ハッピーバースデー！　１月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　１月☆

●コスプレの縁
　
　仙藤紫はシーサイドタウンにあるカフェにやってきた。
　席に着くと羽織っていたものを脱ぎ、ひとまず温かい紅茶を頼んだ。ここで待ち合わせだが、相手の大橋尚先生はまだ来ていなかった。運ばれてきた紅茶を口につけ、ほっと一息つく。
　窓から冷たい空気を感じつつ、紅茶の香りと味を楽しむ。今日は３月にあるイベントの打ち合わせなのだが、まだ尚先生が現れる気配がない。

（新学期も始まったばかりだし、学校も忙しいものね）

　ふと自分が寝子島高校に在籍していた頃のことを思い出す。
　尚先生の家で勉強会をしたときに、コスプレ衣装がクローゼットから飛び出した。神魂の影響があったとはいえ、様々な衣装を他の生徒と一緒に楽しんだ。それをきっかけに紫はレイヤーとしての資質を見出され、ネコミケにレイヤーデビューしたのが３年前。そのときを皮切りに翌年開催された夏のネコミケには新撰組で参加。ただ去年暮れのネコミケは尚先生が風邪で寝込んでしまったため参加していない。
　そしてネコミケも終わり、年も明けて正月も過ぎて気づけば１月６日。今日は尚先生の誕生日でもある。鞄のなかにはプレゼントも入っている。

（それにしても遅いわね……大丈夫かしら）

　心配が深くなってきたところで、尚先生が息せき切って入店してきた。手を振るとすぐに気づいたようで、挨拶をかわしながら向かいの席に座った。

「お待たせしてごめんね」
「いえ大丈夫です」

　紫は、尚先生が変わらず元気そうで安心した。尚先生はホットコーヒーを注文すると一息ついた。

「新学期のこととかで慌ただしくて」
「そんな気はしてました」

　注文したコーヒーが届くと、火傷に気を付けて口に運ぶ。ようやく落ち着いたところで打ち合わせを始めた。

「この前のネコミケでは三国志だったわね」
「そうですね。今度は舞台を日本にしますか？」
「いいわね。それなら明治時代か大正時代はどうかしら」

　話は盛り上がり、アイディアが２人の間に広がる。そうして打ち合わせがひと段落ついたところで、紫が切り出す。

「先生、お誕生日おめでとうございます」
「あら、ありがとう」

　今回のプレゼントも去年と同様、コスプレに似合うアクセサリー系にした。尚先生は手に乗せたアクセサリーを見て目を細めた。

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