星降る夜とホットスナック　～かろやかに、サックリと～｜リアクション

星降る夜とホットスナック　～かろやかに、サックリと～

（さっきの人たち、美味しそうだったなぁ……私もがんばろう！）
　
　調理の順番が回ってきたシオは、タルトの方を振り向いて言った。
「タルトさん、味見とお手伝い、お願いできますか？」
「任せてよ！　シオさんは何を作るの？」
「フフフ……簡易さばサンドを作ろうと思ってます。塩鯖はコンビニで事前調達しておきましたから」
　１番と２番の参加者が汁物とご飯物だったので、次がパンでも問題なかろうと思ったシオである。
「お三夜さま達の分は、緑の星のパワーで、タルトさんの分は青い星の力を込めましょう」
「お任せ下さい」
　シオ＆タルトチームについてくれた料理人が頷く。
　特設キッチンに呼ばれて、調理開始だ。
「タルトさん、まずは食パンをトーストして、焼き上がったらバターを塗って下さい」
「はいよっ！」
「塩鯖はレンジで温めて……」
「キャベツの千切り、出来上がりました」
　料理人から千切りが入ったボールを受け取り、カレー粉をかけて混ぜる。
　後は、パンにキャベツの千切りと大葉をのせて、星形に型抜きしたチーズとレンジから出した塩鯖をはさむ。
「出来上がりです！　お店ではフランスパンでやるのですが、私は素人なので食パンを使いました」
「やったー！」
「さ、タルトさん、味見をどうぞ。青い星の力を込めてありますから」
　なぜ星のパワーを込めるのにシャドーボクシングするのかは分からなかったが、タルトのスケートが少しでも楽しくなれば、とシオは思うのだ。
「むっ！　キャベツとカレーって、合うね、シャキシャキで……さすがシオさんの料理。何だか幸せな気分になってきた☆　塩鯖の塩分じゃなくてシオ分か～、なんてね♪」
「良かった～」
　タルトの感想に手応えを感じ、お三夜さま達に出してみると。
「むむ、これは……大葉の仕事を感じるな、一之助」
「そうだな、二右衛門。ただの一枚で、全ての味をまとめる……まるでお三夜さまのような」
「まぁ、さばと大葉は相性抜群ということかにゃ。シオ殿、おいしいさんどいっちをごちそうさまでしたにゃ」
　キャベツ最後の一本まで食べてくれたお三夜さまたちに、シオも深々と頭を下げたのだった。

◆

「で、柚春。君は何を作るつもりなのかなぁ」
「……デザートだよ、ワット。よく天の川モチーフの和菓子って売られているんだ」
　横のキッチンでシオがさばサンドを作っているのを見ていた柚春は、最後の〆に羊羹を作ろうと考えた。
　豚汁、カレードリア、さばサンド、そして最後に甘い物。完璧な流れだ。
「まずは、寒天を溶かして、色をつけて……」
　色は食紅を使い、寒天のあら熱を取る過程で程よくグラデーションになるように仕上げるのだ。
　透明から青、青から紫への変化と小豆の部分をつなげて夜が深まっていく様子を表現すれば、星空モチーフにはぴったりだろう。
「どうぞ、召し上がれ」
「こ、これは……何という美しさだにゃ！？　まさに星空をそのまま固めたかのような……あーとにゃ！」
　柚春がお三夜さまに出すと、彼女はフォークを持ったままぷるぷると震えている。
「あまりに美しすぎて、食べるのが躊躇われますな」
　そこで、ワットが入れた熱々のお茶をそっと出す。
「お茶と一緒にどうぞ」
「これは、かたじけない」
　３人は『いただきます』を言い、一口ぱくり。
「むぅ……あずき部分の方が甘さ控えめとは意外にゃ……」
　羊羹とお茶を交互に口に運び、幸せそうなため息をつくお三夜さま。
「柚春殿、さすがにゃ！　ごちそうさまにゃ」
　お辞儀をして器を下げた柚春は、片隅で羊羹をぱくつくワットに、お茶のお代わりを淹れたのだった。

このページにイラストを設定する