いきなり！　ドラマ出演でショー！！｜リアクション

いきなり！　ドラマ出演でショー！！

＞そんな二人の……。
　時間は少し遡り、学校でのシーンを撮影している時の事。
（まさかの展開で目がぐるぐるしそう……！）
　稲積柚春の役どころは新人英語教師。しかも、理由があり３０代で高校に入ったウォルターと恋仲という設定である。
　そのシーンを双子の姫に知られ、秘密を共有し……そのまま二人はSPに連れられ祖国へと帰郷するのだ。

　先ほどまで教室のシーンを撮影していた柚春は、『はじめてクラスを受け持つ先生』として教壇に立っていた。そのシーンの撮影は上手くいったと思う。
　双子の姉を演じる絢の演技に目を見張ったりはしたが、おおむね順調だ。次は放課後のシーンであり学校を探検する双子姫と鉢合わせするシーンでもある。
（主人公が学校探索しているときに見つかるとか、シーン自体はちょっとだけど、頑張らなくちゃ）
いつも通りにしたら、ウォルターにドキドキさせられている子供に見えてしまうだろう。そう考えた柚春は、大人として葛藤しているように見せられたら……と何度も台本を見返す。

(こんなシーンとか、あるのかな……）

　色々考えていると、ボタモチが楽しそうにやってきた。
「そろそろ撮影だよ。準備はOK？」
「う、うん」
　ボタモチにそう言われ、彼女は力強く頷いた。

「センセ、ホントは僕の気持ちに気付いてるんじゃないか？」
「ダメよ……。そういう事は後で、ね？」
　カメラの前。最上階の階段前で柚春とウォルターは見つめ合う。少し身を屈めたウォルターだったが、柚春はそっと彼の顎に手を添え、クイッ、と上げる。
「あくまで、ここでは教師と生徒。わきまえなくちゃ」
「そうだね。でも、たまには甘えたくなるな」
　ウォルターは年下の教師にドキドキする生徒を演じる。普段とは違う二人を演じるのはなかなか難しいが、読み合わせした時ウォルターは「興味深いね」と実に楽しそうにしていたのだ。
　口づけしそうなほどの距離。内心では胸の高鳴りを抑えるのが苦しくなったころ、双子姫が現れて一度カメラが止まる。
「「はぁ……」」
　二人とも密かに緊張していたのだろう。廊下に座り込んでため息をついてしまう。でも、お互いの顔の思わず笑ってしまうのだった。
「なかなかの演技だったよ、センセ」
「えっ？」
　ウォルターの言葉に、柚春は頬を真っ赤に染めてしまった。