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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【クリスマス☆green】クリスマスキャロルを聴きながら
クリスマスパーティ、スタート
出航から東京湾へ向かうまでの約３時間、エンプレス・ホールでは最高級シェフによるフランス料理のコースによるパーティが予定されている。ホール内には白いクロスが掛けられたテーブルが何十も据え付けられ、それぞれ着飾った男女が座っている。壁際には歓談も楽しめる立食スペースもある。席数に限りがあるので、コースディナーは時間差となっており、後半の客たちがお酒を楽しんだりできる。
船長の挨拶が終わると、蒼留人、紫苑、想花、紗櫻都ほか十名以上の給仕スタッフが、飲み物や前菜を運んできた。音楽も始まる。クリスマスキャロルのシックなアレンジで、人々のお喋りを邪魔しない控えめな演奏だ。スペシャルゲストの登場はもう少し先である。
白い皿に盛り付けられた料理はまるで宝石のようで、巫部 紫苑は涎が出そうになるのを堪えていた。
（美味しそうな料理がいっぱい……いえいえ、お仕事ですから我慢我慢です）
お客様に楽しんでいただけるよう、料理に見合った最高のサービスをしなければ。
紫苑は笑顔を絶やさず、飲み物を注いでゆく。
清楚で落ち着いた雰囲気と豊満なスタイルの紫苑は、すぐに男性客の目に留まり、まだなみなみと入っているワインを飲み干してでも自分のグラスに注いでほしいというオジサマたちが続出した。
「はい、赤ですね。本日はワインもフランス産の高級なものを取り揃えております」
ふふ、と微笑みながら、紫苑はワインの紹介をする。付け焼刃ではあるが頭に叩き込んだ情報だ。
ときに、君もどうかね、とグラスをすすめられることもあるが、
「まだお酒を飲める年ではないので」
と断ると大げさに驚かれた。もっと大人びて見えるらしい。
コース料理なので、タイミングを見て次々と料理を運ぶ必要があり、紫苑は厨房とホールを何度も往復した。
そのたび紫苑はシェフたちの動きもちらりちらりと観察する。
（どんな料理がどんな風に作られてるのか、興味津々です）
客席のほうと違って厨房は戦場だ。
フライパンの上では立派なオマール海老がじゅうじゅう音を立てている。
ヒゲを蓄えたベテランシェフ――紫苑は知らなかったが朝衣の婚約者・遥人の師匠だ――がフライパンに洋酒を注ぐと、ぱっと炎が吹きあがる。
（フランベですか。流石の手際ですね）
一流のシェフの腕前を間近で見る機会なんてそうそうない。
完璧に真似する事は無理でもこの機会にたっぷり見ておきたい。
紫苑は厨房に来るたび、遥人ら若いシェフたちと同じ眼差しで、ベテランシェフの仕事を目で盗んだ。
◇
月原 想花は淡々と仕事をこなしていた。
お客様を主役と立てて、案内や配膳、注文を聞いたり。
高校は冬休み。
しかし想花は夏休みに続き、冬休みも実家に帰省する予定はなかった。
想花にとって実家は居心地の良い場所とは言いづらかったからだ。
（帰省したところで──ぼくはできのいい弟と何かと比較されるばかりか、家庭内での自分の惨めな立ち位置を再確認するだけ。そんな地獄になぜ帰らなきゃならない？）
そんなことをふつふつと考えてしまう。
（いけない、いけない。仕事に集中しよう）
自分では気づいていないが本番に強いタイプらしい想花は、テキパキと仕事をこなしていく。
◇
ホールの片隅、バーコーナーに、シックなドレスに身を包んだ三折部 朝衣の姿があった。
あらわにした肩にはレースのショールを掛け、カクテルグラスを手にしている。
お任せで作ってもらったカクテルは、ウォッカベースのアップル系のカクテルだ。
朝衣はそれを飲み干して、所在なさげにあたりを眺めた。
（落ち着いた雰囲気の大人の空間……）
まだ２１歳の自分には早すぎるというか、着慣れないドレスも相まって、不釣り合いな気がしてしまう。
空になったグラスを眺めていると、若い給仕スタッフに声を掛けられた。
「お飲み物のお代わりをお持ちしましょうか」
想花であった。
高校生くらいに見えるが、接客態度も礼儀作法もきちんとしている。
「ありがとう。お願いします。同じものを」
「かしこまりました。――どうぞ」
そうこうするうちに、朝衣のディナーの番が来た。
（どんな料理が出てくるのやら）
そう思ってわくわくしていると、普段の暮らしでは見たこともないような豪勢な料理が次々に出てきて面食らう。メインはオマール海老にクリスマスらしい赤と緑のソースの掛かった料理で、アスパラや朝衣は名前も知らないような香草が添えられている。
（遥人が作ったのかしら……でも遥人は師匠の臨時の助手で働いているというから、料理は作ってないかもしれない……でもとにかく、美味しそう！）
ナイフとフォークで切り分けて、口に運ぶ。
その味は予想に違わず、いや、予想を超えて――。
「これっておいしい！」
名前はよくわからないが……おいしければ名前なんて。
その後、朝衣はデザートまでしっかりいただき、とても満足した心持ちで席を立った。
（遥人の様子を見に行きたいな……ううん、厨房で働いているはずの彼に会えるはずもないか）
同じ船に乗っているのに会えないなんて。
残念だが仕方がない。
朝衣は壁の花となり、時の過ぎるのを待つことにした。
