【カード】ちはやぶる神の札引く大いくさ｜リアクション

【カード】ちはやぶる神の札引く大いくさ

◇花札

「ねえ、カードゲームやらない？　参加者が足りないんだ」
　寝子高近くを歩いていた寝子中１年の佐藤瀬莉は、いきなり声を掛けられた。
「あんまりわからないけど、いいのかな？」
　懐中時計いじりが趣味の瀬莉は、普段あまりゲームはやらない。
　でも幼いころ大病をしたときは、治りかけたころ病院でトランプをせがんだり一人で並べたりもしたものだった。
「もちろん。ルールはちゃんと説明するから」
「じゃあ、やってみようかな」

　こうして参加することになった瀬莉は花札のコーナーにやってきた。
　高校生だけでなく、お年寄りの姿もある。
　生徒の祖父母なのだろうか。
「花札なんてやったことないんですけど」
　係のお姉さんに声をかけられ、瀬莉がそう言うと。
「それじゃルール説明をするわね。まず親を決めるの。裏向きの札を1枚ずつめくり、月の早いほうが初回の親となります」
　少し緊張して聞いていると、
「あ、これが花札ですかぁ……牡丹鍋って美味しそうですよねぇ♪」
　後ろからそんな声が聞こえてきてずっこけそうになった。
（いろんな人がいるんだなあ）
　リラックスできてちょうどよかったかもしれない。
　説明を受けた後は、チュートリアル的にプレイしてやり方を理解した。
「なんとなくわかりました」
「それじゃいよいよ『こいこい』の勝負をやってみましょう」

「こいこい」
　ルール説明の確認し、役が間違っていないことを確かめてから瀬莉は宣言する。
「できた、あがりです！」
「あら、お嬢さん強いわねえ」
　始まるとビギナーズラックか連戦連勝で、瀬莉はすっかり気をよくした。
（あたしもしかして才能あるかも♪）

　チップがどんどん溜まるにつれ調子に乗ったが。

「あがり」
「えっ……」
　次に当たった眼鏡の青年は、鬼のごとく強かった。
　ほとんど歯が立たずに惨敗してしまった。
　聞こえてきたところによると、OBで生徒会長も務めた大学生らしい。

「負けちゃったのは残念だけど、よく見たら花札ってなかなかデザイン的にいいよね」
　今度買ってみようかな、と瀬莉は思う。
　その後もしばらく「こいこい」を続け、勝ったり負けたりの繰り返し。
「それなりに楽しめたからまあ良しとしよう」
　と思いながら、次のコーナーへ向かうのだった。