いざ勝負！！！！｜リアクション

いざ勝負！！！！

　落合まゆらは、寝子島駅の近くへ来ていた。
「冬物買い足して、あ、お弁当のおかずも見ようかな」
　買い物をするべく、移動しようと電車へ乗ることにしたのだが、駅に何やら人集りが。そして、陽気な音楽と歌声。どうやらのど自慢大会が行われているようだ。
「のど自慢か〜」
　当然のようにスルーしようとして、はっとする。
　春から声優の勉強を始める身だ。もちろん、歌のレッスンもあるだろう。
ここは一発、自分の美声を響かせてやるか！　という気持ちになった。練習せずにどれだけやれるか、声優としての力量も測れそうだ。
　受付は簡単に済ますことができた。誰でも参加可能、年配の御婦人や幼稚園生まで様々な年齢の人達が舞台で歌を披露している。
　順番待ちをした後、一度目の舞台へ。対戦勝ち上がり方式なので、一回戦というやつだ。
　相手の若い男性は、しっとりとしたバラード。中々の上手さで、勢いよく拍手がなった。
（この雰囲気、ちょっとやりにくい、かな？）
　男性の歌声に呑まれてか、観客は静かになっていた。
「次、落合まゆらさんです。曲は」
　司会の女性の目配せに、
「魔法少女ミスティックアリアを歌います」
　舞台の上で深めにお辞儀をして、伴奏が流れ始める。

　すっと息を吸って、最初の発声。歌い始めのサビは伸びやかに、この雰囲気に合わせてアニメ系の声ではなく、少し大人っぽく歌うことで印象を変える。
2回目の伴奏が流れ始めたところで、観客にどよめきが起こった。

子供達はアニメの曲なので嬉しそうだが、驚いているのは保護者や大人達のようだ。しっかりと歌い切り、再度お辞儀。
「はい、ありがとうございました！　かわいい曲でしたが、大人っぽさがあって凄く良かったですね！」
　観客からも拍手が起こり、手応えは十分だ。
　当然だがアニメ曲以外にもレパートリーはある。
　順調に勝ち進んでゆき、ようやく決勝戦。
（凄い）
　舞台に立った女性は有名な演歌だった。それこそ、小学生でも知っているレベルの曲である。
　渋めの曲を、ピッチを上げて歌いつつ、ポップに歌い上げたのだった。
「ありがとうございました〜。演歌なのにリズム感が素敵でしたね！　次は落合まゆらさんです！　曲の印象を変えるような歌い方対決になりそうです」
　まゆらはすっと息を吸って舞台に立った。
　曲は「魔法少女ミスティックアリア」のエンディング曲。しっとりとした曲だが、かなりかわいい系のアニメ声で元気に歌い上げた。
「いやぁ、素晴らしい対決ですね！　さぁ、優勝は………」
　審査員達の動きが慌ただしくなる。

「声を変幻自在、曲の印象を変える歌声で周りを沸かせました、落合まゆらさんです！」

「！　あ、ありがとうございます」
　声を変えて歌うという練習はある程度していたものの、今日はすこぶる調子が良かった。まさか優勝とは。
（声優としては及第点、かな？　……明日からも頑張ろう！）