【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年｜リアクション

【お正月】めでたや初春、猫の島の犬の年

☆あの人と初詣

　綾辻綾花は、早川珪先生を初詣に誘いました。
「珪さん、初詣に行きませんか？　今年は受験もあるので合格しますようにとお願いしに行こうと思います」
「そうだね、行こうか」
　良い返事をもらい、ほっと胸を撫でおろします。
（年越しも一緒に居たから今日会うのは２回目です）
　少しは大人っぽく見えるような柄の着物を選びました。
　待ち合わせ場所にやってきた珪に、訊ねます。
「珪さん、似合いますか？」
　一瞬の間のあと、珪は答えました。
「……素敵です。とても」
「嬉しいです！　大人に見えますか？」
「そうですね」　
　年齢差は埋められないから見た目だけでも大人に見えてたらいいな、と思う綾花でした。

　寝子島神社に着いた二人は拝殿に並んで立ち、お賽銭を入れて二礼二拍しました。
（大学合格できますように）
　綾花は真剣に手を合わせます。
　お参りを終えて、隣の珪の顔を伺いました。
（珪さんは何のお願い事をしたんでしょうか。気になります）
　でもそれをそのまま質問するのは、なんだか子供っぽいようにも感じて。
　綾花はひとまず心の内にとどめておくことにしたのでした。

「あ、わんこおみくじがあります」
「引いてみる？」　
「はい。大学受かりますように……」
　願いながら引いた綾花のおみくじには、嬉しそうに尻尾を振る犬の絵。
「大吉です！」
「良かった」　
　詳細を見ると、学業は『努力が実を結ぶ。油断せず励めば吉』とあります。
「背中を押されたみたいで頑張れます」
　そして恋愛は……。
『焦らず信じて待てば良い結果が』
　嬉しくて、隣の珪のほうを見つめます。
（珪さんのおみくじの結果も気になります。恋愛の欄とか特に）
　これは我慢できず、綾花は聞きました。
「珪さんの結果はどうだったんですか？」
「僕は中吉だよ」
「そうなんですね……」
　恋愛の欄のことを聞こうか、手に持っているおみくじを覗いてしまおうか。
　ちょっと迷っているうちに、珪は言いました。
「あそこでお守りが売ってるね」
「お守り！　買って行こうかな……」
　ついそちらに反応してしまいました。
　綾花が手に取るのはもちろん合格お守りです。
（恋愛のお守りも気になるけど信頼してるから大丈夫かな）
　合格お守りの色は黒か赤を選ぼう、と決めていました。
（珪さんが好きな色だから見るたびに珪さんを思い出して会えない時も頑張れそうです）
「珪さん」
　そう呼びかけました。
「何？」
「合格できる様に頑張ります」
　にっこりと綾花は、珪の手を取りました。
「人ごみだし、手を繋いで帰りたいです」
「そうだね……」
　珪はそっと、綾花の手を掴んでくれたのでした。