Thank You for Loving Me｜リアクション

Thank You for Loving Me

　ポストクレジットシーン
　（※映画の終映クレジット後にある追加場面のこと。ありていに言えば、おまけ）

「でもねリックさん、私」
　腰の左右に手を当てて千絵は言う。
「この店を買う以上は、扱ってる商品のこととか、最低限は知っててほしいんですよね」
　リック・ヤンはタフなネゴシエーターである。企業買収や収支報告の場で、ハードな交渉には何度も遭遇してきた。しかし相手は重役や弁護士、あとは会計士あたりが基本で、中学生女子を相手にしたことはない。
　なので少々戸惑うのである。重役や弁護士はまず、こんなことを言わないから。
「……つまり千絵さん、私にこのゲームをプレイしろと」
「はい。アメリカ生まれの『チケット・トゥ・トレイン』、戦略と運の要素が絶妙にブレンドされた鉄道ゲームです。ドイツで年間ゲーム大賞を受賞した作品なんですよ」
　言いながら千絵はもうボードを広げ終わり、ゲームに使うというカードのシャッフルを始めている。
「私と七枷さん、それとリックさんの三人プレイということで」
「僕も！？」
　陣はいささか甲高い声になる。
　ただでさえこの人、高校の数学教師にそっくりで苦手なんだけどなぁ、と思ったがそれはさすがに言えない。
「まあそういうことなら」
　不承不承、慣れない手つきでリックは自分の駒を手に取った。ルールは一度聞いたものの、やってみないかぎりよくわからないだろう。
「ところで」カードを積むと、謎めいた笑みを浮かべ千絵は言ったのである。「リックさんが最下位になった場合、売却の話は考え直すかもしれません」
「Really！？（マジデスカ！？）」
　慌ててリックは胸ポケットに手を入れ携帯電話を取りだした。
「じつは今、近くに私の娘……七歳の娘がいるんです。私のチームに入ってもらっていいですか！？」
　いいですよと千絵は言った。
「プレイヤーは四人くらいのほうが楽しいですから」

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あとがき

担当マスター：桂木京介
ファンレターはマスターページから！

　お読みくださりありがとうございました。桂木京介です。

　本作は『君が教えてくれるすべてのこと』の続編という位置づけのつもりでしたが、仕上がってみれば直接のつながりは薄く、単なる同時期（直後）の話として仕上がった印象です。あんまり『つづく』とか書くものではないですね。結果としては独立した一本になりました。
　ですが私はむしろそのことを喜び、楽しんで書きました。読んでくださったあなたにも、楽しんでいただければ幸いです。

　本リアクションの構成は、これまでとちがって時間軸通りではありません。
　あっちいったりこっちいったり戻ったりします。あえていつごろか不明にしているものもあります。順序についてはみなさんのご想像にお任せしております。

　いつも書いていますが、ご意見ご感想、首を長くしてお待ち申し上げております。

　それではまた、新たなシナリオでお目にかかるのを楽しみにしています！！
　桂木京介でした。

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