【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

☆先生と初詣

（尚輝先生と初詣に行きたいですね）
　年越しを一緒に過ごしたばかりですが、御巫時子は五十嵐尚輝先生をお誘いすることにしました。
『尚輝先生、初詣に行きませんか？』
　ニャインに書き込むと、まもなく返事が来ました。
『はい』
　普段から和服を着慣れている時子は、今年の干支の犬の柄の着物姿で旧市街に向かいました。
「……御巫さん」
　現れた尚輝先生はさすがに白衣ではありませんでした。
「尚輝先生、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
（ふふっ、数時間前にもお伝えしましたが初詣ですから）
　律儀に返事を返すのが尚輝先生らしい、と時子は思いました。

「先生は冬休み中は学校で過ごされてますか？　それともアパートで？」
（アパートに物があふれてると聞いてたので、もしかして学校でしょうか）
　そう考えた時子です。
「学校にいたいのですが、さすがに三が日はアパートです」
「そうなんですね」
「御巫さんはいよいよ受験ですね。合格祈願をしないといけませんね」
「はい。受験が終わったらまたお掃除のお手伝いに行ってもいいですか？」
「えっ……いや、大学の準備とかで忙しいでしょうし」
「いえ、受験後の楽しみがあった方が良いですから」

　二人は寝子島神社にお参りしました。
　時子は手を合わせて今年のご縁に感謝を伝えて、受験の合格をお願いしました。
「尚輝先生は何をお願いされたんですか？」
「……えっ？」
　何気なく聞いてみると、尚輝先生は驚いた様子で口ごもりましたが。
「……御巫さんの合格です」
　照れるようなことでもないのに、と微笑ましく思いながら時子はお礼を言いました。
「ありがとうございます。尚輝先生もお願いしてくださったなら、願いは叶いそうですね」
　それから、屋台の前を通り足を止めました。
「じゃがバタ、美味しそうです。でも一人で全部は多いので……半分こしませんか」
「えっ……そうですか」
　時子はじゃがバタを買い、半分に割りました。
「いただきます。尚輝先生もどうぞ」
「ありがとうございます……」
　尚輝先生と時子は一緒に熱々のじゃがバタを食べました。
「ほくほくで美味しいです」

「尚輝先生、わんこおみくじがありますね。やってみませんか」
「わんこ？　珍しいですね」
「今年の運勢は……？」
（学業も気になりますが恋愛も気になります。卒業まであと少しですし）
「大吉です」
　時子はおみくじを尚輝先生に見せました。
「僕のは中吉です。お互い良い結果でよかったですね」
　尚輝先生もおみくじを見せてくれました。

「あの、尚輝先生はこれからご予定があるのでしょうか？」
「え？　いや、別に……」
「なら、できるだけ一緒に居たいです」
　時子は尚輝先生をじっと見つめるのでした。