【クリスマス☆green】クリスマスキャロルを聴きながら｜リアクション

【クリスマス☆green】クリスマスキャロルを聴きながら

仕事を終えて／ナイトプールにて

　船は東京湾に入り、煌びやかな夜景を眺めながらゆっくりと航行している。
　もう少しで日が変わるという頃、スタッフとして乗船していた巫部紫苑も仕事を終えて、ナイトプールを満喫していた。

「水着持ってきたの無駄にならなくて良かったです。
この水着、可愛いデザインでお気に入りの一つなんですよね♪」

　パンパンに張り詰めた浮き輪にヒップをすっぽり埋めて、ぷかりぷかりと浮かんでいると、空から雪が降って来た。
　雪と夜景。
　浮き輪に乗って浮かびながら夜景を楽しむなんて、中々優雅なクリスマスだ。
　そしてこのプールのいいところは、一部に屋根があり、座って飲食を楽しむこともできるところである。
　パーティのコース料理とはまた違った、軽めのおつまみ的な料理が多いが、同じシェフたちが作ったおいしそうな料理だ。
　プールを楽しんだ後、紫苑は料理の数々を眺めて舌なめずりをする。
「ふふ、美味しそうですね！　朝のお仕事に向けて、英気を養わないといけませんからね♪」
　紫苑はとりあえず全種類を皿に盛った。
　軽く、５回はおかわりできるだろうか。
　ここからが紫苑の本領発揮である。

◇

　月原想花と川上紗櫻都も、賄い料理を頂いたあとで自由時間になり、船内を二人で散歩していた。
「賄いも、美味しかったね」
　想花は目を閉じて、口の中に残るソースの味を思い出す。あれはなんのソースだったのだろう。複雑な味わいで、素材自体はそんなに高級ではないはずの賄い料理を引き立てていて……。
「作っている人が同じですもの」
　紗櫻都はふふ、と笑う。
　紗櫻都はこういう場は慣れているらしく堂々としている。
（忙しく立ち働いているうちは、滴さんのことを忘れることができた……）
　黒白滴。
　いまは闇に囚われた彼女と、こういった日常を楽しめたら――そんな想いが浮かばないでもない。
　でもそれは叶わない。
　少なくとも今は。
　何かに気づいたのか、紗櫻都は軽く小首をかしげた。
　想花は紗櫻都ととりとめなく話をした。
　東京の夜景が見えるデッキで。
　煌びやかな夜景に白い雪が舞い始める。

◇

　三折部朝衣がナイトプールで泳いでいる。
　サーフィンを嗜む朝衣は水が好きだ。
　船のプールは、波の揺れを受けて海と同じようにうねるので、まるで海にいるような気にもなる。
　しばらくそうして時間をつぶしていると、
「朝衣！」
　ざぶんと飛び込んで来たのは、シェフとして働いていたはずの住沢遥人であった。
「遥人、仕事中じゃなかったの？」
「あらかた片付いたから、少しは君とデートできる時間は確保できたよ」
　彼は微笑む。
　いっしょにサーフィンを楽しむ彼だ。
　水は、海は、やっぱり好きなのだろう。ざぶざぶと泳いで朝衣の傍に来る。
「……寂しい思いをさせてごめん」
「ほんとよ。周りがカップルだらけの中、壁の花をしてるしかなかった私の気持ちも考えて」
「ごめんったら」
　許すわ、と笑って、朝衣は遥人の首に腕を回した。
「みて、雪。メリークリスマス」