- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【節分】寝子島節分祭、および、霊界殺武無祭
寝子島の夜も更け始めて、飾り照明が眩しくなり始めた神社境内の舞踊奉納。
巫女さんの厳粛な舞を主としているが、方針としてはどのようなジャンルのダンスによる飛び込みも歓迎している。神社側としては、そのタイミングとして、舞踊奉納に空き時間も用意しているほど。
さっきまで見ていた静かで美しい巫女さん達は一度退き。今、舞台には誰もいない。
智依子は思う――今なら、この場にいる人の視線を浴びながら全身全霊で踊ることも出来る、と――
「ママ、おどらないの？」
楓が口にしたその言葉で、智依子は自分の願望を自覚する。楓は、踊っている智依子が好きなのを知っている。そして、自分が踊っている間、楓はそれがとても好きなのだということも。
智依子が困ったように祖父母の方を見れば、その目は優しく告げていた――『行っといで』と。
智依子は、それに困ったように微笑み、恥ずかしそうに小さく頷くと、靴だけ脱いで軽やかな音を立てて一人舞台に飛び込んだ。
そこは、文字通りの一人舞台――先程生まれていた厳かとは異なる、情熱と呼ばれるものが、一気に場の人の目を引きその空気を支配した。
節分祭当日、二人の楽しんだ本土での帰り道。
寝子島の祭りが、帰途最中でもまだ間に合いそうだと知ったウォルターと柚春は、島の祭り寝子島神社の節分祭におとずれることにした。
「あ、まだやってる！」
二人はきちんとした和装姿で人目を引く中、福豆くばり終了後となった先に行われている『舞踊奉納』の儀式を行われているのをめにすると、それを目にすべく近くの売店でそれぞれが甘酒をもらい、紅布の張られた来訪客用のベンチへお仕掛けた。
――ようやく一息。深呼吸をするように、柚春の胸から甘酒の温かさとともにため息が溢れた。
「……そうだ。ワットは日本で暮らして長いよね。豆まきとかもやるの？」
「やっていた時はあるよ。節分も……親友から教わってね。彼に鬼をやってもらってメアリにも手伝ってもらって、鬼は外とか、ね。日本には本当に面白い風習があるなぁと思ったねぇ」
「ふふ、ワットなら豆よりチョークを投げて払っちゃいそうだね」
「それはそうだよ、空気抵抗の関係からチョークが鋭く飛ぶのは明らかだからね。でも、伝統行事だしここは普通に豆撒いたほうが楽しいだろうなぁと思ってねぇ」
眼前で、休憩に入っていた雅楽隊と巫女さんが再び、ゆるやかだが真を貫いたような力強い舞を始める。
ポーン、と鼓の音が鳴り響いた。
「これから春になって新しい季節が始まるわけだけど……ワットは心機一転やりたいことってあるのかな？」
「そうだねぇ……」
それは、心機一転ではなかったのかも知れない。一瞬だけスッと過去に走った視線は、すぐに現実へと差し返る。
「らしくないけれども、後進の指導なんて言うのもしてみるのもいいかなぁって思っているよ。いつも、これからも要となるべきは学問だからねぇ」
「僕は資格もとれたし次はやっぱり……どうどうと隣に並べるように頑張らないとね」
「隣に？」
演舞奉納の間、それでも感極まるようにすっくと立った柚春の瞳は、ウォルターを目にしていた。光り輝く未来の目は――ただその相手だけを。
「学校の勉強だけじゃなくてマナーとか振る舞いも、
ワットが放っておけない女の子になるから見ててね！」
――ついついナンパされてしまう程の余裕が無いくらいに、自分だけを見てほしい。柚春はいつもそう思ってやまないのだから。
「……メアリも、君のそういう話が出る度に、嬉しそうに話を聞いてくれるんだ。もし本当にそんな凄い事態になったら――」
困ったようにウォルターが微笑み、柚春に人が注目するからと着席を促す。
柚春が慌てて座り直すと、ウォルターは小さな声で柚春を見つめ「……僕も年貢の納め時、かなぁ……もちろん、よい意味でだよ？」と冗談めいたように笑ってみせた。
夜の舞踊奉納は、ライトアップされた舞台があまりにも美しく。
「数え歳の数だけ食べるんでしたでしょうか……」
「そうだね。でもあまり厳格なしきたりもないと本で読んだから、普通に今の年齢だけ食べてもいいんじゃないかな？」
少し離れた所で座っていた綾花と珪は、寄り添いながら豆まきでもらった豆を食べながら、舞踊奉納を眺め続けた。寝子島らしく舞にもバラエティにあふれているのが、よりこの島らしい。
豆の数だけ食べ終えて、一息。そっと、綾花は珪に寄り添った。
「……幸せ、です」
それは綾花の思いの丈だけ詰め込んだ言葉。
公共の場で何かをすることは出来ない立場でも、その肩を支えるくらいなら出来る。
珪は不自然じゃないように繕って、綾花の体を軽く支えた――今は。
