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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
雪舞う季節のおくりもの
星ヶ丘寮に戻る頃には、陽光は紫を帯びてわずかに残るばかりとなっていた。
「もうすっかり日が短くなったね」
「ああ。いよいよ冬って感じだな……」
時の流れは容赦なく、二人の時間を拭い去ってゆく。あとどれだけ、こうして共に過ごすことができるだろう。ふと寂寥感に襲われ、並んだまま立ちすくんだ。
しかしながら薄暮のこの時間が、情緒に浸りながらの食事などには存外ちょうどよいのだった。
「うん、上手く切り分けられたじゃないか。出来ばえもなかなかだ」
「やったね！ さあ、食べよ食べよ♪」
試食の舞台は、庭に面したサンルームだ。ローテーブルには朝方に仕込んだローストビーフ。あおいが感心する包丁さばきで切り分けてくれた……もっとも修のそれと比べれば少々危ういのだが、それでも成長が見て取れ感慨深い。
サラダとカクテル風ジュースも用意したら、何だか高級レストランのテラス席でいただくディナーの気分だ。
「さて、実食だ」
「いただきまーす」
フォークで口へ運ぶ。噛むなりじゅわ、と旨みが染み出した。
「うわ……美味しい！」
「ああ、いい感じにできたな」
「もちろん、修君に教えてもらいながら作ったんだけど。これを私が手掛けたんだって思うと、なんていうか」
「分かるよ。美味さもひとしおってやつだよな」
「それそれ！」
そのまま食べても美味しいし、付け合わせに用意したスプラウトを肉で巻いたり、マッシュポテトと一緒に食べるのもいい。
「今回は漬けダレを使ったけど、定番の赤ワインソースがけやオレンジソース、バルサミコソースなんかも美味いよ。それに調理法もいろいろで、フライパンだけじゃなくオーブンで焼き上げたり、焼かずに湯煎で仕上げる方法もある」
「へえー！ ひと口にローストビーフって言っても、作り方はたくさんあるんだね」
「ああ。特に湯煎での作り方は簡単だし、肉本来の味わいが楽しめてオススメ。後でレシピをまとめて渡すよ」
「わー、助かる！ ありがとー修君」
「いや……いいんだ。大した手間じゃないし」
本当に、大したことではないのだ。修にとっては。あおいのためを思ってやることに、苦労など無かった。
ふと、あおいがカクテルジュースのグラスを掲げた。どこか悪戯っぽい笑顔。映画のワンシーンでも再現してみたかったのか。
修もグラスを持ち、ちりんと鳴らした。小さな鈴のような音は、サンルームの外、雪舞う空へも響き渡ってゆく。
「ああー、美味しかった。ごちそうさま！」
「どう、自分でも作れそう？」
「そうだね。修君のレシピを見ながらだったら、多分」
「作れるよ。きっと家族も喜んでくれる」
「うん♪」
顔を見せた月がガラスを透かして二人を照らしている。
あおいが家族へごちそうする、その顛末を修は心配していない。彼女はひたむきだし、めげない強さがあるし、成長もしてきた。きっと上手くやるだろう。
そうして家族を労い安心させて、南へ旅立つ。
「……安心した」
「うん？ 何が？」
怪訝そうに首を傾ける彼女へ、何と言葉をかけようかと考えた。旅立つ君へと。
「心配するご家族を安心させたくて……料理だってこんなにできるんだよ、だから自分は大丈夫、安心してって伝えたくて、料理を頑張ってたのかなって。そう思ってさ」
返答を示すまで、しばしの間があった。ややあってあおいは苦笑いし、小さくうなずいた。
「修君には、何でもお見通しだね」
「いや。俺だけのことじゃないさ。そんなふうにあおいの気持ちが伝わることが大事なんだ」
家族も心配していることだろう。しかしそれ以上に不安を感じているのは他でもない、当のあおいだ。既に寮暮らしで親元から離れて暮らしてはいるが、それとはまた別個の緊張感に苛まれるだろう。勉強は優しくないだろうし、人間関係だって新たに構築せねばなるまい。不安なはずだ。
それをできる限り取り除き、晴らしてやりたい。
「だから、安心した。あおいは俺が思っている以上に思慮深くて、思いやりもあって、努力家だ。きっとどこへ行ってもやっていける。ご家族だって俺と同じように思うはずさ」
「そう、かな？ 私、ちゃんとやっていけるかな……」
「俺が保証するよ。それに、何か失敗したりミスをしたって、必ず取り戻せる。何しろあおいには、優秀なブレーンがついているからな」
再び、怪訝そうに眼を開け閉めした。
「それって……修君のこと？」
とんと胸を叩いて見せると、彼女はぷっと噴き出した。
どこか張りつめたものが晴れたのか、あおいはその後も終始、しゃべりどおしだった。先日に一足早くかまくらを作った話。これから盛り上がるだろうウィンタースポーツの、ごひいきの選手の話。ちょっとした勉強の相談も。あおいの笑みが絶えることはなかった。
「もうすっかり日が短くなったね」
