あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん｜リアクション

あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん

「あやかし役の人はいつも凄いね。これが技術の進歩と何でも演じられちゃう役者さんなんだ」
　稲積柚春はこたつの中から、辺りを見回した。
　数えきれないほどいる猫も凄いのだが、目を見張るのは、当然賑やか笑顔のあやかし達だ。
「それに食べ物も凄く凝ってて、雪女のバニラアイスなんてびっくりして動けなかったよ。本当に凍っちゃったみたいだった」
　と、隣のウォルター・Bがくすくす笑う。
「そうだね。あのときはまるで氷像みたいだった。このまま溶けなかったら、担いで帰ろうと思ったよ」
（ってことは、ワットの家にお持ち帰り！？）
　柚春の心臓がドクン！　と跳ねる。
　が、動揺する柚春の心知らず。ウォルターは「今度は温まるものを……」と言いながら、メニューを覗き込んでいる。
　ゆえに柚春も視線を落とした、ところで。
「『もちもち！おしくらまんじゅう』始まるよ」という元気な声が聞こえて、二人は顔を上げた。
「おしくらまんじゅう？」
（………ワットは女性のお尻が好きって疑惑があるし喜ぶかもしれないけど、いや、見るのと触るのではまた違うかもだけど複雑な気分だな）

　と、次は『ぽかぽか！お風呂』の呼び込みが聞こえた。
「お風呂もいいな……水着も着ていいみたいだし」
（タオル一枚で混浴したこともあったな、そのままお姫様抱っこもしてもらって……でも、脚には自信があるけどお尻のボリュームはワットには物足りないかもしれないし）

　どっちにしても、ウォルターが好き（らしい）お尻が気になってしまう柚春。
　だが、次の誘いは大丈夫。
『ころころ！みかん積み上げ競争』参加者募集、の声だったからだ。
「これだ！」と顔を見合わせて、柚春とウォルターは、揃って会場に向かった。
　みかんのサイズをしっかり見て、土台の個数や積み上げる段数を計算するのはウォルターの役目。的確に積み上げていくのは柚春の役目である。
　－－しかし。

　※

「あっ、それはまだ積んじゃダメだよ」
「えっ！？　さっき次って言ったの、このみかんじゃなかった？」
「ああっ、腕が当たる倒れる！」
「うわっ！」
　積み上がっていくタワーを前に、右往左往。
　結局、タワーを守るために自分たちの体勢が崩れ、二人はその場に転んでしまった。
「ちょっ、ワット重いよ……！」
　顔を赤くし、呟く柚春。
　それもそのはず。ウォルターは、柚春を抱きしめるように、ぴったり密着していた。
　しかも彼は、「ごめんね」と言いつつ、柚春を抱く腕に力をこめてくる。
（えっ……？）
　柚春の心臓がまた跳ねる。
　とはいえ、ぎゅっとされたのはわずかな間。
（もしかして気のせい……？　でも……）
　ちらりと見れば、ウォルターはにこりと笑う。
（気のせいじゃない……！）
　しかしその後、彼は何もなかったふうに身を起こし、柚春を抱き起こした。
　そして二人は、再びみかん積み上げ競争を再開。
　とはいえ柚春の心は、ウォルターの行動のことでいっぱいなのだった。

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