あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん｜リアクション

あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん

　にゃんにゃん猫が集まるこたつ席。

「熱いから火傷しないように気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
　と、ほっこり温まっているお客様を、横目に見つつ。
「あやかしに猫だけじゃなくて、人も何人か混ざってるわね……まあ、寝子島の人達なら大丈夫でしょ？」
　ヴィーゼ・ベルンスタインは、そう呟いた。
　今回の新年会は、人間も歓迎の企画だし、人間用のメニューもしっかり用意されている。
　おかげで、ウェイトレスのヴィーゼは大忙しだ。

「フツウの豆乳鍋、お待たせしました！　こちらの方は雪女のバニラアイスね。本当に冷たいから気をつけてくださいね！」
　自分の血で作った翼と手を駆使して、複数のメニューを同時に運ぶのは当たり前。
「あっ、はい！　次そちらのテーブルに参ります。少々お待ちくださいませ！」
　などと言いながら、スカートをはためかせ、あちこち飛び回っている。
　忙しすぎだよ……とため息をつくあやかし仲間もいたが、こうやって、お客様の笑顔を見ながら働くのが、ヴィーゼは好きなのだ。

「でもさすがに、ちょっとお腹すいちゃった」
　メニューを厨房に伝えたところで、裏方スタッフ用に用意されているトマト鍋を一口。
「熱っ！　でも美味しいわねえ」
　火傷注意で咀嚼して、ごくんと飲み込んだところで、お客様からの呼び声が聞こえた。
「は～い、今行きます～！」
　大きな声で返事して、翼はばたかせて席に向かえば「あれ？　体、赤くないですか？」と、おひとり様のお客様。
「ああ、さっき食べたトマト鍋のせいですね」
「それって美味しいですか？」
「ええ、とても美味しかったですよ♪」
　ヴィーゼはにっこり笑顔で答えた。
「他にも色々なおばけ鍋に甘味、普通に美味しい人間様向けのメニューもございますから、お好きなものや気になったものをぜひ食べていってくださいね」
　その後はメニューにはないきなこもちを運んだりしててんてこ舞い。
　でも「ありがとう！」と笑顔全開で言われると、なにより嬉しいのである。

　※

　仕事の後は、大きなお風呂でのんびりと。
　水着に着替え、ぽかぽか温かいお湯の中で、体を伸ばして息を吐く。
「はぁ～、極楽だわぁ……大きなお風呂は手足伸ばせるのが良いわよねぇ……。って、あちらのカップルは、こんな広いところで肩抱いてくっついてるけど」
　楽しみ方は人ぞれぞれと思いつつ、星空を見上げていると、背後に黒猫がやって来た。
「あら、猫ちゃんどうしたの？　お風呂が気になるけどちょっと怖いのかしら……一緒に入ってみる？」
　みゃうんと鳴く猫に、そぉっと手を伸ばすヴィーゼ。
　と、猫はヴィーゼと一緒に湯につかり、ぽかぽかにゃんにゃん、お風呂を堪能。
「ああ……温かいし柔らかいしかわいいし、今夜は最高ね……」
　そう呟いたウィーゼの頭上で、キラキラのスターダストが輝き始めた。

このページにイラストを設定する