でも、いったい何があったんですか？　あの黒服さんたちは、いったい……？」
　紫苑が当然の疑問を口にすると、少女は小さく肩を震わせた。
「大丈夫ですよ。どんな事情があったとしても、私たちはあなたを責めたりしませんから」
　闘争の熱は冷め往きて、今は闘志をたおやかにまるめこんだ志桜里が笑いかける。
「そうそう！　ですよね、ブドー先輩？」
「ああ。だから、教えてほしいな。そうしたら、この後も力になれるかもしれないからさ」
　莉鳥の隣にしゃがんだ武道が、少女の落とした包丁を拾い上げて差し出す。ニッと笑う彼をしばらく見つめた後、少女はおずおずと口を開いた。
「あのね、シラユリね……」
　少女――シラユリが言うには、彼女と黒服は鏡の世界の住人なのだという。
　ある日シラユリは、鏡の世界と武道たちの世界を行き来できる、あの電話ボックスの能力に目覚めた。その力でこっそりと二つの世界を行き来していた彼女だったが、そのうちにある問題が起きた。
「その問題って言うのが、あの黒服たち？」
　武道が問うと、シラユリはこくこくと首を縦に振った。
　あの黒服たちは黒のポーン――シラユリの能力を狙う、”黒の女王”の手先なのだという。
「黒の女王？」
「うん。あの子……黒の女王はね。シラユリの力で、みんなのせかいを――」
　その時だった。

「あら、シラユリ。帰ってきたの？」
　シラユリに似た、けれどもっと落ち着いた、それでいてどこかぞっとするような薄ら寒さを感じさせる声が、彼女の言葉を遮ったのだった。

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