出航から東京湾へ向かうまでの約３時間、エンプレス・ホールでは最高級シェフによるフランス料理のコースによるパーティが予定されている。ホール内には白いクロスが掛けられたテーブルが何十も据え付けられ、それぞれ着飾った男女が座っている。壁際には歓談も楽しめる立食スペースもある。席数に限りがあるので、コースディナーは時間差となっており、後半の客たちがお酒を楽しんだりできる。
船長の挨拶が終わると、蒼留人、紫苑、想花、紗櫻都ほか十名以上の給仕スタッフが、飲み物や前菜を運んできた。音楽も始まる。クリスマスキャロルのシックなアレンジで、人々のお喋りを邪魔しない控えめな演奏だ。スペシャルゲストの登場はもう少し先である。
白い皿に盛り付けられた料理はまるで宝石のようで、巫部 紫苑は涎が出そうになるのを堪えていた。
（美味しそうな料理がいっぱい……いえいえ、お仕事ですから我慢我慢です）
お客様に楽しんでいただけるよう、料理に見合った最高のサービスをしなければ。
紫苑は笑顔を絶やさず、飲み物を注いでゆく。
清楚で落ち着いた雰囲気と豊満なスタイルの紫苑は、すぐに男性客の目に留まり、まだなみなみと入っているワインを飲み干してでも自分のグラスに注いでほしいというオジサマたちが続出した。
「はい、赤ですね。本日はワインもフランス産の高級なものを取り揃えております」
ふふ、と微笑みながら、紫苑はワインの紹介をする。付け焼刃ではあるが頭に叩き込んだ情報だ。
ときに、君もどうかね、とグラスをすすめられることもあるが、
「まだお酒を飲める年ではないので」
と断ると大げさに驚かれた。もっと大人びて見えるらしい。
コース料理なので、タイミングを見て次々と料理を運ぶ必要があり、紫苑は厨房とホールを何度も往復した。
そのたび紫苑はシェフたちの動きもちらりちらりと観察する。
（どんな料理がどんな風に作られてるのか、興味津々です）
客席のほうと違って厨房は戦場だ。
フライパンの上では立派なオマール海老がじゅうじゅう音を立てている。
ヒゲを蓄えたベテランシェフ――紫苑は知らなかったが朝衣の婚約者・遥人の師匠だ――がフライパンに洋酒を注ぐと、ぱっと炎が吹きあがる。
（フランベですか。流石の手際ですね）
一流のシェフの腕前を間近で見る機会なんてそうそうない。
完璧に真似する事は無理でもこの機会にたっぷり見ておきたい。
紫苑は厨房に来るたび、遥人ら若いシェフたちと同じ眼差しで、ベテランシェフの仕事を目で盗んだ。
◇
月原 想花は淡々と仕事をこなしていた。
お客様を主役と立てて、案内や配膳、注文を聞いたり。
高校は冬休み。
しかし想花は夏休みに続き、冬休みも実家に帰省する予定はなかった。
想花にとって実家は居心地の良い場所とは言いづらかったからだ。
（帰省したところで──ぼくはできのいい弟と何かと比較されるばかりか、家庭内での自分の惨めな立ち位置を再確認するだけ。そんな地獄になぜ帰らなきゃならない？）
そんなことをふつふつと考えてしまう。
（いけない、いけない。仕事に集中しよう）
自分では気づいていないが本番に強いタイプらしい想花は、テキパキと仕事をこなしていく。
◇
ホールの片隅、バーコーナーに、シックなドレスに身を包んだ三折部 朝衣の姿があった。
あらわにした肩にはレースのショールを掛け、カクテルグラスを手にしている。
お任せで作ってもらったカクテルは、ウォッカベースのアップル系のカクテルだ。
朝衣はそれを飲み干して、所在なさげにあたりを眺めた。
（落ち着いた雰囲気の大人の空間……）
まだ２１歳の自分には早すぎるというか、着慣れないドレスも相まって、不釣り合いな気がしてしまう。
空になったグラスを眺めていると、若い給仕スタッフに声を掛けられた。
「お飲み物のお代わりをお持ちしましょうか」
想花であった。
高校生くらいに見えるが、接客態度も礼儀作法もきちんとしている。
「ありがとう。お願いします。同じものを」
「かしこまりました。――どうぞ」
そうこうするうちに、朝衣のディナーの番が来た。
（どんな料理が出てくるのやら）
そう思ってわくわくしていると、普段の暮らしでは見たこともないような豪勢な料理が次々に出てきて面食らう。メインはオマール海老にクリスマスらしい赤と緑のソースの掛かった料理で、アスパラや朝衣は名前も知らないような香草が添えられている。
（遥人が作ったのかしら……でも遥人は師匠の臨時の助手で働いているというから、料理は作ってないかもしれない……でもとにかく、美味しそう！）
ナイフとフォークで切り分けて、口に運ぶ。
その味は予想に違わず、いや、予想を超えて――。
「これっておいしい！」
名前はよくわからないが……おいしければ名前なんて。
その後、朝衣はデザートまでしっかりいただき、とても満足した心持ちで席を立った。
（遥人の様子を見に行きたいな……ううん、厨房で働いているはずの彼に会えるはずもないか）
同じ船に乗っているのに会えないなんて。
残念だが仕方がない。
朝衣は壁の花となり、時の過ぎるのを待つことにした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年07月31日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年08月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年08月07日 11時00分
