青い桜の謎を追え！｜リアクション

青い桜の謎を追え！

≪後日談――理科実験室≫
「尚輝先生、分析は進んでますか…？」
　御巫時子は、あの日に道案内してもらった小鳥を肩に乗せ、五十嵐尚輝先生の元を訪ねた。
「ん……？　おや、その小鳥。新しい友達ですか」
　時子は頷いた後、お土産の花びらを使った栞と、桜の形のお菓子を差し出し、先生の隣に座る。
　先生の頭から顔を出しているあの鳥と話してみたかったのだが――あいにく今日は姿が見えない。
「皆さんが拾ってきてくれた花、剥がれ落ちた表皮、枝。できるかぎりの分析をしましたが、今や色も形もすっかり、普通の桜と同じですよ」
「そうですか…」
「ただ――一律して0.5パーセントほど質量が小さい傾向があった…もしも水分量や密度の誤差を否定した場合……」
　結果をもう一度思い直しているのか、ぶつぶつと言い始める先生の元へ、また一人来客が。
「ん。これはちょうど良いところに」
　彼女にとっては少々重い、紅茶セットのトレーを運ぶアガサ・プレラチ。時子が持ってきたお菓子を見て、僅かに目を見開く。
　そして気を利かせたように先生へ紅茶を振舞うなり、アガサは「味は大丈夫ですか？」、「何か感じますか？」、とやたらに感想を求める。
「普通です。このお菓子とよく合います」
　変哲なき先生の様子に、アガサは指でこめかみを掻いた。
「先日の桜を紅茶にしてみたんですが」
「えっ……な、尚輝先生…！」
　外道風味なアガサの行いに時子は驚き、ただただ五十嵐先生を心配する。
　先生は始終平然としていたが、念のため口直しにと、いつものビーカーでコーヒーを飲むのだった。

　同じ実験室の中。椿美咲紀が持ってきていた雑誌『寝子島タブレット』のページの隅には、彼等が青い桜を求めたあの日の、花びらを防ぐために工夫を凝らした寝子高生徒達の奇妙な姿が掲載されていた。もっとも、それを書いた記者には"何かの学校行事"のように捉えられていたらしく、内容は至極平和なものとなっていた。

「けれどまさか、幽霊の涙が桜を青くさせていたなんて……」
「非科学的だけど……神秘的☆　むしろ、青インクとか言ったら破壊の呪文とか唱えちゃうとこだったわ！」
　見解を漏らす神野美野梨と美咲紀は、今回の調査で撮った写真を現像・プリントアウトし、机に並べていた。
「参考データになると思ったんですが…」
　撮影した時は、確かに桜は青い色をしていた。なのに写真に写っている桜は全て、彼女達が花見を終えた後と同じ、桃色をしているのだ。そして、一緒に居たはずの生徒の霊の姿もその画からは抜けている。
「ちょっぴり残念かも。心霊写真が撮れるカメラなら写せたのかしら？」
「……あ。でもほら、興味深いものも写っていますよ」
　そう言って美野梨が差し出した写真には、表情は真面目なまま生徒達とはしゃぐ桐島先生が。
　それを見て、思わずくすくすと笑ってしまう二人。
　涙に染められた青い桜のことは、きっと忘れない。けれど写真と心に残った思い出は、とても暖かい春の色をしていた。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：イルミネート
ファンレターはマスターページから！

初めまして。イルミネートと申します。
今回が人生初のPBWシナリオでした。

今春最後のお花見、お楽しみいただけましたでしょうか？
私はめちゃくちゃ楽しかったです。
皆のキャラクターや楽しいアクションのお陰で
PBWの魅力を体感させていただきました。

未熟な点も多々ございますが、私も皆のキャラクターと一緒に成長して参ります。

最後までお読みいただきありがとうございました！

↑ページトップに戻る