あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん｜リアクション

あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん

　二人でかけた帰り道。
　ねこでんに乗っていたら、いつの間にか、霊界に紛れ込んでいたようだ。
　「みゃおん、にゃおん」と響く声に、あやかし達の笑い声。
　綾辻綾花は、隣の早川珪を見上げて言った。
「珪先生、新年会してるみたいですね」
　声に導かれて道を歩けば、想像通り……いや、想像以上の賑やかな光景だ。
　屋台が出ているだけならまだしも、ずらりと並んだこたつに、猫がみゃんみゃん出入りしているなんて！
「どうしますか？」
「もちろん参加しよう」
　にこり笑った珪を見て、綾花もまたにっこり笑う。
　そして二人は、にゃんこがいっぱいのこたつ席に、ほっこり並んで座ったのだった。
「んみゃあ、みゃうん」と鳴く猫は、茶トラと白猫。綾花と珪の膝の上。
「かわいいな」
　珪の大きな手のひらに、もふもふの体を寄せる茶トラ猫。
　綾花の膝の上では真っ白猫が、のんびりあくびをしてくつろいでいる。
「なつかれてますね」
　白猫を撫でつつ珪を見て、ちょっと猫が羨ましかったり。

　※

　食事メニューは、こたつの上に置いてあった。
「綾辻さんは何を食べたい？」
「そうですね……フツウの豆乳鍋とか言いなって思います。にゃんこにはジューシーささみとか」
『ささみ』という言葉に、白猫の耳がぴくん！　と跳ねる。
　気づいた珪は「ははは」と笑い「じゃあ豆乳鍋とささみを頼もう」と言った。
　ありがとうと言うように、珪の膝の上で、茶トラ猫が「みゃう」と鳴く。
「熱いから火傷しないように気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
　ひとつの鍋を、珪と綾花、二人でつつく。美味しいのはもちろんなのだが、こたつでもふもふにゃんこを膝にのせつつ、大好きな人と一緒に鍋を食べるというこの状況が、綾花の心を温かくしていた。
　少し先の席では、小さな女の子が、三毛猫をなでなでしつつ座っている。その少し先には、お化けメニューを食べるらしい人間カップルが。
「みんな楽しそうですね」
「そうだね。でも僕以上に楽しい人は、なかなかいないんじゃないかな」
「えっ……」
　綾花は思わず手を止めた。
　聞きたいことがある気がするが、言葉が口から出てこない。
　とはいえ、一緒にいて楽しいと思ってくれることが、とても嬉しい。
　しかもこの後は、ぽかぽかお風呂が待っている。
　さっき、珪が言ってくれたのだ。「一緒に入ろう」と。
（水着を着ても、ドキドキしちゃいますけど……。珪さんはどんな気持ちなんでしょう。大人だから平気なのかな）

　※

「いいお湯ですね」
　緊張しながら着替えた後。
　温かな湯の中で、綾花はほうっと息を吐いた。
　珪に寄りかかり、空を見上げていると。
「肩が出ているけど、寒くない？」
　珪の手が、綾花の肩をそっと抱いた。
　ドクンと高鳴る胸の内。
　空には、綾花のときめきを彩るような、ダイヤモンドダストがキラキラ輝き始めた。
「珪先生、キレイですね！」
「そうだね。一緒に見られてよかった」
　綾花を片腕で抱いたまま、佳が微笑む。
　言おうとしたことを、先に言われてしまった。
　でも、言ってくれたことが嬉しくて。
　綾花は空を見上げる珪を、見つめたのだった。

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