あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん｜リアクション

あやかし新年会、ぽかぽかにゃんにゃん

「猫の極楽があるという噂をきいてはねぇ。新年会のあの話だったんだね」

　道哉は三毛猫姿で、てしてし道を歩いている。
　茶トラ、真っ白、キジトラ、ハチワレ、真っ黒と、あたりは猫がいっぱいだ。
　その隣には、餅々きなこがふわふわと。
「きなこ、やったねぇ」
　道哉がぱちんとウインクすると、きなこは破顔した。
「それにしてもこんなに猫が多いのは、自惚れでも、私を気遣ってくれたと思っていいかい？」
「うぬぼれ？」
　きなこはきょとんと首を傾げた。
「わたしはみんながたのしいといいなっておもっただけだよ！」
「そうか」
　野暮なことを聞いたかと、道哉は右前足で顔を拭う。
　きなこはそんな道哉に並んで低く飛び、道行く猫と戯れた。
　あやかし達は、きなこと猫を見、ふふふと笑う。
　中には道哉に、ささみやカリカリを分けてくれる者もあった。
「みんな優しいねえ」

　※

　そして行き着く先はぽかぽかこたつである。
　もちろん三毛猫道哉はふとんに潜り、みゃあんと背中を丸くする。
「人に化けれるようになって暖房や文明の利器で凌いではいたが、猫の性には逆らえなくてねぇ」
　その傍らで、きなこもまたぬくぬくだ。
「あったかくてしあわせだねえ」
　近くのこたつでは、人間カップルが人間メニューを食べるよう。
「美味しいですね、珪先生」
「そうだね。あったまるね」
　別の二人は、あやかしメニューのバニラアイスを食べてかちこちになり、慌てていた。
「わっ……！」
「稲積！　わぁ、どうしよう。持ち帰りたい……」

「きなこはなにか、食べないのかい？」
「きなこもち！」
「あはは、メニューに書いてないようだけど、頼んだら出てくるかな？」
　きなこが「きなこもち！　きなこもち！」と言うからか。
　ヴィーゼがきなこもちを運んできてくれた。
「はいどうぞ。よく噛んで食べてね」
「わーい、ありがとう！」
　唇をきなこまみれにしているきなこを見上げ、道哉は思う。
「うん……良い日だ。寝ても覚めてもきなこの顔が見れて落ち着くねぇ……」

　※

　などとしていると、近くに見慣れた人物がやって来た。
　膝に座ったハチワレ猫に、戸惑っている様子。
　普段はあんな感じではないのにと思いつつ「キィの嬢ちゃん」と声をかける。
「三毛谷さん」
　キィはちょっとだけ安心したような顔をした。
　やれやれ声をかけてよかったと、人間姿ならば微笑むところ。
　あれこれ指南しそのうちに、連れが来たようだったので、道哉はきなこのもとへ戻っていった。
　と、そこにはすねこすりが。
「おかえり」
　右手ですねこすりをもふりながら、左手を伸ばしてくるきなこ。
「ただいま、きなこ」

　※

　きなこが香ばし焼き魚を頼んでくれたので、顔を寄せてもぐもぐ食べる。
「猫又になって人の食べ物も食せるが、どうにも体が猫まんまを欲するんだ。良いことをした後は食事が進むねぇ」
「ふふ、にんげんのみちちかくんも、ねこのみちちかくんも、いいこ」
　きなこの小さな手が、道哉の背を撫ぜる。いったん食べるのをやめ、道哉はゴロゴロと喉を鳴らしたのだった。

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