君が教えてくれるすべてのこと｜リアクション

君が教えてくれるすべてのこと

　寝子島の遊びの殿堂『クラン＝G』は、閉店したファミレスを居抜きで改造した大型ホビーショップだ。広大な売り場には国内外のボードゲーム、古典作品から最近のものまでずらりとならぶ一角があり、プラモデルにフィギュア、おなじみアニメ作品からツウ好みのレアものまでたっぷりの品揃えが光る前を通りすぎると、今度はトレーディングカード、それもゲームに特化したものがドカ売りされている宝物殿へとたどり着く。これもまた、世界的有名ゲームから無名なれどうなり声が上がりそうな希少品までさまざまだ。当然のようにカードの個別売りもされている。まるで餌箱のように組まれた一角では日々、あまたのトレカゲーマーが血眼になってほしいカードを掘っているという。他にもモデルガン、カプセルギア、サバイバルゲーム用品、TRPG用品、ゲーム関連の書籍などなど、趣味人が訪れれば丸一日たっぷり過ごせるほどのラインナップが待ち受けているうえ、ファミレス時代の資産を活かしたゲーマーテーブルが多数無料開放されており、そのあちこちでトレカデッキを手にしたデュエル戦士たち、TRPGのグループ、ボードゲーム愛好家らが日夜しのぎを削っているのだった。
　さてこのとき自動ドアを抜けたばかりの店内、冬にしては温かい日差しさしこむレジカウンター前で、『クラン＝G』常連客の白真白は謎めいた異邦人（ストレンジャー）と相対していた。
　桐島先生がいると思ったらそっくりさんで、『クラン＝G』の売却関係の人だった！？
　真白にとっては驚きにつぐ驚きだった。近づいてよく見てもやはり、リチャード・ヤン氏は寝子高数学教師桐島義弘に瓜二つなのである。生き別れの双子の弟と言われてもあっさり納得してしまうだろう。
　それはまぁ置いておくとして――。
「ミズ三佐倉（千絵）の所在を知りませんか？　私は彼女にお願いに来たのです。『クラン＝G』の売却を」
　ヤン氏は三佐倉千絵を探しているということだ。なお彼の日本語は、多少なまりがあるもののビジネス会話だって十分可能なレベルがありそうだ。
「あー、まず私は白真白っていって千絵ちゃんの友達です」
「そうですか、よろしくお見知りおきを」
　桐島先生の顔で『お見知りおきを』なんて言われると、ちょっと違和感があるよね。
「そしてこの店、『クラン＝G』の大ファンです。今日は千絵ちゃんに会いに来たんだけど会えなくて残念、もちろん千絵ちゃんがどこに行ったのかは見当もつきません」
　落胆するかと思いきや、桐島もといリチャード・ヤンは「でしたらミズ白、あなたにお話を聞きたいのですが」とたずねてきた。
「私に？」
「イエス、そうです」
　いいの？　と真白はそばにいた店長にして千絵の父親三佐倉杏平に目で問うも、ナチュラルボーン自由人の杏平は「おー、任せたー」と言ってあっさりとレジのところに入ってしまった。そのまま届いたばかりらしきプラモのカタログをめくって「ほうほう、これ入荷できるかなぁ」などと独り言している。
　丸投げか！
　店の将来がかかってる話でしょうにと真白は言いたくなったが同時に、あの店長なら仕方ないよねと悟って「テーブル使いますよー」とだけ言って、ボードゲームやカードゲームのプレイスペースたる席についた。杏平はカタログから目を上げることもなく「おーう」といい加減な返事をするばかりだ。
　店長って現実逃避してるんじゃなくて、本当にこの状況下でもカタログに夢中になってるんだよね。あーいう人だから。
　天才に常識を説いてもいたしかたあるまい。
　それに杏平が話し相手になったところで、彼はせいぜい「おー」とか「ほー」とか言うだけなので、ヤンも困惑するばかりだろう。
　自分がどれだけ『クラン＝G』を好きか、憩いの場にしてきたかを真白はヤンに語り、この店にはそんなファンがたくさんいることを熱心に伝えた。ヤンは真剣に耳を傾けた。彼とはしてはおそらく、もうビジネス交渉に入った気でいるはずだ。だから真白はしっかりと言った。
「ちょっと聞いてもいいですか？　気になるので」
「もちろんです」
「ここを買い取ったあと、そちらのメーカー……ええと、『Guild of Ages（ギルド・オブ・エイジズ）』でしたっけ？　はどういう風にして行くつもりなのかな、って」

このページにイラストを設定する

君が教えてくれるすべてのこと

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