もしものメイドさん｜リアクション

もしものメイドさん

　『ゆ～タイム』が終わりに近づく。店内が薄暗くなり、ステージに光が注がれた。
　中央には二人のメイド、月原想花と川上紗櫻都がマイクを握った姿で立っていた。
　紗櫻都がマイクを口に持っていく。
「お帰りになられたご主人様、お嬢様、私達のステージをご覧ください」
　アップテンポの曲が流れる。想花と紗櫻都は軽く背中を合わせるようにして歌い出す。
　伸びやかな声に声援が飛ぶ。二人は脚でテンポを刻み、主旋律と高音に分かれて調和の取れたハーモニーを披露した。
　手拍子が始まる。その音に身を任せるようにして二人の動きが速くなった。
　一曲が終わると休む間もなく、ピアノの美しい旋律に人々は耳を澄ます。
　その流れに乗って想花は歌い出す。憂いを秘めた顔が曲調に合っていて、秘めた魅力を一気に解放した。
　隣にいた紗櫻都は、綺麗だよ、と口の動きで伝えた。
　僅か五曲ではあったが、全力を出し切った二人の息は荒い。笑顔は汗で光り、お互いを支え合うようにしてステージを下りた。

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