災い転じて春来る｜リアクション

災い転じて春来る

　一方その頃、おみくじで盛り上がっているみんなから離れて、透破は1人の時間を過ごしていた。
　カプギアの形でいることがほとんどだから、長時間の人型には慣れてない。
　それにウォルターと柚春を二人っきりにさせたいという思いもあった。

　多くの人が行き交う参道から細い道に入る。
　水の音が聞こえたので行ってみると、多くの鯉が泳ぐ池があった。
　色鮮やかな鯉に『恋』を連想してしまうのは、現状仕方ないことだろう。
「そろそろ任せても大丈夫だって思わせてよ……張り合いがないだろ」
　二人がピンクの豆を食べながら幸せを誓い合っているとは知らず。
　透破は二人の未来を思いながら、赤い橋の上から水中を覗き込んだ。
　餌をもらえると思ったのか、水面にやってきた鯉が、小さな口をはくはく開ける。
　はくはく、はくはく。それなりの数がいるので少々不気味ではあるのだが。
「あいつもこのぐらい欲しがりで貪欲だったらいいよなぁ」
　社会的立場か、年齢差か。何がメインの問題か知らないが、世間体とはなかなか厄介なものだ。
「かといって全部から解放されるなんてありえねえし。未来が見える不思議なアイテムでもあればいいのにな」
　と、考えたタイミングで。
　同じく池を覗いていた老夫婦が、「そういえば」と話し出した。

「おじいさん、昨日旅館の人が言っていた不思議な湖に行ってみない？」
「二人で覗くと、将来の姿が見えるっていうあれか？　将来も何も、俺らはきっともう墓の中だよ」
「まあまあそんなこと言わないで。せっかくここまで来たんだから。長生きするぞって意気込みで見ていきましょうよ。歩いて20分なんて、そう遠くもないんだし」

「へーそんな湖があるのか」
　透破はにんまりと笑った。二人の将来、自分には関係ないが柚春とウォルターにはぜひ見てほしい。ついでにラッセルと晴月にも。