授業風景～１年体育科の場合～｜リアクション

授業風景～１年体育科の場合～

「おう、高飛びの方はどうだ？　中学の記録越えてるだろな？　カカカカッ！」
「あ、センセ！　ミンナ凄いデス！　赤城君が飛びすぎてマットから転げ落ちましタ！」
　汐崎キミが有紀に答える。
「カカカカ！　元気があってよろしい！　多少の怪我なんぞ気にするな！　ガンガン行けよ、ガンガン」

「おーいてぇ。ちっと擦りむいちまったぜ……高飛びって難しいよな」
　ブツブツ呟きながら、マウルがスタート位置に戻る。
―ただ飛ぶなら楽勝なんだがな……―
「赤城君！　センセがガンガンイケって！　マットから落ちてもＯＫダヨ！」
「ははは、ありがとよーって、もう落ちねーっての」
　無邪気にはしゃぐキミに苦笑いしながら、手を振るマウル。
―さて、今度はどう飛ぶか…………ま、なんとかなるだろ、あれこれ考えるのは性に合わないぜ―

　周囲に誰もいないのを確認して走り出す。
　マットに対して円を描くようにアプローチ。
　バーが目の前に迫る……反射的にバーに対して腹ばいに覆い被さるように飛ぶ。
　ふわりと浮いた体がバーを飛び越えて、マットに落ちる。
「おぉ！？　おわあぁ～～～」
　マットから転げ落ちるマウル。
「カカカカ！　やるじゃないかマウル！　それにしてもベリーロールでアレを飛ぶとはな、さすが野生児！」
　マウルがもぞもぞと体を起こす。
「へ、へへ、どーも……これなら……鉄骨二つは行けるか……な」
　飛んだ高さを確認しながらマウルが呟く。
「はぁ？　……ま、体は怪我して無さそうだな、バー調整しておけよー」

「おう、汐崎、バーはこの位でＯＫだな？」
「ウン！　赤城君、そこでイイヨ！　そんじゃ、れっつゴー！」
　キミが軽やかに駆け出す。
　砂埃を立てて、バーに近づき……跳躍！　軽々とクリア！
「イエイ！　やったヨー！」
　マットの上で身を起こし、はしゃぐキミだったが……
「カカカカ！　汐崎、ハイジャンは片足踏切だっての！　お前、両足で飛んでたぞ？」
「そでしたカー！　あはは、失敗、失敗デス！」

　スタート位置に戻るキミ。無造作に走り出した。
―ウーン、片足……えっと、こう？　あ、アレレ？―
　ガンッ！
「きゃぃん！」
　おでこを押さえて座り込むキミ。
「カカカカ！　ぼーっとしてんなよ汐崎ぃ！」
　笑いながら近づいてくる有紀、キミの脇に手を入れて引き起こす。　背中に柔らかな感触を感じて、赤面する。
「ハイジャンはしろーとみたいだな。そんじゃ、またぎ跳びでいけ。いいか、バーに対して垂直に助走、踏切足を蹴り上げて、直ぐに振り上げ足を……」
―ワァ、せんせぇ、くっつき過ぎデス！　良い匂いガ……あう、いけないいけない―
「ほら、分かったか？　んじゃやってみろ」
「は、ハイ！　行ってきまス！」
　バネ仕掛けの人形の様にぎくしゃくした動きでスタート位置につくキミ。
―フゥ、せんせい、大胆……ジャナイヨ！　指導、無駄出来ナイ！―
　ぱんぱんと顔を叩いてから、走り出す。
―バーに垂直、フミキリ足、ケリ上げ、スグ、フリアゲ足アゲル！―
　バーが迫る。体を宙に躍らせる。ギリギリを飛び越えて……
「ウンっしょ！　………………ど、どーなっタ？」
　キミが寝転んだまま、首を持ち上げる。
「カカカカッ！　ナイスジャンプ！　不格好だったが、最初ならこんなもんだろ！」
　胸を反らせて笑う有紀。強調されたその部分を見て、
「あ、ハイ……アリガトゴザイマシタ」
　頬を染めるキミだった。