夏を取り戻せ！｜リアクション

夏を取り戻せ！

5．チルタイム

　無事人数分×2の魚をゲットした彼らは、テントまで戻ってきていた。
「たくさん釣れてすごいね！　カレーとバーベキューの準備はできてるよ」
「おお、すげえな」
　しっかりとスタンバイされた光景に、刀は驚いた。
「肉と野菜は焼いたあと、カレーに乗せるのもいいと思うんだよね〜」
　言って寝太郎は、荷物から野菜を取り出した。
「オススメはナス！」
　じゃん、と効果音でもつきそうな勢いで、ふたりの目の前に持ってくる。
「なるほど、食事ひとつとっても楽しみ方のバリエーションが豊富だな」
「先輩もいっぱい食べてくださいね」
　タレもしっかり用意してるので、と有名メーカーの焼き肉タレを披露しながら寝太郎は言う。
「用意がいいな」
「なんか、張り切っちゃって」
　照れて笑う寝太郎に、茂は自分の荷物やテントをちらりと見てから言葉を返した。
「……まあ、分からなくはない」
　非日常への憧れは誰にでもある。自分にも。
　やがておいしそうな匂いが漂う中、3人は日常とちょっと違う食事に胸を高鳴らせた。

◇

　寝太郎お手製のカレー、そして刀と茂が釣ってきた魚を3人で食べる。
　野外の開放感で食べるカレーは味も特別に感じられるし、焼いた魚は表面のぱりっとした食感がたまらない。
　食べ終えて、かいた汗をタオルで拭き休んでいるともう辺りは暗くなっていた。
　湖畔の夜は水面を風が渡るからか涼しく、余計な明かりがない分星が明るく高く輝いている。
　3人は焚き火を囲むようにしてコーヒーやお茶など思い思いの飲み物を飲んでいた。
「こういう時のコーヒーって特別な味がするな」
「ね、美味しくて幸せだな〜」
　刀と寝太郎が和気藹々と話している。ちらりと視線をやれば、茂もお茶を飲む表情が緩んでいるように見えた。
　先輩も笑ってるのかな？
　むっつり顔だからわかりづらいなあ、なんてことを寝太郎は思いつつどこかほっとしていた。多少強引に進めてしまった今回の流れだったが、皆の雰囲気からそれが失敗でなかったことがわかったからだ。
「……ありがとう」
　ぽつりと、茂が言った。
　キャンプの予習ができたことももちろんだけれど、それと同等か以上に、思いの外この空間を楽しめている自分がいた。
　刀と寝太郎は顔を合わせて、互いに笑った。
「こちらこそですよ先輩」
「ああ。それに、夜はまだまだこれからだ。締めくくるのはちょっと早いかもしれないですよ？」
　くい、と刀はテントを指さした。
　夜。男3人。開放的な野外。
　となれば、やることは決まっているだろう。
　そう！　男だらけの思春期トークだ！

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