【カード】ちはやぶる神の札引く大いくさ｜リアクション

【カード】ちはやぶる神の札引く大いくさ

◇ポーカー

「どれに参加しましょうか、珪先生」
　寝子高３年の綾辻綾花は、早川珪先生と相談しながらカードゲームのコーナーを回っていた。
「このあたりはポーカーだね」
「そうですね……あら？」
　壁に貼られたトランプが描かれた布を何の気なしに見ていると、風が入ってくるようで布が動いた。
「えっ？　これ隠し部屋みたいです！」
　隙間に手を突っ込めば、人が通れる入り口になっていた。
「そういえば闇ポーカーも開催されてるという噂だったね」
　危険な香りのする隠し部屋を発見して悩む綾花。
「闇ポーカーはルールが違うんでしょうか？　……珪先生、どうしますか？」
　ドキドキしながら珪先生に尋ねるるが、綾花の心は隠し部屋へと飛んでいる。
　その時、綾花の手を珪先生が掴んだ。
（……えっ？）
　驚いた綾花を諭すように、珪先生は優しく言った。
「……やめておこう」
「そうですよね……」
　ほっとしたような、ちょっぴり残念なような綾花。
　けれど珪先生の手が優しく綾花を引き戻してくれたのは嬉しかった。

　
「綾辻さんはポーカーできる？」
「ポーカーのルールはなんとなく分かりますが、珪先生にちゃんと聞いてしっかり把握しておきたいです」
　綾花は珪先生にルールの説明を受ける。
「同じ数字がニ枚で、ワンペア。ペアが二枚組でツーペアだよ」
「ツーペアのほうが強いんですよね」
　説明を受け終わったところで。
「席が空きましたのでどうぞ」
　と係の人に声をかけられた。
「え、対決するんですか？　できれば協力してできるカードゲームが良かったんですけど」
　ちょっと困惑した綾花だったが、ほかに対戦相手もいないようだ。
「珍しい機会なのでちょっとやってみようかな」
　席に着いた綾花は、こっそり珪先生に耳打ちする。
「勝った時のご褒美を決めておきたいです。勝ったほうが今度のデートの場所を決められるっていうのはどうですか？」
　珪先生はちょっと目を見開いて、
「綾辻さんがそれでいいなら、いいよ」
　と笑った。

（良い手札が揃ったらいいんですけど緊張しますね）
　表情に出さないように気を付けようと思う綾花だが。
（嘘をつけない性格なのは自分でも分かってるので顔に出てバレそう）
　そんな気はしているのだった。
　珪先生の表情をじっと見る。
（珪さんの手は……？　よい手札か知りたいけど隠すのが上手そうです）
　手札はわからないまま、つい見とれてしまいそうになる。
（いけないいけない。どうしましょう、もっと強い手ならいいんですけどこれ以上は無理でしょうか）
「それじゃ、勝負だ」
「スリーカードです」
「こっちは、フルハウスだ」
「……残念ですけど、今度のデートは楽しみです」
「負けたのに？」
「はい、どこに行くのか珪さんにお任せだから」
　どちらに転んでも嬉しい綾花だった。

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