あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん｜リアクション

あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん

　とくに約束はしてないけれど、もしかしたら会えるかも、とは思っていたのだ。
「ラッセル」
　頭上から呼ばれ、桜井ラッセルは笑顔を向けた。
「晴月！」
　無意識に弾む声。と、近くを歩いていたあやかしが「おや君たちは忘年会の！」と声をかけてきた。
「あけましておめでとう！　新年会も楽しんで行ってくれよ。ああでも残念だ。今回は歌のイベントがない。ぜひ一緒に歌いたかったのに」
「あ、あけましておめでとうございます！　じゃ、また別の機会に、歌聞かせて下さいよ！　俺たちもきっと参加しますので！」
　ぜひそのときに！　と手を振って、あやかしは去っていった。
「覚えていてくれたんだね」
　ラッセルの隣に並んだ晴月が呟く。
「うん、そうみたいだな！」
（あやかしも人と変わらないもんで陽気でいいなぁ。むしろできこと多くて楽しそ）
　嬉しい気持ちのままこたつ席に行き、居合わせた四ツ葉乃キィに挨拶をして、一反豆腐鍋を堪能。
　ひらひらになって戻った後は腹ごなしだ。惜しくらまんじゅうに参戦である。

　※

「晴月！　こうやんだよ！　みんなでおしくらまんじゅうして温まる遊びなんだ。ほらほら！　キィもほら！」
　ラッセルは意気揚々と、集団の中に飛び込んでいった。
「ラッちゃんと遊べる日がっ……！」
「待って、私もっ！」
「おっ、来たな。みんなで楽しもうぜ」
　とはいえラッセルは、おしくらまんじゅうが初めてだ。
（中学生まで輪に加わったことなかったし、高校生になってする機会が来るなんて思わねーって）
　あやかし達にもみくちゃにされながら。かつ、離れ離れにならぬよう、晴月とキィと両手を繋いで。
　ラッセルは生まれて初めてのおしくらまんじゅうを楽しんだのだった。

　※

　そして体を動かした後は、お風呂一択である。
「水着の種類……ああこれ、この一番普通ので！」
　水着をレンタルし、ラッセルは巨大風呂に入った。
「ふー………温まる。あやかしの湯沸かしって物語みたいで風情あるな」
　などと言っていると、するりと隣にやって来たのが、晴月である。
　とはいえ彼女は着衣で中空。
　水着レンタルの受付で「どっちの水着がいいと思う？」と聞いてきた晴月に、思わず言ってしまったのだ。「気になるから止めて……！」と。顔を真っ赤にして。
「あの……さっきはごめん」
「別に……お風呂入らなくても、一緒にいられるし」
　晴月はふわふわ浮かんだまま、ラッセルの裸の肩に手を置いた。
「……熱いね」
「……風呂入ってるから」
　－－本当は違うけれど、そういうことにしようと。
　ラッセルはごまかすように、夜空に目を向ける。
　と、そこにはキラキラ輝くスターダストが！

　※

「これが…！　北海道かそれ以上北じゃねーと見れねぇと思ってた！　すっげー！」
「本当に綺麗……」
　輝きに導かれるように、空へ飛んで行く晴月。
　が、見守るラッセルはひやひやだ。
「当たったら寒いどころか氷になりそうだな……ああ、でも……いいな。スマホのカメラ無理かな」
　できることなら、煌めきをバックに舞う晴月を写真におさめたいところ。無理を承知でスマホを構え、ラッセルはシャッターボタンを押してみた。