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災い転じて春来る
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「いた……!」
慣れない足袋と草履で転びそうになりながら、人ごみの中を走り回って、柚春はやっとウォルターを発見した。
はあはあと弾む息を、胸の真ん中に手を置いて、深呼吸をして整える。
心臓が苦しいのは、走って冷たい空気をいっぱい吸ったからだと思いたい。
「だって、そうじゃなくちゃ……」
鼻緒が食い込む親指と人差し指の間が痛い。着付けのときに整えてもらった髪も、きっと乱れているだろう。
柚春は胸に置いた手でぐっとこぶしを握った。
ウォルターが話しているのは、巻き髪を背に流した、振り袖姿の美女だった。
年齢はたぶん、ウォルターと同じか少し下だろう。遠目にもわかる赤い唇。持ち上げた手の先が太陽の光にきらりと光って「ああ、マニキュアを塗っているのかな」と思った。
「……ナンパかなあ。何話してるんだろう」
ゆっくりゆっくり、ウォルターに近づく。
が、あと数メートルのところで立ち止まった。
「ワット、笑ってる……」
柚春は無意識に右手を持ち上げ、耳朶に触れようとした。そこには月と雫を模した青いピアスが――ウォルターが贈ってくれたピアスが揺れている。
今朝、鏡を見ながらつけたのだ。
「ワットも月のピアス、つけてきてくれたらいいなぁ」と、そう思いながら。楽しい気持ちで。
そのピアスに指を伸ばし……しかし、銀の雫に触れる前に。
柚春はその手を下ろしてしまった。
「……あの人も素敵なピアスをつけていて、それで盛り上がってるんだったりして」
柚春の脳裏に、過去の記憶がよみがえる。
以前、似たようなことがあったのだ。
そのとき柚春は、ウォルターが、大人びた綺麗な女性にナンパされたのだと思って、二人の間に割り込んだ。
しかし実際は、彼女の落とし物を拾ったウォルターのほうから声をかけ、彼女の特徴的なピアスから、趣味の話が広がっていただけだった。
「今回も同じなのかも」
あのときは、そのままウォルターを連れ帰った。
でも今思えば、よく一緒に帰ってくれたと思う。だって、ウォルターが自発的に女性と話をするのを止める権利など、柚春にはないのだ。
「……僕はワットの恋人でもなんでもないんだから」
柚春の告白を、受け入れてはくれた。ただ、それだけだ。
関係性に名前は必須ではないことくらい、柚春はわかっている。
「私たちは友達だよ」「私たちは親友だよ」なんて、誰もがいちいち確認したりはしないのだから。
でもやっぱり、こんなときは思ってしまうのだ。
(ワットにとって、僕はなに?)
――と、凝視していたら。
不意に、ウォルターの顔から笑顔が消えた。
見られている視線を感じたのか、振り返る。
柚春に気づいた。
目が、あった。
「あっ……」
ウォルターの青い瞳が柚春をとらえた瞬間、どくんと高く、鼓動が跳ねた。
本当なら、すぐにでもあの女の人を振り払って、ここに来てほしい。
でもきっと、ウォルターはそんなことはしない。
柚春は知っているのだ。たとえナンパでも、彼はちゃんと事情を説明し、断ってからこちらに来ることを。そういう性格なのだと。
(でもなんて断るんだろう。『恋人と来てるから』って言うのかな。それとも『教え子と来てるから』?)
さっき一度高く鳴った心臓が、今度は緊張に強く打っている。
(今日はお休みだから、寝子島じゃないから……ワットが先生なのは変わらないけど、でも)
恋人と来ているのだと、言ってほしい。
願いを込めて、柚葉はウォルターを見つめた。
そのときだ。
「稲積さん!」
声をかけられ、振り返る。そこには、今日初めて会って、ラッセルの友人と紹介された千里が立っていた。
「稲積さん! 会えてよかった。こっちはさっきラッセルと晴月が合流して」
そこまで行って千里は、柚春が立っている向こうに、ウォルターがいることに気が付いた。
「あ……」
(ウォルター先生だっけ、桜井の担任の。もしかして逆ナンにあってて、稲積さんは迷ってる? 桜井からはいい関係だと聞いたんだが、な)
千里が柚春を呼びかけたときに、ウォルターは千里の存在に気付いたようだ。
ちらりと千里を一瞥した。それを知ったうえで、千里は柚春に声をかける。
「先生はお取込みのようだし行こうか」
「でも……」
「それともここでずっと先生を待ってる? それなら稲積さんがナンパされないように、オレが隣にいるけど」
柚春は黙り込んだ。きっとそれも申し訳ないと思っているのだろう。
「なんだよ。あいつ、困ってんじゃねえか」
緑林透破はため息をついた。
なぜか人間になったから、遠巻きに柚春を見守っていようと思ったのに、どうやらそうもいかないらしい。
「こんなとこで逆ナンされるとか抜けてんじゃね?」
本当は自分が柚春をサポートしたいけれど、あちらにはもうすでに人がいる様子。
「じゃあオレはあっち助けるか。ていうか、男なら自分で何とかしろよな」
(まったくいつもいつも世話が焼ける……俺が前にした説教はなんだったんだ。いつになったらこいつに柚春をまかせられるんだ?)
