【カード】ちはやぶる神の札引く大いくさ｜リアクション

【カード】ちはやぶる神の札引く大いくさ

◇にゃんじゃもんにゃ

　百人一首で勝ち進んだ智依子だが、惜しいところで負けてしまった。
　祖父母が花札をやりたいと言うので娘もつれてカードゲームの会場に向かったが。
「にゃんじゃもんにゃやりたい！」
　楓が言い出し、智依子は付き添いとして参加することにした。

　……のつもりだったが。
「相手の方がいませんね。希望者が来るまで待つか、それともお母さんがお相手をしてはいかがですか？」
　係の人にそう言われた楓は、
「ママとやるー！」
　と声を上げたのだった。
「それじゃママとやろう。でもママ、手加減しないわよ」
「いいよ！」
　５歳の娘相手でも、勝負事は真剣にやらないと失礼だと智依子は思っている。
　そのおかげか、楓は負けても泣いたりしない。

　
　勝負が始まった。
　カラフルでさまざまな姿をした謎の猫の絵が描かれたカードをめくる。
「ぶちぶち」
　智依子は、その猫の特徴を見て名前を決める。
（楓はどうかしら）
「クロたん」
（黒いからかしら？）　
　また智依子の番だ。
「ちび助」
　楓は、
「ぐるぐる」
　なんだかおかしくて笑いそうになった。
「どうして？」　
　つい聞いてしまう。
「目がぐるぐるしていそうなねこだから」
「そういえばそうかもね」
　気を取り直して次をめくる。
「……ちび助！」
「ちびすけ！」
　ほとんど同時に智依子と楓が声を上げた。
　係の人が楓の側の手を上げる。
（審判つきだと楓が有利かしらね……）
　なら、判定にならない速さで言わないと。
　親子の微笑ましくも真剣な勝負が続いた。
「ぐるぐる！」「ぐるぐる！」

　そして結果は。
「ママの勝ちね」
「ママ、強かったね」
　かろうじて母の面目を保てた。
「もういっかいやりたい」
「そうね……でもおじいちゃんとおばあちゃんの花札の応援もしたいわね」
「おうえんにいく！」
　楓が言い、智依子は少しほっとして花札のコーナーへと向かったのだった。

　