いきなり！　ドラマ出演でショー！！｜リアクション

いきなり！　ドラマ出演でショー！！

＞初々しい二人と、迷い猫と
　時間を慶介のシーン撮影まで進める。
（いい演奏なんだけど、ちょっとカットが惜しいよね）
　少し離れた場所で、ボタモチが少し寂しそうに見つめる。彼はしばし慶介の演奏を眺めていたが、ややあって綾辻綾花と早川珪に目を移した。二人は主人公にも関係するカップル役である。

「そろそろ行こうか」「はい」

　珪の言葉に綾花は頷き、演奏で盛り上がるそこを後にする。二人仲良く手を繋ぎ歩く姿はとても絵になる。
　その途中、綾花は「この子可愛い！」と声を上げる。そこには愛らしい猫のぬいぐるみが。少し考えた珪は「すいません」とすぐ店員に声をかける。
（おねだりって、こんな風でいいのでしょうか？）
　実は台本に『何かをおねだりする女性、男性は笑顔で店員を呼び止め購入する』とあるのだ。
「ちょっと早いけど、誕生日プレゼント」
「いいの……？　ありがとう、珪さん！」
　頬をうっすらと赤くし喜ぶ恋人の姿に、珪の口元も綻んだ。
（恋人らしい演技というのも、なかなか難しいね）
（自然体というのが特に難しいですね）
　綾花と珪は目を合わせ笑い合う。カメラが向いていない隙に小声で言い合えば、本物の恋人たちのように寄り添って笑い合うのだった。
　と、そこへどたばたとした足音。警察官役の野々ののこが走ってくるではないか。
「きゃー！　帽子帽子～～！！」
　ののこは風で飛んでしまった帽子を追いかけ、転びそうになる。「きゃ～～！」と悲鳴を上げながらどうにか踏ん張るののこと帽子を拾う綾花にカメラが向けられる。
（どうぞ、ののこちゃん）（ありがと、綾花ちゃ～ん！！）
　言葉に出さず、そんな会話を目だけで行う二人。その間に、珪は何かに気付いたようで辺りを見渡す。彼の視線の先、双子のお姫様たちがファストフード店へと向かっているのだ。
　渡りに船とばかりに道を尋ねる綾花と、地図を使って教えるののこだったが、ここで猫がのんびり登場。珪が目で追っていた猫である。ゆるゆるとその猫の可愛さに絆される３人。だが、その猫が顔を上げにゃあ、と鳴く。すれ違う姫君。猫はしゃー、と威嚇。それで何かに気付いた綾花はそれとなく「あっちが近道ですよ」と教える。
　実はこの近くにアリサとは別のスパイが隠れていたのだ。それからそらすべくさり気なく珪が綾花と背中合わせに。ののこは「なにかいるの？」と茂みの方をのぞき込む。
　おかげでスパイは退散し、お姫様たちは守られた。

「一通り撮影が終わりましたが、疲れていませんか？」
「いえ、大丈夫です」
　休憩時間になると、珪と二人で貰ったお茶を飲む。寄り添い他のメンバーの撮影を見学させてもらっていると、なんだか不思議な気分になった。