巫女さんの厳粛な舞を主としているが、方針としてはどのようなジャンルのダンスによる飛び込みも歓迎している。神社側としては、そのタイミングとして、舞踊奉納に空き時間も用意しているほど。
さっきまで見ていた静かで美しい巫女さん達は一度退き。今、舞台には誰もいない。
智依子は思う――今なら、この場にいる人の視線を浴びながら全身全霊で踊ることも出来る、と――
「ママ、おどらないの？」
楓が口にしたその言葉で、智依子は自分の願望を自覚する。楓は、踊っている智依子が好きなのを知っている。そして、自分が踊っている間、楓はそれがとても好きなのだということも。
智依子が困ったように祖父母の方を見れば、その目は優しく告げていた――『行っといで』と。
智依子は、それに困ったように微笑み、恥ずかしそうに小さく頷くと、靴だけ脱いで軽やかな音を立てて一人舞台に飛び込んだ。
そこは、文字通りの一人舞台――先程生まれていた厳かとは異なる、情熱と呼ばれるものが、一気に場の人の目を引きその空気を支配した。
節分祭当日、二人の楽しんだ本土での帰り道。
寝子島の祭りが、帰途最中でもまだ間に合いそうだと知ったウォルターと柚春は、島の祭り寝子島神社の節分祭におとずれることにした。
「あ、まだやってる！」
二人はきちんとした和装姿で人目を引く中、福豆くばり終了後となった先に行われている『舞踊奉納』の儀式を行われているのをめにすると、それを目にすべく近くの売店でそれぞれが甘酒をもらい、紅布の張られた来訪客用のベンチへお仕掛けた。
――ようやく一息。深呼吸をするように、柚春の胸から甘酒の温かさとともにため息が溢れた。
「……そうだ。ワットは日本で暮らして長いよね。豆まきとかもやるの？」
「やっていた時はあるよ。節分も……親友から教わってね。彼に鬼をやってもらってメアリにも手伝ってもらって、鬼は外とか、ね。日本には本当に面白い風習があるなぁと思ったねぇ」
「ふふ、ワットなら豆よりチョークを投げて払っちゃいそうだね」
「それはそうだよ、空気抵抗の関係からチョークが鋭く飛ぶのは明らかだからね。でも、伝統行事だしここは普通に豆撒いたほうが楽しいだろうなぁと思ってねぇ」
眼前で、休憩に入っていた雅楽隊と巫女さんが再び、ゆるやかだが真を貫いたような力強い舞を始める。
ポーン、と鼓の音が鳴り響いた。
「これから春になって新しい季節が始まるわけだけど……ワットは心機一転やりたいことってあるのかな？」
「そうだねぇ……」
それは、心機一転ではなかったのかも知れない。一瞬だけスッと過去に走った視線は、すぐに現実へと差し返る。
「らしくないけれども、後進の指導なんて言うのもしてみるのもいいかなぁって思っているよ。いつも、これからも要となるべきは学問だからねぇ」
「僕は資格もとれたし次はやっぱり……どうどうと隣に並べるように頑張らないとね」
「隣に？」
演舞奉納の間、それでも感極まるようにすっくと立った柚春の瞳は、ウォルターを目にしていた。光り輝く未来の目は――ただその相手だけを。
「学校の勉強だけじゃなくてマナーとか振る舞いも、
ワットが放っておけない女の子になるから見ててね！」
――ついついナンパされてしまう程の余裕が無いくらいに、自分だけを見てほしい。柚春はいつもそう思ってやまないのだから。
「……メアリも、君のそういう話が出る度に、嬉しそうに話を聞いてくれるんだ。もし本当にそんな凄い事態になったら――」
困ったようにウォルターが微笑み、柚春に人が注目するからと着席を促す。
柚春が慌てて座り直すと、ウォルターは小さな声で柚春を見つめ「……僕も年貢の納め時、かなぁ……もちろん、よい意味でだよ？」と冗談めいたように笑ってみせた。
夜の舞踊奉納は、ライトアップされた舞台があまりにも美しく。
「数え歳の数だけ食べるんでしたでしょうか……」
「そうだね。でもあまり厳格なしきたりもないと本で読んだから、普通に今の年齢だけ食べてもいいんじゃないかな？」
少し離れた所で座っていた綾花と珪は、寄り添いながら豆まきでもらった豆を食べながら、舞踊奉納を眺め続けた。寝子島らしく舞にもバラエティにあふれているのが、よりこの島らしい。
豆の数だけ食べ終えて、一息。そっと、綾花は珪に寄り添った。
「……幸せ、です」
それは綾花の思いの丈だけ詰め込んだ言葉。
公共の場で何かをすることは出来ない立場でも、その肩を支えるくらいなら出来る。
珪は不自然じゃないように繕って、綾花の体を軽く支えた――今は。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2024年01月12日
- 参加申し込みの期限
-
- 2024年01月19日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2024年01月19日 11時00分
