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LIQUID -Star Chronicle- 狂乱の炎編
【ハウジングの高みへ……】
ブリーディング機能実装！ 『LIQUID』プレイヤーたち、なかでもペットの育成には一家言アリな者たちは大いに湧き立った。交配用に有用なペットモンスターをリストアップしランキング形式で発表する者、いやいやペットは可愛くてナンボだろと愛犬愛猫愛キノコ、愛ゴーレムに愛ドラゴンの素晴らしさを熱のこもった長文にしたためる者々。表現はさまざまながら、彼らのペット愛は深く純粋で止め処がない。
「ペットの交配だってさ。俺らもやってみようぜ、エリン！」
「おっけー、どんな子が生まれるかなぁ。楽しみ♪」
ベテラン冒険者カップル、アルターとエリンもわくわく。胸を高鳴らせ、孤高のサムライマイスター・シロヘビ嬢も、
「こればかりはひとりではどうにもならんからのう。もうちいと、交遊を広げてみるべきか……むむむ」
とペットのため悩みに暮れていたりした。
とかく大きな盛り上がりを見せる今回のアップデート。となれば放っておかず、波に乗っかり乗りこなすのが、そう。
「ペットの交配って、ボタン押したら光に包まれて卵が産まれるだけだよね。
エッチな要素はないのですか？ チラリズムすらも？ 全とばしですか！？
なーんつってはっはっは、冗句冗句」
タビガラス（プレイヤー：旅鴉 月詠）であった。
「なんじゃなんじゃ。今度はなにを始めおったんじゃ、タビガラスのやつは」
シロヘビが友人のハウジングエリアを尋ねると、今まさに新サービスのお披露目が始まるらしい。
「あ、あなたも招待されたのね」
「うむ。まあな」
エリンとうなずき合い、アルターの隣へ立つ。
「ペット関連の新しい機能を盛り込んだらしいけど」
「ブリーディングか？ ふむ、あやつのことじゃ、また妙な思い付きでは……」
などと言っていたら、
ぱぱぱぱー ぱぱぱぱー
ぱぱぱぱ ぱぱぱぱ ぱぱぱぱ ぱぱぱぱ ぱぱぱ
ちゃーちゃーちゃ ちゃーらーちゃーちゃー
ちゃーちゃーちゃちゃー ちゃららー
ぱぱぱぱぱぱ
結婚式で流れる例の曲だった。なるほど当ハウジングエリアのホストはどうやら、ペットブリーディングを結婚と位置付け、その記念すべきワンシーンを劇的に演出するサービスを始めたらしい。
となれば登場するのは新郎新婦であろうか。詰めかけたギャラリーが見守る中、ペットランコーナーの近くの噴水広場に据えられた華々しいお立ち台へずずずずず、と光に照らされた三つの影が浮かび上がった。
中央に、修道服か神父風のコスチュームをまとったタビガラス。
「ではこれより、結婚式を行います。新郎新婦は前へ」
仰々しく焚かれたスモークが晴れ、顔を覗かせたのがタビガラスのペット、ムキムキマッチョなヒヨコトレーナーと恰幅よいセキトリヒヨコであったものだから、ギャラリー一同は波を打ってずっこけた。
「ってお前らかーい！」
「暑苦しい結婚式ね……」
ツッコミにはそしらぬフリ、タビガラスは聖書のような分厚い本を手に口上を述べる。
「新郎トレーナーくん、病めるときも健やかなるときもパートナーを愛すると誓うかね？ うむイエスだな。新婦セキトリくんはどうかね、うむもちろんイエスだな。では誓いのキスを」
いや違う、聖書ではなかった。表紙には『子どものつくり方』と書いてある。要はペットブリーディングの手引書であり、タビガラスのクラフトスキルを活かした手作りアイテムであった。
と、お立ち台の後ろ、これでもかと飾り付けられた花たちに囲まれた台座が光り輝き始める。タビガラスがこのために用意した演出が文字どおりにまばゆく新郎新婦を照らす。
やがて光が晴れると、台座にはぽこん、と置かれた卵。ぴしぴしぱきん、その殻にいくつもヒビが走り、割れ落ちると、
「新たな子の誕生を祝おう。＜ヒヨコロボビルダー＞爆☆誕」
ムキムキマッチョな赤ちゃんヒヨコがポージングをキメていた。
「「「またかよ！！！！」」」
「というわけでデモンストレーションは終了。ペットのブリーディングを特別なものにしたい諸兄姉はぜひ、当施設のご利用を検討してくれたまえ～」
笑いに満ちるプレゼンテーションは大成功であったようで、さっそく何組かの申し込みがあり、ペットブリーディング結婚式は一週間待ちの人気サービスになったという。
無事にセレモニーの行程を終え、冒険へ出かけてゆく友人たちを見送ったところで、
「失礼！ 少し、お話をよろしいですかな。タビガラスどの」
「うん？」
慇懃で折り目正しく、一部の隙もなく燕尾服を着こなす、初老の男だった。ＮＰＣではなく、どうやらアバターであるようだ。
男は深々と一礼し、とうとうと語り出した。
「私、ペッパーと申します。サイディア王室の命において、主にハウジングエリアの有用かつ効果的な活用法について研究しておりまして。人呼んでドクター・ペッパー」
「ほお。サイディア王室の」
「拝見するに、あなたのエリアは実にユニークで多彩、それに機能美にも長けている。ハウジングシステムの限界を追求し、多数の独自機能をも実現されている……実に素晴らしい！ そこで王室は、あなたを招待することを決定いたしました」
「招待とな。いったいどこにだね」
よどみなく流麗な、いささかオーバーで仰々しい仕草で、男は告げたのだった。
「『サイディア王室プレゼンツ・ハウジング王決定戦』へ……！！」
タビガラスの瞳がきらり、きらめいた。
