「おーい御剣ー! キャンプしようぜ!」
と誘えば明るいキャラクターとして認知されるだろうか。
猫島 寝太郎は素の自分からは到底出てこないであろうそんなセリフを呟いてみては、自分で苦笑してしまう。
季節は8月。夏休みのまっただ中。
勉強机に座りながら、寝太郎はふとカレンダーに視線を向けた。
「夏休みも、すぐ終わっちゃうなあ」
残された時間をしみじみ思いながら、寝太郎は勉強机の脇に置いてあったスマホを手に取る。
そして頭に浮かんだ人物へ、短い文章を送ったのだった。
御剣 刀は、外での用事を済ませて自宅への道を歩いていた。
まだ高いところにある太陽は遠慮なく日差しを注ぎ、コンクリートに反射して刀の全身を焼いている。
「暑い。なんなのこの暑さ」
武術を修める者として過酷な環境での修行経験もある。猛暑だって何度も経験している。
しかしこの日の暑さは死を覚悟するほどのものに感じられた。
汗を腕でぬぐった刀は、持っていたスマホへ連絡が来ていたことに気付いた。
「猫島からか」
そこに書かれていた文章を刀は読み上げる。
「御剣君、時間あったらキャンプしない?」
キャンプ。その単語を見た瞬間、刀の脳内に映像が浮かんだ。
それは透き通った冷たい水が流れる川辺。
それは木陰で休みながらラムネを喉へ流し込む自分たちの姿。
それは涼しくなった夜にテントから見上げる星空。
刀に迷いはなかった。すぐに返事を送る。
『ああ猫島、キャンプしようぜ!』
一方その頃。
三夜湖の近くでは元寝子高の生徒で現大学生の
海原 茂が、荷物を抱え歩いていた。
大きめのリュックで、どこかに旅でも行くかのような格好だ。
「はぁ……キャンプ道具ってこんなに重かったのか」
どうやら中身はキャンプ道具が詰まっているらしい。
「こんなところ、人に見られたら恥ずかしすぎて逃げたくなるな」
彼、茂は大学でテニスサークルに所属している。いわゆる陽キャラが集まるようなサークルだ。
しかし高校時代パリピな暮らしとは無縁だった茂は、大学でどうにかそのノリに馴染もうと陰の努力をしていた。
本日のこれも、その一環らしい。
「夏に合宿をすると言っていたからな、キャンプの知識は持っておくに越したことはない……」
彼の口ぶりから察するに、どうやらサークルのメンバーと合宿する前にひとりでキャンプの練習をしに来たようである。
茂はほどなくして三夜湖へと辿り着いた。
奇しくもその場所は、寝太郎と刀が向かおうとしている場所とまったく同じなのであった。
お久しぶりです。萩です。
シナリオのリクエストをいただき、ありがとうございます。
舞台は三夜湖。
登場するおふたりは茂と会わずにそのままふたりでキャンプを楽しんでも構いませんし、
偶然茂と遭遇して茂とわいわいキャンプをする(というか教えてあげる)でも構いません。
自由にお楽しみください。
楽しいアクション、お待ちしております。