義を見てせざるは勇なきなり？｜リアクション

義を見てせざるは勇なきなり？

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　マシンガンが倒されたことを認識するや否や、日本刀は即座に少女の姿を求めて周囲を探った。
　とある喫茶店のスタンドの陰に、彼女は居た。戦いの中、かろうじてそこまで移動したのだろう。少女目がけて疾走する日本刀から、まともに逃げることすらできないで居る。
　そうはさせないと、タルトが薄い本を投げつけながら飛び降りた。落下する間だけ『チェシャ猫』を発動、着地即解除。臆病になるデメリットを最小限に！
　そして黒服が薄い本を払い除けている隙に、少女の元へと滑り込んだ。
　さらに続いて、志桜里と莉鳥が日本刀の往く手を阻む。
　不利とみたのだろうか、日本刀は即座に反転して走り出した。同調するように、武道と読み合いを繰り広げていた青龍刀も、一転して撤退の動きを取る。足元への一閃で武道の姿勢を崩した隙に、突然走り出したのだ。
「あっ、ちょっと待ちなって！？」
「あら、逃げちゃうんですね？」
　逃げる黒服たちの姿に、紫苑は思案気に頬へ手を当てた。ここは少女の電話ボックスでないと行き来できない、鏡の世界だ。にも関わらず、彼らは迷いなく逃げ出した。。
　ということは、彼らにとってこの世界は――？
「それより逃げ足速いよっ！　どうしよう！？」
　わき目もふらずに逃げの一手を打つ黒服たちは、あっという間にタルトたちとの距離を離していく。
　こちらにはまともな飛び道具がなく、こうなっては逃がすより他にないかに思われた。
「いえ、手はありますよ。賭けにはなりますけどね」
　志桜里が、とある賭けの提案をするまでは。

　全力で逃げる黒服たちは、不意に自分たちを覆った影に目を疑った。
　思わず振り返れば、なんと立ち並ぶ店舗よりも背の高くなったタルトが、二人を見下ろしているではないか！
　これが、志桜里の賭けの内容だった。
　『ウチデノコブシ』の反転で、考えられる結果は三つ。対象の巨大化、自分の縮小、そして自分の巨大化。三分の二を引くことができれば、逃げる奴らを仕留められる。そういう賭けだった。
「賭けには勝ったね、志桜里ちゃん！」
　サイズ差からくるコンパスの差で、タルトは一瞬で黒服たちとの距離を縮めた。
　そのまま両腕を振りかぶると、黒服たちめがけて、大きく広げた手のひらを一気に振り下ろした！
　巨大なハエ叩きのような一撃に、二人の黒服はダウン。黒いポーンへと姿を変え、そのまま動かなくなる。

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