授業風景～２年芸術科の場合～｜リアクション

授業風景～２年芸術科の場合～

●お疲れ様でした

　榛名冥は、霧切翠子に指導してもらいつつ、自力で頑張って絵を完成させた。
「……できた！　少し不器用なのはご愛嬌。ありがとう！」
「頑張ったね、めーちゃん！」
　新しいキャンバス描かれたのは、はっきりとした人物画ではなく、絵の具で描いた人の形をした何か。
　そんな絵のタイトルは「白のあなた」。
「けっこー自信作だよ！　えへへ、2つ並べるともっと素敵かも」
　最初に仕上げた「灰の扇情」を取り出し、完成したての絵の横に。
　冥の絵が完成したので、モデルになった霧生深雪が見に来た。
「……こ、個性的で良いんじゃないか？」
「みゆ、モデルになってくれてありがとう！　メイ、頑張ったんだよ！」

「あ、マカロン食べる？　部活で配ろうと思っていたものなんだけど……。皆、休憩して一緒に食べよう」
　居残りの生徒達を労い、翠子はマカロンを配る。
「サンキュー」
　受け取ったマカロンを一口で食べた安本マコトは、下校時間まで仕上がるかなと不安に。
　そんな彼の近くで、翠子と冥はお喋りを始め、八神修と深雪はサティと遊んでいる。
　鷹取洋二は、絵を完成させるべく制作に没頭中。
「そういえば、この前のトリエンナーレ、ちょっとしか顔出せなかったけど、歌、すごい綺麗だったわ！」
「そう言ってもらえると嬉しいな！」
「榛名の歌は、皆の心の中に響いていたと思う。ユニット組んでいた俺が言うんだから、間違いない」
「ありがとう、みゆ」
「俺も、良い歌声だったと思う」
　トリエンナーレに出場していた修の心にも、冥の歌声は響いていたようだ。

「皆、絵、完成したかい？」
　美術室を離れていた若林先生は、戻ってくるなり、生徒達の制作状況を窺う。
「先生、メイの絵、できたよ！　ふたつ描いたよ！」
　最初の絵は提出を躊躇ったが、せっかく描いたものなので、若林先生に見てもらいたかったので提出。
「個性的な絵なのは結構だけど、テーマは何かな？」
「……え？」
　そう問われ、返答に困る冥に助け舟を出す深雪。
「俺を模った積乱雲ですよ、先生。それなら、テーマに沿っていると思うのですが」
「なるほど、そういうことか。それなら大丈夫だよ。制作、お疲れ様」
　ＯＫが出たので、帰り支度を済ませ、冥は翠子と一緒に下校した。
「俺の絵も完成しましたので提出します」
「猫ちゃん、可愛く描けたね。授業中の時より良くなっているよ」

　冥、深雪が提出し終えると、居残っていた生徒達も完成させ、続々と提出。
　まだ仕上がっていないのは、洋二とマコトの２人だけだ。
「ペースを上げて仕上げないと下校時間になるよ？」
「わかってるって！　これから本気出すんだよー」
　というが、マコトの絵は下校時間を過ぎても仕上がらなかった。
「遅くなりました。僕の絵、完成しました」
「お疲れ様、鷹取くん。帰っても良いよ」

　洋二が帰ったので、美術室にはマコトと若林先生の２人だけに。
「安本くん、真面目にやらないといつまで経っても帰れないんだよ？　私は一切、手伝わないからね」
「はーい……」
　授業中の元気はどこへやら。すっかりへこんでしまい、制作ペースが落ちてきた。
（あー……俺の夏は当分来そうにないなー……。彼女、できるかなー……）
　挫けそうになったが、今日中に仕上げる！　と頑張って制作した。
　最後に提出したマコトが帰ったのは、あと３分で閉門というところだった。

　誰もいない美術室で、若林先生は生徒達が描いた絵を評価しながら見ている。
「皆、思い思いの夏を描いたね。良い高校生活になるよう、祈っているよ」
　皆に、楽しい夏の思い出を作ってほしいと願う若林先生だった。
　梅雨が明ければ、寝子島にも本格的な夏が来る。その時、寝子高生達はどんな夏を過ごすのだろうか。
「私も何か、テーマに沿った絵を描いてみるか」

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あとがき

担当マスター：カターレ
ファンレターはマスターページから！

カターレです。

絵画を完成させた芸術科の皆様、お疲れ様でした。
夏、と一言で言っても、想像するもの、感じ取るもの、表現方法は人それぞれでした。
中にはすごく個性的な作品もありましたので、すごく楽しかったです。

皆様が描いた個性的な『寝子高の夏』、若林先生同様、楽しんで拝見させていただきました。
イラストとして表現できないのが残念ですが、楽しんで授業を受けている様子が伝わっていることを願います。

絵画作成、すごく難しいですよね……というのは、美術の成績が悪かった私が思ったことです。
絵が得意な方が羨ましいです。

らっかみ！タイムが７月になり、七夕まつりの告知がトップページでされたことで寝子島にも本格的な夏が近づいています。
皆様の夏が、良い思い出になることをお祈りします。

一足早い夏の思い出、ありがとうございました。

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