わんわん！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！｜リアクション

わんわん！　雪中お年玉＆お年賀争奪戦！

☆ポチ袋の中身は……？

　蒼は手近な雪だるまに目をつけて言いました。
「最初にこの辺でウォーミングアップを……」
　しかし、詠美は聞いていませんでした。
「蒼、あれだけデカい雪だるまだからきっとお宝満載だよ！」
「詠美、ちょっと待ってよ！」
　蒼はさっさと終わらせたいのですが、一方の詠美は負けず嫌いの性格を大きく刺激されて熱く燃え上がっているようでした。
（寒さなんて全く感じてないみたい。こうなるともう止められないわ）
　巨大雪だるまに向け猛進する詠美を、蒼は追うしかないのでした。
「大きいわね……」
　蒼は巨大雪だるまを前にしてごくりとつばを飲み込みました。
　改めて近くで見ると、高さ５メートルの雪だるまはまさに巨大でした。
　大人数でかかればいいのでしょうが、周りは確実に小さい雪だるまを狙っていく人が多く、まだ蒼と詠美二人だけです。
「人が少ない方が分け前が多いじゃない」　
　張り切る詠美に、蒼も覚悟を決めました。
「いくわよ、詠美！」
「もう掘ってるわよ」
　二人は息の合ったプレイで着実に雪だるまを破壊していくのでした。

　莉鳥と琉歌はサンマさん像を攻略することにしました。
「一見細長いので簡単そうだけど、ああいうのが意外に壊しにくそうね」
　少し考えて、莉鳥は作戦を提案します。
「直接サンマさんの胴体を狙うのではなく、根元の雪を掘り起こし、根元に切れ込みを入れて倒れるように仕向けましょう」
「ナイスアイディアですね、先輩！」
　琉歌は頷き、二人はサンマ像の根元を掘り崩しました。
　やがてサンマ像がグラリ、と揺れて倒れ。
「先輩！　ポチ袋です！」
「まだお札かどうかはわからないわよ」
　驚く様子もなく冷静さを崩さない莉鳥。
　琉歌はドキドキしながらポチ袋を開け……
「１万円です！　先輩！　やったあ！」
　ぴょんぴょん飛び跳ねて大喜びするのでした。
「よかったわね」
（受験前の気晴らし……としてはハードだったけど、よかったかもね）
　表情を崩さない莉鳥ですが、少しだけ口調が嬉しそうなのに琉歌は気づいたのでした。

　碧南、柚乃、愛は息を合わせて巨大猫像を破壊していきました。
「あと少し！」　
　ドドッ！
　ついに猫像は崩れ、三人は雪の中にシャベルを突っ込みます。
「あった！」
　柚乃が見つけたのはダンボールの箱。
　わくわくしながら開けてみると、みかんが出てきました。
「はずれよりはマシね」
　菓子折りのほうがよかったな……と思ったとき、向こう側で愛が声を上げました。
「あった！」
　ビニール袋から取り出すと、菓子折りが出てきました。
「寝子饅頭！　先輩、みんなで食べましょう」　
　得意げな愛に、柚乃はムッとします。
「調子に乗らないでよ。たまたまあんたが見つけただけで、みんなで力を合わせたんですからね」　
「なんですかその言い方……？　みんなで食べようって言ってますよね？」
　一触即発の二人に、いつもなら止めに入る碧南が声を上げました。
「あった……！　ポチ袋」
「「えっ」」
「先輩、５円ですか？　お札ですか？」
「あっ、あんたは引っ込んでなさいよ、私が先に見たい！」
「まあまあ……じゃーん！」
　碧南は二人をいなしながら、輝く笑顔でポチ袋から一万円札を引き出して見せたのでした。