内心悪態をつきながら、しかし柚春のためだと割り切って、透破はウォルターの方へ向かっていった。
「あれ? あの人……」
「稲積さん、知り合い?」
柚春が呟いた声は、千里にしっかり聞こえていたようだ。
「ああ、うん、あの、お兄さん! 私の!」
慌てて言えば「えっ、そうなんだ!」と驚かれた。
(僕も驚いてるよ……まさかこんなところで会うなんて)
しかもああやってウォルターのほうに向かっているということは、また何かしら世話を焼いてくれるつもりなのだろう。
視線で追っていると、案の定。透破はこちらを振り返り、ぱっちりウインクして見せた。
「こっちはオレに任せとけ」という態度である。
「先生はお兄さんが助けてくれるのか。じゃあ俺たちは先に待ち合わせ場所に行くか」
千里は立ち去りたくないだろう柚春に、あえてそう声をかけた。
柚春は「でも……」と、ウォルターから視線を動かさない。
にもかかわらず、ウォルターは相変わらず、女性と話を続けていた。
困惑してるっぽい表情から、なにかを説明しているだろうことは予想がつく。
(……にしたって、彼女放置なんてさ)
まだ付き合ってないにしろ、気持ちが柚春にあるのなら、初対面の女性と関わるべきではない。そんなことは当然わかっているはずなのに。
(ひょっとして嫉妬させたいとか? いやいや、こんな全身で『想ってます』って言ってる素直な稲積さんには必要ないよな)
千里は思い切って、隣に立つ柚春の背に手を置いた。
「ほら、行こう。大丈夫だって。先生はお兄さんが連れてきてくれるからさ」
二人の視線の先で、透破はウォルターと並んで話し始めていた。
彼がウォルターのもとに出向いたことで、ウォルターはこちらの様子を気にしているはずだ。
実際彼はこちらを見た。表情に変化はなかったが、柚春が千里とともにいることはわかっただろう。
(逆ナンなんてさっさと切り捨てればいいのに、いつまでもかまってるからこんなことになるんですよ。放っておくのは男が廃りますよね。どうします?)
挑発にのりはしないだろうが、少しでも心配すればいいと、千里はウォルターに笑みを向ける。
ただ柚春の足は動かない。そのままうつむき立ち尽くしている。
――が、このままではどうしようもないと思ったのか。
柚春は顔を上げ、思い切ったように一歩を踏み出した。
草履の底が、じゃり、と音を立てる。
「海道君ごめんね、暗い顔して。ウォルター先生は大変そうだなぁって思った……だけだから」
力ない表情で千里を見上げ、柚春はそう口にした。
千里が何を言っても、柚春を励ますことはできないだろう。彼女を今明るい気持ちにさせられるのはウォルターだけだ。
わかっているからこそ、千里はなにも言わず微笑んだ。
しかしその笑顔で柚春は少し心がほぐれたらしい。ほうっと息を吐いた。
「それとも違うのかな。男の人は……一人じゃ満足しない、とも言うもんね」
ぽつりと内心を吐露する柚春。
(そんなに追い詰められてんのか。甲斐性ないんだなあの先生)
柚春と同年代としては、そんなことを思う。でも大人だからこその事情もあるのだろう。
とはいえそれを語るのは、やはり千里の役目ではない。
そう理解して、千里はあえてわかったような顔で「なるほどな!」と呟いた。
「ま、動物や権力を誇示する野性的な人ならそうなんじゃねぇの」
それから少し考えるようなふりをして、思いついたように言葉を加える。
「本命がいないならな」
柚春は、はっと顔を上げた。
(ま、オレがみたところ、当てはまらねぇと思うけどなー)
見つめる千里の視線の先で、柚春の手が、耳朶に伸びる。
そこには美しい雫を揺らす、月のピアスがあった。
「あれ、そのピアス確かあの先生も」
「……うん」
柚春が小さくうなずく。
ペアで買ったのか、プレゼントを贈り合ったのか。千里が詳細を知ることはない。
ないが――。
(やっぱり当てはまんねえじゃん。こんな誰が見てもお揃いみたいなもんしっかりつけてるなんて、あの先生、絶対稲積さんのこと大好きじゃん)
だったらさっさとここへ来い。ここはオレの場所じゃねえ……と。
千里は振り返らずに、胸の内で思ったのだった。
その少し前。
透破は大股で、ウォルターに近づいていった。
実は、人間になってからここに来るまでの間に、もう何人もの女性に声をかけられている。
しかし透破にとって、その辺の女は石ころ同然。ゆえに適当にあしらって放ってきた。
(だからわかんねえんだよなあ。あのセンセーがなんでナンパ女を切り捨てねえのか。本当に大事な女なんて、一人きりだろ?)
