- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
あなたと名もなきひと時を
【地元案内】
「おーい。こっちこっち」
彼は待っていてくれました。いえまあ待ち合わせしてましたから、そりゃあ待っていますけれど。
「ウォルターさん！ 待ちましたか？」
「いやぜんぜん。今来たところだよぉ」
彼が、ほかでもない自分を待っていてくれる……ってあたり、七瀬にはなんだかカンドーです。
「どしたの？ なんかにやけてるよぉ」
「え？ い、いえ、なんでも……それじゃ、行きましょう！」
思わず顔もほころんでしまいます。嬉しいのです。めっきり寒くなってきましたけれど、今日ばかりはポカポカです。
「えっとじゃあ、卵買いにいきましょうか。いつものスーパーにでも……」
「どこか回るなら、買い物する前のほうがいいんじゃない？」
「あ、そのほうがよかですね。ウォルターさん、どこか行きたいところありますか」
「このへんは分からないから、任せるよぉ」
任されてしまいました。一転、七瀬に緊張が走ります。彼を退屈させず、和気あいあいとして過ごすには一体、どこへ案内するべきか……？ てゆーかここらにそんなとこ、あったっけ？
「ん？ どこでもいいよぉ」
「は、はい。ではあっちに……」
ひとまず、見切り発車で歩き出します。
さて向こうには行きつけの本屋がありますけれど、ウォルターさんも楽しめたものかどうか。ちょっと雑多で狭い店だし、彼は興味ないかも。幸いマンションの周囲にはいくつか個性的な店もありますから、その中のひとつでも彼の気にいるところがあれば……。
「そういえばさぁ、今日はなにをつくるの？」
「え？ ああ、カップケーキをつくろうかと。マカロンもどうかなと思ったんですけど、素人には難しそうなので」
「へえ、カップケーキかぁ、いいねぇ。僕、けっこう好きだよぉ」
「ほんとですか？ 良かった」
「イギリスにも、フェアリーケーキって伝統的なカップケーキがあってねぇ。名前のとおり、妖精みたいに小さなケーキでね。中でもバタフライケーキっていって、バタークリームが上に乗ってるのがあるんだけど、これがものすごく甘くて」
「ふんふん」
「普通の人ならひとつ食べればお腹いっぱいって感じ。それを子どもの僕は、お腹いっぱい食べちゃってねぇ。しばらく胸やけで苦しんだ覚えがあるよぉ」
「はは……今のウォルターさんからは考えられんとです。でも、それでカップケーキが苦手になったりしなかったですか」
「うちのメイドが作るフェアリーケーキは絶品だからね。次の日にはけろりとしてまた食べてたくらいだよ」
「うわぁ、ハードルが上がりましたね……頑張って美味しいのを作らないと」
「ま、日本のカップケーキはまた違った味わいだし、そう気にせず。こういうのは、気持ちが大事ってものだよぉ」
「でも、ウォルターさんには一番美味しいのを食べてもらいたいですし」
「あはは。倉前って案外、負けず嫌いだよねぇ」
……なんて。ただふたりで歩いているだけなのに、たがいの言葉がすらすらと巡りました。たあいのないおしゃべり、振り返ってみればつまらない話題でも、ふたりで言葉をかわすからこそ、ちょっとした道行きもかけがえのないひと時となりました。
気負う必要はないのかもしれません。どこでも、どんな場所やお店でも、彼となら楽しめそうです。
「お？ あの店は？」
「え、ああ。模型屋さんですね」
ウォルターが目に止めたのは、年季の入った店構え。老舗の模型店です。鉄道模型にプラモデル、ラジコンにエアガン、駄菓子コーナーもあって、周辺の子どもたちの憩いの場となっているのだとか。
七瀬としてはノーマークなお店でしたけれど、ウォルターは興味を持った様子。
「倉前は入ったことある？」
「いえ、無いですね。子どもがたくさんいるのを見かけたくらいで」
「よし、じゃあ入ろう。こういうところには案外、掘り出し物があったりするんだよねぇ」
「掘り出し物……？」
いそいそと入店する、それこそ子どもみたいなウォルターに続いて、七瀬もお店の中へ。
思わず、ほうっとため息が漏れました。新商品から昔のレアものまで多様なラインナップを誇るプラモデルコーナーに、これまた充実の鉄道模型コーナー。ジオラマの線路にはしゅっぽっぽと蒸気機関車が走っています。店内はなかなか広く、奥のスペースにはネコ四駆のコースやカプセルギアのバトルフィールドがあったり、オフロード風のトラックで子どもたちがラジコンカーを走らせていたりしました。
オモチャ屋というのはいくつになっても、わくわくするものです。
「どーれ、レアものはあるかなぁ？」
と言って彼が真っ先に向かったのは、エアガンコーナーでした。目を輝かせて、棚に山と積まれた箱のひとつひとつを確かめております。彼の特技は射撃で、寝子高では射撃部の顧問も務めていますし、鉄砲も趣味のひとつだったりするのだとか。
「お！ 寝子島ナルイ社の猫部（ニャンブ）十四式。これはなかなか珍しいよぉ」
「へえ……僕はよくわかりませんけど、いいのが見つかって良かったですね」
「ははは、倉前のおかげだねぇ」
掘り出し物をゲットしてほくほく顔、のウォルターを眺めていると、七瀬までほわほわほわん。お顔がユルんでしまうのでした。
「おーい。こっちこっち」
彼は待っていてくれました。いえまあ待ち合わせしてましたから、そりゃあ待っていますけれど。