「ああ。いよいよ冬って感じだな……」
時の流れは容赦なく、二人の時間を拭い去ってゆく。あとどれだけ、こうして共に過ごすことができるだろう。ふと寂寥感に襲われ、並んだまま立ちすくんだ。
しかしながら薄暮のこの時間が、情緒に浸りながらの食事などには存外ちょうどよいのだった。
「うん、上手く切り分けられたじゃないか。出来ばえもなかなかだ」
「やったね！ さあ、食べよ食べよ♪」
試食の舞台は、庭に面したサンルームだ。ローテーブルには朝方に仕込んだローストビーフ。あおいが感心する包丁さばきで切り分けてくれた……もっとも修のそれと比べれば少々危ういのだが、それでも成長が見て取れ感慨深い。
サラダとカクテル風ジュースも用意したら、何だか高級レストランのテラス席でいただくディナーの気分だ。
「さて、実食だ」
「いただきまーす」
フォークで口へ運ぶ。噛むなりじゅわ、と旨みが染み出した。
「うわ……美味しい！」
「ああ、いい感じにできたな」
「もちろん、修君に教えてもらいながら作ったんだけど。これを私が手掛けたんだって思うと、なんていうか」
「分かるよ。美味さもひとしおってやつだよな」
「それそれ！」
そのまま食べても美味しいし、付け合わせに用意したスプラウトを肉で巻いたり、マッシュポテトと一緒に食べるのもいい。
「今回は漬けダレを使ったけど、定番の赤ワインソースがけやオレンジソース、バルサミコソースなんかも美味いよ。それに調理法もいろいろで、フライパンだけじゃなくオーブンで焼き上げたり、焼かずに湯煎で仕上げる方法もある」
「へえー！ ひと口にローストビーフって言っても、作り方はたくさんあるんだね」
「ああ。特に湯煎での作り方は簡単だし、肉本来の味わいが楽しめてオススメ。後でレシピをまとめて渡すよ」
「わー、助かる！ ありがとー修君」
「いや……いいんだ。大した手間じゃないし」
本当に、大したことではないのだ。修にとっては。あおいのためを思ってやることに、苦労など無かった。
ふと、あおいがカクテルジュースのグラスを掲げた。どこか悪戯っぽい笑顔。映画のワンシーンでも再現してみたかったのか。
修もグラスを持ち、ちりんと鳴らした。小さな鈴のような音は、サンルームの外、雪舞う空へも響き渡ってゆく。
「ああー、美味しかった。ごちそうさま！」
「どう、自分でも作れそう？」
「そうだね。修君のレシピを見ながらだったら、多分」
「作れるよ。きっと家族も喜んでくれる」
「うん♪」
顔を見せた月がガラスを透かして二人を照らしている。
あおいが家族へごちそうする、その顛末を修は心配していない。彼女はひたむきだし、めげない強さがあるし、成長もしてきた。きっと上手くやるだろう。
そうして家族を労い安心させて、南へ旅立つ。
「……安心した」
「うん？ 何が？」
怪訝そうに首を傾ける彼女へ、何と言葉をかけようかと考えた。旅立つ君へと。
「心配するご家族を安心させたくて……料理だってこんなにできるんだよ、だから自分は大丈夫、安心してって伝えたくて、料理を頑張ってたのかなって。そう思ってさ」
返答を示すまで、しばしの間があった。ややあってあおいは苦笑いし、小さくうなずいた。
「修君には、何でもお見通しだね」
「いや。俺だけのことじゃないさ。そんなふうにあおいの気持ちが伝わることが大事なんだ」
家族も心配していることだろう。しかしそれ以上に不安を感じているのは他でもない、当のあおいだ。既に寮暮らしで親元から離れて暮らしてはいるが、それとはまた別個の緊張感に苛まれるだろう。勉強は優しくないだろうし、人間関係だって新たに構築せねばなるまい。不安なはずだ。
それをできる限り取り除き、晴らしてやりたい。
「だから、安心した。あおいは俺が思っている以上に思慮深くて、思いやりもあって、努力家だ。きっとどこへ行ってもやっていける。ご家族だって俺と同じように思うはずさ」
「そう、かな？ 私、ちゃんとやっていけるかな……」
「俺が保証するよ。それに、何か失敗したりミスをしたって、必ず取り戻せる。何しろあおいには、優秀なブレーンがついているからな」
再び、怪訝そうに眼を開け閉めした。
「それって……修君のこと？」
とんと胸を叩いて見せると、彼女はぷっと噴き出した。
どこか張りつめたものが晴れたのか、あおいはその後も終始、しゃべりどおしだった。先日に一足早くかまくらを作った話。これから盛り上がるだろうウィンタースポーツの、ごひいきの選手の話。ちょっとした勉強の相談も。あおいの笑みが絶えることはなかった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年06月07日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年06月14日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年06月14日 11時00分
