星降る夜とホットスナック　～かろやかに、サックリと～｜リアクション

星降る夜とホットスナック　～かろやかに、サックリと～

「きゃっ！」
　三夜湖が凍ったスケートリンクで、綾花と珪はレンタルのスケート靴で滑っていた。
「大丈夫かい？」
　転びそうになった綾花を抱きとめ、珪は湖そばに設けられたベンチへと移動。
「ご、ごめんなさい」
　綾花は、恥ずかしさのあまり真っ赤になっているであろう顔を隠したくてうつむく。
「気にしなくていいよ、少し休もう」
　ベンチには他にも、転んだり疲れたりした人の姿がちらほらある。
「い、いつもはちゃんと滑れるんですよ？」
「うんうん。分かっているよ」
　珪は笑顔で頷く。

（星降る中の珪さんもかっこいいな～、と思ってたらふらっと転びそうになったことは内緒にしておきましょう）

　綾花は、さっき抱きとめてくれた腕を思い返す。

（抱きしめられるとドキドキしちゃうのに……気持ちよくて安心するんですよねぇ）

　満天の星空と、珪の横顔を交互に見ながら、もう少しこのままでいたいと思う綾花だった。

◆

「おいしー！　熱々の油サイコー！」

（いい顔してらー……）

　鳥の皮をカリカリに仕上げた焼き鳥串。
　かじりつく晴月の顔を見ながら、ラッセルは、彼女の隣にいられる嬉しさをかみしめていた。
　思えば、晴月と出会ったのも、今のように星が綺麗な夜だったのだ。

（それに……ッ！　い、今は両思いの彼女、なんだし……）

　彼氏初心者のラッセルではあるが、晴月にはデートを楽しんでもらいたいし、食べたいものは奢ってあげたいのだ。
「晴月……好き、だ、ぞ……」
「ラッセル、最後の一本だよ、食べて！」
「お、おう」
　照れが上回って尻すぼみになった言葉は聞こえていたのか、いなかったのか。
　ラッセルは、焼き鳥串を受け取ってかぶりつく。
「う、うめぇ～」
　塩味の焼き鳥は、油の甘さを塩が引き立てて、何本でもいけそうだ。もっと買おうかな、とラッセルが思ったとき。
「皆の者、よく聞け！　いきなりだが、スケート大会を開催するにゃ！」
　少女の声が聞こえてきた。
「真優理さん、スケート大会だって」
　絢は、いちご飴の最後の一粒を食べ終えた真優理を振り向いて言う。
　少女の声はなおも続く。
「素晴らしい演技をした参加者には、ささやかだが、御利益を用意してあるにゃ！」
「御利益ですって？　いいかも」
　乗り気の恋人の姿に、絢も参加を決めた。
「よーし、僕も参加しちゃうぞ！　青い星の力もあることだし」
「私、応援しますね！」
　タルトは参加を、シオは応援を決めたのだった。

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