【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

☆友人とバイキング

　楡宮遠海が所属する、去年の秋活動を開始したガールズバンド『衝動少女』。
　クリスマスと大晦日でライブを敢行しましたが、それなりに好評を得て順調な滑り出しでした。

　そして元旦に集まったメンバーたちでしたが。
「やたらおなか空いた……」
　遠海の言葉に、中学時代のクラスメイト星野アカリは笑いました。
「遠海はいつものこととして、うん、確かにおなかすいたかも」
「そうだねー」
「何か食べようか」
　綾瀬ルイとメイの姉妹も賛同しました。
「お正月だし、どこかで美味しいものが食べたいね」
「ねこったーで調べてみよう」
　スマホを取り出して調べてみると、さっそく見つかりました。
「あ、『ステッラ・デッラ・コリーナ』でお手頃価格のバイキングですって？」
「マジ？」
「これはもう参加しろってことだよね？」
「参加決定！」

　こうして4人は、星ヶ丘の超高級ホテル『ステッラ・デッラ・コリーナ』へ向かったのでした。
「うわ、さすがに超高級って感じ。あたし初めてなんだけど……」
「あたしも……こんな格好で入っていいのかな？」
　綾瀬姉妹はビビッて足を止めてしまいました。
　どうしようか、というようにアカリも遠海の方を伺います。
　しかし遠海はお嬢様風の外見にふさわしく、顔色を変えず平然と進んでいきました。
「遠海？　待ってよ」
「大丈夫よ。美味しいもの食べたいでしょ？」
　ずんずん中へ入る遠海に勇気づけられ、他の三人も歩みを進めるのでした。

「いらっしゃいませ。レンタルの着物着付けサービスをご用意しておりますが、いかがなされますか」
　受付で聞かれ、４人は顔を見合わせました。
「着物借りられるの？　いくらで？」
「そんなに高くはないわね。せっかくだから……」
　ということで、着付けサービスを利用することになりました。
「これからバイキングなので、緩めにお願いします」
　遠海は着物を選ぶ際、係の人に告げるのを忘れませんでした。

「みんな綺麗……」
「馬子にも衣装ってやつかしら」
「そんなことないわよ、普通にみんな似合ってる」
　全員艶やかな着物姿になり、その華やいだ雰囲気に周囲から自然と注目が集まるのでした。
「それじゃ、お目当てのレストランに行きましょう」
　テーブルに案内され、いよいよバイキングスタートです。

　和、洋、中、お正月らしい目にも鮮やかな料理が並び、４人は歓声を上げました。
「どれから食べようかしら……？」
「悩んでる暇はないわ」
　そう言うと、遠海は目についた料理を片っ端から取れるだけ取ってトレイをいっぱいにしていきます。
「さすが遠海……」
　緩めに着付てもらった他のメンバーも、厳選した料理でトレイをいっぱいにしました。
「いただきます」
　テーブルに戻り手を合わせると、遠海とみんなは食べ始めました。
「美味しい～！　何かしらこれ？」　
「それはフォアグラね。なかなか機会がないから食べておいたほうがいいかも」
　食通というわけではないけど、美味しいものを愛する遠海はいつの間にか料理の名前を憶えています。
「それどこにあったの？　次取りに行くわ」
　自然と皆も料理に興味を持ち、お勧めを聞きたがるのでした。
　大食いの遠海ですが、食い散らかすような食べ方ではなく、あくまでも美味しそうに品よく食べます。
　不快感を与えることはありません。
　４人は楽しくおしゃべりしながら、初ステッラバイキングを満喫したのでした。

「おいしかった～」
「もう食べられない～」
　満腹になった３人が口々に言い。
「今年もいい感じにおいしく食べられたし、きっといい年になるわね！」
「そうね」　
　遠海の言葉に、皆が同意したのでした。

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