あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん｜リアクション

あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん

「……あやかしの皆が浮かれているから、つられて顔をだしてみたけど……」
　こたつ席にちょこんと座り、キィはあたりを見回した。
「ほんとに猫が多いわね。こたつにみかんに、猫が丸くなる……確かに聞いたことはあったけど、ここまでくると壮観ね」
　言いながら、こたつの上のメニューを覗き見る。
「あやかしのメニューと人のメニュー？　付喪神はどちらを頼めばいいのかしら？」
　思わず呟いた言葉は、背中に翼を生やしたウエイトレス・ヴィーゼに届いたようだ。
「どうぞお好きなものを頼んでくださいね。どれでも美味しいですから！」
「……わかりました、ありがとう」
　こくり、頷き、再びメニューを見つめるキィ。
　とはいっても。
「……食べ物はあんまり食べたことないから何をどう頼めばいいのか……おすすめでお願いできますか？」
　ヴィーゼはにっこり笑顔で「わかりました」と去っていった。

　－－と。
「……ひゃ！？　あ、ちょ……」
　キィは叫んだ。
　ハチワレ猫が、突然膝に乗ってきて、ごろりと寝転んだのだ。しかも猫はその場でくねくね。
「待って！　柔らかすぎ……どうしたの？」
　ご飯を食べたいのか、それとも遊びたいのか。わからないまま、触ろうと上げた手を制止する。
「触れたら壊れそうで怖いんだけど……」
　そこに、三毛猫がやって来た。
　この柄は見覚えがある……気がすると思っていたら、案の定。
「やあ、おっかなびっくりな様子でどうしたんだい？　いつもは物怖じしないから驚いたよ」
「三毛谷さん」
　キィは猫に呼びかけた。
「あ……あけましておめでとう。あの、この子がなにをしたいのかわからなくて……」
「ああ」
　三毛谷道哉は、キィの膝上の猫に目をやった。そして言うのは。
「この子はご飯がほしいようだねぇ」
　キィはすぐさま、ヴィーゼを呼んで、猫のご飯を注文した。
　待つ間「あと……」と道哉に悩みを相談する。
「私、猫に今まで触れたことなくて、頑丈な生き物ならまだしも液体？　なんていうじゃない」
「なるほど」
　道哉は頷き、キィの膝上にポンとのった。
「それなら私で練習するといい。猫の抱き方や気持ちがよいポイントを教えてあげよう」

　※

　三毛猫道哉のアドバイス通り、道哉とハチワレを撫ぜながら、待つことしばらく。
「お、キィもいるじゃん！　奇遇だな」
「ラッちゃん」
　聞き慣れた声に、キィは顔を上げた
　ラッセルは晴月とともに、キィの隣のこたつに入る。
　キィの前には、いつしか数匹の猫が集まっていて、座る余裕がなかったのだ。
　そこに料理が到着し、食べたキィは身体がひらひらになってしまった。
「キィ、すっごいことになってるけど、何食べたんだ？」
「それはひらひら一反豆腐鍋ですよ！」
　運んでくれたヴィーゼが告げる。いかにせん、ひらひらすぎるだろと笑うラッセル。
　キィはむすっとしながら、ラッセルの頭に巻き付いた。
「おいおいっ！」
　だがラッセルも、同じ鍋を頼んだのだから、人間は意味がわからない――と、キィは思ったのだった。

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