【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

☆家族で初詣！

　元旦の朝、梓智依子はいつもより少し遅めに目が覚めました。
　時計を見ると7時半。
　隣ではすやすやと娘の楓が眠っていました。
（お正月、なのよね）
　起こさないようにそっと布団を抜け出し、服を着替えて台所に向かいます。

　台所ではすでに祖母がお雑煮の準備をしていました。
「おは……あけましておめでとうございます」
「おめでとう」
　挨拶を済ませた智依子は、大皿に盛られたおせち料理に気づきました。
「おせち詰めておくね」
「お願いね」
　最近ではデパートなどでおせち料理を頼む家が多くなりましたが、智依子の祖母は自分で作らないと気が済まないのでした。
　そんな祖母から料理をみっちり仕込まれた智依子も、できるだけ料理は自分でしたいと思っていました。
「おばあちゃん、お節詰め終えたよ」
「じゃあ運んで行ってちょうだい」
　そんなやり取りをした後、居間へ料理類を運んたり、食器類を並べたりとセッティングしました。
「正月から早いな」
　起きてきた祖父に、
「あけましておめでとうございます」
　とあいさつし。
「そろそろ楓を起こさなきゃ」
　と智依子は部屋へ戻ったのでした。

「楓、起きて。お正月よ」
「おしょうがつ？！」
　普段ならなかなか起きないのに、お正月と聞いたとたん楓は跳び起きました。
「おせちたべよ！」
「はいはい、まず着替えてね」
　手早く着替えさせ、顔を洗わせた楓と一緒に居間へ向かいました。
「わーおせちだおせちだ！」
　大はしゃぎする楓。
「お行儀良くしなさい。それに、まずお正月のご挨拶でしょ」
　智依子は窘めましたが、祖父母は曾孫の様子を見て満足そうに眼を細めるのでした。
「あけましておめでとうございます」
「はい、おめでとう」
「いただきまーす」　
　目を輝かせておせち料理に手を伸ばす楓。
「くくりんとん！」
「栗きんとんよ」
「こっちのつぶつぶのきいろいのは？」
「それは数の子」
　間違えたり聞いたりする楓に、智依子は根気よく名前を教えました。

　朝食を食べ終えた後は、楓を着替えさせ自分も晴れ着に着替えて。
　普通の外出着の祖父母と４人で寝子島神社へ初詣へ向かいました。
「はつもうで！」
「ほら人ごみで迷子にならないよう手をつなぎましょう」
　無事4人そろって境内に着き、拝殿で手を合わせました。
「わんこおみくじひくー」
　楓が目ざとく見つけたわんこおみくじをねだられ、引かせてみると。
「あっ！　わんちゃん、よろこんでる！」
　嬉しそうな笑顔で尻尾を振る犬の絵と共に、文字が書かれていました。
「大吉ね」
「いちばんいいやつ？　やったー！」
　喜ぶ楓に、祖父母も智依子も顔をほころばせます。
　ゆっくり中身を読みたいところでしたが。
「あ、わんちゃんのしゃてき！」　
「待って、楓！」
　次の瞬間には、走り出す楓の後を追いかける羽目になるのでした。
　

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