いろいろ説明するのも面倒だし、というか色々な説明はウォルターがしているだろうし、それでも女が立ち去らないところを見ると相手は厄介そうだし。
そう考えて、透破はひと芝居打つことにした。
「ちょっと、オレにこんなに探させるなんてどういうこと?」
言いながらウォルターの隣に立ち、彼の肩に腕を回す。それからグッと引き寄せて、目の前の女にニヤリと微笑みかけた。
「この人は恥ずかしがりだからはっきり言わなかったかもしれないけど、センセーとイイ仲なのはオレだから。女はお呼びじゃねーんだよ」
女性は「え、あの、やだっ」と焦った顔で言いつつも、すぐに状況を理解したようだ。
「何それ時間の無駄じゃん」と怒って、立ち去っていった。ウォルターが説明に苦慮していたわりに、挨拶なんてろくにあったもんじゃない。
「こーんな簡単に終わんだよ、ナンパってのは」
何か言おうとしたウォルターを遮って、透破は彼を突き飛ばした。
「つか、こういうトコで柚春と離れるとかどういう神経してるワケ? 学習能力ないの?こないだだって大変だっただろ?」
透破はウォルターをぎろりと睨んだ。
しかしウォルターは「助けてくれてありがとう」とおっとり笑う。
「この前のことも覚えてるよ。また怒られちゃったねぇ」
「はぁ!?」
こののんびりさには、火に油を注ぐ。透破の眉が大きく上がった。
「俺が怒るとか! んなことはどうでもいいんだよ! 問題は柚春だよ! 柚春に悲しい思いさせてんじゃねーよ!!」
透破はクイッと顎を上げて、寄り添い歩く、柚春と千里を指し示した。
ここからでは背中しか見えないが、背中だけ見えれば十分だろう。
「あれ見てもセンセーは平気なワケ?」
「……別に二人は恋愛関係じゃないからね」
「柚春の愛情の上にあぐらかいてんのか」
「大人はいろいろ事情があるんだよ。教師と生徒なんて特に」
「そんなこと言うなら最初に切り捨てるべきだっただろ。それもできねーで甘い汁だけ吸おうとして、あーやだやだ大人って!」
ウォルターに背を向けて、透破は柚春たちの元へ向かっていく。
「そんなこと言われてもねぇ……」
ひとり残されたウォルターは、自身の耳たぶに指を添え、そっと目を伏せた。
「先生は?」
「置いてきた」
「ナンパは?」
「オレが断った」
「……そう。ありがとう」
お礼を言いつつも、透破だけが戻ったことに、柚春は肩を落とした。
「もういいじゃんほっとけよあんなやつ」
「そうそう、いい大人なのにナンパひとつ断れないなんて、なあ?」
透破と千里はともに柚春に声をかけるが、柚春は立ち止まり、うつむいている。
恋人だと言って断らないなら、それでもいい。人が好くて断れないと言うのなら、仕方がない……かもしれない。
(でも、相手がいなくなったのに、僕のところに来てくれないのは……)
こんな場所なのに、透破と千里がいるのに、唇が震え、目頭が熱くなる。
そのときだ。
「稲積」
ウォルターが、柚春を呼んだ。
ぱっと顔を上げ、振り返り――。
「……先生!」
駆け寄っていく柚春。勢いあまって抱き着いた彼女を、ウォルターは両手で受け止めた。
「心配かけてごめんねぇ」
柚春はウォルターの胸に顔を押し付け、左右にぶんぶんと振った。
言いたいことがいっぱいあるはずなのに、ウォルターが追いかけてきてくれたことが嬉しくて、離れたくない。
でもやっぱり、心にはもやもやしたものが広がっている。
優しく笑って抱きしめてくれるぬくもりだけでは、柚春はもう足りないのだ。
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2024年01月14日
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アクション投稿の期限
2024年01月21日 11時00分
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