「ウォルターさん！ 待ちましたか？」
「いやぜんぜん。今来たところだよぉ」
彼が、ほかでもない自分を待っていてくれる……ってあたり、七瀬にはなんだかカンドーです。
「どしたの？ なんかにやけてるよぉ」
「え？ い、いえ、なんでも……それじゃ、行きましょう！」
思わず顔もほころんでしまいます。嬉しいのです。めっきり寒くなってきましたけれど、今日ばかりはポカポカです。
「えっとじゃあ、卵買いにいきましょうか。いつものスーパーにでも……」
「どこか回るなら、買い物する前のほうがいいんじゃない？」
「あ、そのほうがよかですね。ウォルターさん、どこか行きたいところありますか」
「このへんは分からないから、任せるよぉ」
任されてしまいました。一転、七瀬に緊張が走ります。彼を退屈させず、和気あいあいとして過ごすには一体、どこへ案内するべきか……？ てゆーかここらにそんなとこ、あったっけ？
「ん？ どこでもいいよぉ」
「は、はい。ではあっちに……」
ひとまず、見切り発車で歩き出します。
さて向こうには行きつけの本屋がありますけれど、ウォルターさんも楽しめたものかどうか。ちょっと雑多で狭い店だし、彼は興味ないかも。幸いマンションの周囲にはいくつか個性的な店もありますから、その中のひとつでも彼の気にいるところがあれば……。
「そういえばさぁ、今日はなにをつくるの？」
「え？ ああ、カップケーキをつくろうかと。マカロンもどうかなと思ったんですけど、素人には難しそうなので」
「へえ、カップケーキかぁ、いいねぇ。僕、けっこう好きだよぉ」
「ほんとですか？ 良かった」
「イギリスにも、フェアリーケーキって伝統的なカップケーキがあってねぇ。名前のとおり、妖精みたいに小さなケーキでね。中でもバタフライケーキっていって、バタークリームが上に乗ってるのがあるんだけど、これがものすごく甘くて」
「ふんふん」
「普通の人ならひとつ食べればお腹いっぱいって感じ。それを子どもの僕は、お腹いっぱい食べちゃってねぇ。しばらく胸やけで苦しんだ覚えがあるよぉ」
「はは……今のウォルターさんからは考えられんとです。でも、それでカップケーキが苦手になったりしなかったですか」
「うちのメイドが作るフェアリーケーキは絶品だからね。次の日にはけろりとしてまた食べてたくらいだよ」
「うわぁ、ハードルが上がりましたね……頑張って美味しいのを作らないと」
「ま、日本のカップケーキはまた違った味わいだし、そう気にせず。こういうのは、気持ちが大事ってものだよぉ」
「でも、ウォルターさんには一番美味しいのを食べてもらいたいですし」
「あはは。倉前って案外、負けず嫌いだよねぇ」
……なんて。ただふたりで歩いているだけなのに、たがいの言葉がすらすらと巡りました。たあいのないおしゃべり、振り返ってみればつまらない話題でも、ふたりで言葉をかわすからこそ、ちょっとした道行きもかけがえのないひと時となりました。
気負う必要はないのかもしれません。どこでも、どんな場所やお店でも、彼となら楽しめそうです。
「お？ あの店は？」
「え、ああ。模型屋さんですね」
ウォルターが目に止めたのは、年季の入った店構え。老舗の模型店です。鉄道模型にプラモデル、ラジコンにエアガン、駄菓子コーナーもあって、周辺の子どもたちの憩いの場となっているのだとか。
七瀬としてはノーマークなお店でしたけれど、ウォルターは興味を持った様子。
「倉前は入ったことある？」
「いえ、無いですね。子どもがたくさんいるのを見かけたくらいで」
「よし、じゃあ入ろう。こういうところには案外、掘り出し物があったりするんだよねぇ」
「掘り出し物……？」
いそいそと入店する、それこそ子どもみたいなウォルターに続いて、七瀬もお店の中へ。
思わず、ほうっとため息が漏れました。新商品から昔のレアものまで多様なラインナップを誇るプラモデルコーナーに、これまた充実の鉄道模型コーナー。ジオラマの線路にはしゅっぽっぽと蒸気機関車が走っています。店内はなかなか広く、奥のスペースにはネコ四駆のコースやカプセルギアのバトルフィールドがあったり、オフロード風のトラックで子どもたちがラジコンカーを走らせていたりしました。
オモチャ屋というのはいくつになっても、わくわくするものです。
「どーれ、レアものはあるかなぁ？」
と言って彼が真っ先に向かったのは、エアガンコーナーでした。目を輝かせて、棚に山と積まれた箱のひとつひとつを確かめております。彼の特技は射撃で、寝子高では射撃部の顧問も務めていますし、鉄砲も趣味のひとつだったりするのだとか。
「お！ 寝子島ナルイ社の猫部（ニャンブ）十四式。これはなかなか珍しいよぉ」
「へえ……僕はよくわかりませんけど、いいのが見つかって良かったですね」
「ははは、倉前のおかげだねぇ」
掘り出し物をゲットしてほくほく顔、のウォルターを眺めていると、七瀬までほわほわほわん。お顔がユルんでしまうのでした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2023年07月03日
- 参加申し込みの期限
-
- 2023年07月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2023年07月10日 11時00分