ブリーディング機能実装！ 『LIQUID』プレイヤーたち、なかでもペットの育成には一家言アリな者たちは大いに湧き立った。交配用に有用なペットモンスターをリストアップしランキング形式で発表する者、いやいやペットは可愛くてナンボだろと愛犬愛猫愛キノコ、愛ゴーレムに愛ドラゴンの素晴らしさを熱のこもった長文にしたためる者々。表現はさまざまながら、彼らのペット愛は深く純粋で止め処がない。
「ペットの交配だってさ。俺らもやってみようぜ、エリン！」
「おっけー、どんな子が生まれるかなぁ。楽しみ♪」
ベテラン冒険者カップル、アルターとエリンもわくわく。胸を高鳴らせ、孤高のサムライマイスター・シロヘビ嬢も、
「こればかりはひとりではどうにもならんからのう。もうちいと、交遊を広げてみるべきか……むむむ」
とペットのため悩みに暮れていたりした。
とかく大きな盛り上がりを見せる今回のアップデート。となれば放っておかず、波に乗っかり乗りこなすのが、そう。
エッチな要素はないのですか？ チラリズムすらも？ 全とばしですか！？
なーんつってはっはっは、冗句冗句」
タビガラス（プレイヤー：旅鴉 月詠）であった。
「なんじゃなんじゃ。今度はなにを始めおったんじゃ、タビガラスのやつは」
シロヘビが友人のハウジングエリアを尋ねると、今まさに新サービスのお披露目が始まるらしい。
「あ、あなたも招待されたのね」
「うむ。まあな」
エリンとうなずき合い、アルターの隣へ立つ。
「ペット関連の新しい機能を盛り込んだらしいけど」
「ブリーディングか？ ふむ、あやつのことじゃ、また妙な思い付きでは……」
などと言っていたら、
ぱぱぱぱ ぱぱぱぱ ぱぱぱぱ ぱぱぱぱ ぱぱぱ
ちゃーちゃーちゃ ちゃーらーちゃーちゃー
ちゃーちゃーちゃちゃー ちゃららー
ぱぱぱぱぱぱ
結婚式で流れる例の曲だった。なるほど当ハウジングエリアのホストはどうやら、ペットブリーディングを結婚と位置付け、その記念すべきワンシーンを劇的に演出するサービスを始めたらしい。
となれば登場するのは新郎新婦であろうか。詰めかけたギャラリーが見守る中、ペットランコーナーの近くの噴水広場に据えられた華々しいお立ち台へずずずずず、と光に照らされた三つの影が浮かび上がった。
中央に、修道服か神父風のコスチュームをまとったタビガラス。
「ではこれより、結婚式を行います。新郎新婦は前へ」
仰々しく焚かれたスモークが晴れ、顔を覗かせたのがタビガラスのペット、ムキムキマッチョなヒヨコトレーナーと恰幅よいセキトリヒヨコであったものだから、ギャラリー一同は波を打ってずっこけた。
「ってお前らかーい！」
「暑苦しい結婚式ね……」
ツッコミにはそしらぬフリ、タビガラスは聖書のような分厚い本を手に口上を述べる。
「新郎トレーナーくん、病めるときも健やかなるときもパートナーを愛すると誓うかね？ うむイエスだな。新婦セキトリくんはどうかね、うむもちろんイエスだな。では誓いのキスを」
いや違う、聖書ではなかった。表紙には『子どものつくり方』と書いてある。要はペットブリーディングの手引書であり、タビガラスのクラフトスキルを活かした手作りアイテムであった。
と、お立ち台の後ろ、これでもかと飾り付けられた花たちに囲まれた台座が光り輝き始める。タビガラスがこのために用意した演出が文字どおりにまばゆく新郎新婦を照らす。
やがて光が晴れると、台座にはぽこん、と置かれた卵。ぴしぴしぱきん、その殻にいくつもヒビが走り、割れ落ちると、
「新たな子の誕生を祝おう。＜ヒヨコロボビルダー＞爆☆誕」
ムキムキマッチョな赤ちゃんヒヨコがポージングをキメていた。
「「「またかよ！！！！」」」
「というわけでデモンストレーションは終了。ペットのブリーディングを特別なものにしたい諸兄姉はぜひ、当施設のご利用を検討してくれたまえ～」
笑いに満ちるプレゼンテーションは大成功であったようで、さっそく何組かの申し込みがあり、ペットブリーディング結婚式は一週間待ちの人気サービスになったという。
無事にセレモニーの行程を終え、冒険へ出かけてゆく友人たちを見送ったところで、
「失礼！ 少し、お話をよろしいですかな。タビガラスどの」
「うん？」
慇懃で折り目正しく、一部の隙もなく燕尾服を着こなす、初老の男だった。ＮＰＣではなく、どうやらアバターであるようだ。
男は深々と一礼し、とうとうと語り出した。
「私、ペッパーと申します。サイディア王室の命において、主にハウジングエリアの有用かつ効果的な活用法について研究しておりまして。人呼んでドクター・ペッパー」
「ほお。サイディア王室の」
「拝見するに、あなたのエリアは実にユニークで多彩、それに機能美にも長けている。ハウジングシステムの限界を追求し、多数の独自機能をも実現されている……実に素晴らしい！ そこで王室は、あなたを招待することを決定いたしました」
「招待とな。いったいどこにだね」
よどみなく流麗な、いささかオーバーで仰々しい仕草で、男は告げたのだった。
「『サイディア王室プレゼンツ・ハウジング王決定戦』へ……！！」
タビガラスの瞳がきらり、きらめいた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年12月20日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年12月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2023年12月27日 11時00分
