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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
雪舞う季節のおくりもの
幸い雪は強くならず、青空も垣間見える中で薄雲からはらはらと粉雪が舞い降りた。初冬のこの時期から降り始めるのは珍しい。気候変動によるものか、あるいは神魂の気まぐれだろうかと修は空を仰ぐが、まあそれも些細なことだろう。
何せ隣には、彼女が歩む。修と共に。
「お肉、どのくらいでできるのかなぁ？」
「本当はすぐにでも食べられるけどね。少し置いて、夕方に試食してみよう」
「楽しみー！」
「冷蔵庫で一日くらい寝かせると、さらに美味くなるよ。自分で作る時はそうしてみるといい」
味がじゅうぶんに染み込むまで、しばし楽しむことにする。二人は雪舞うシーサイドタウンへやってきた。お目当ては駅前の映画館だ。休日ということもあり人の出も多く、街は活気に満ちている。
「さて、何を見る？ あおいはどれが見たい？」
「『ニャリオブラザーズ・ザ・ムービー』に、『スモールマーメイド』。『ニャイルド・スピード/ファイヤーブラスト』もあるよ」
ラインナップを眺めて、あおいははしゃぎがちだ。ここ最近は特に忙しくしていたから、たまの休日、客たちの喧噪に当てられたのだろう。
あおいの選んだ『スモールマーメイド』を鑑賞することにする。キャラメルがけのポップコーンを一つ、コーラを二つ購入してスクリーンへ。大きな器に山盛りのポップコーンは二人でシェアするのが楽しい。
しばし、人魚姫の大冒険に見入る。美しい大海の風景や色鮮やかな魚たちに目を奪われ、ひたむきな人魚の恋に見ている側までも一喜一憂する。
人間の王子との逢瀬にじっと注目しながらポップコーンへ手を伸ばしたら、あたたかいものに触れた。
「！」
あおいの手だった。そろりと横を向くと、頬を赤くした彼女が指を唇に立てていた。声を失くした姫君が、王子の性急をたしなめるように。
「しーっ」
思わず咳払いでごまかした。予期せぬ不意打ちだ。
エンドロールが流れるまで、修の胸は高鳴りっぱなしだった。
映画を楽しんだ後は、タクシーで旧市街へ。参道商店街を抜け、寝子島神社の脇を通り、登山道入り口駅からロープウェイに乗れば、寝子温泉はすぐそこだ。
「あ、湯気がもくもく。すごいねぇ」
「前に乗ったのはいつだったかな。やっぱりゴンドラから眺める景色は格別だ」
「ねー」
しばし絶景を堪能し、砂掛台駅で降りた。
シーサイドタウンの街中を抜け出してきたからか、温泉街の閑静な佇まいはいささか浮ついた彼らの心を落ち着かせてくれる。まだはかなく降り続く小雪と旅館の並びの対比も、なかなかに味わい深い。
二人のお目当ては温泉でしっぽり日帰り入浴湯上り彼女の卵肌、ではなく足湯である。寝子温泉にも足湯をいただけるスポットがいくつかあり、勉強に新生活の準備にとお疲れの身体をぬくぬくの湯で癒すのだ。
「Excuse me！」
足湯に向かって坂道を歩いていると、外国からの観光客だろうカップルに声をかけられた。どうやら道を聞きたいらしいが、英語でまくしたてられ、あおいは少々慌てた様子で修を窺う。
「わわわ。どうしよう？」
「大丈夫だ。まかせて」
不安そうなあおいを背に置き対応する。こちらが学生であることは分かるだろうし、向こうも旅慣れているらしく、的確な言葉で伝えてくれた。修もダテにいつも勉学に勤しんでいるわけではない。習得した英語を駆使して何とか、道を伝えることができた。
「Thank you！ アリガトネー！」
カップルたちへ手を振り送り出すと、あおいを振り返る。
「予約した旅館への道が分からなくなってしまったらしい。近道を教えてあげたよ……どうした、あおい？」
「ふわ～。修君って、すごいんだねぇ」
ぽっかりと口を開けて呆けたように言った。修は頭をかいて頬を赤くする。彼女にそんな風に言われるのは嬉しくも、何だかむずがゆい。
「いや……大したことじゃないよ。それより、あそこが目的地だ」
「おー、いこういこう！」
老舗の温泉旅館なのだが、近年は世相に合わせて少し業態を変えているらしく、テラス席で足湯に浸かりながら飲食もできる、ちょっと変わったカフェのようになっていた。
「これは新しいな」
「こんなところがあったなんて！」
ぬくぬくほっこりの湯に足を浸す。ドリンクにはホットココアを頼んで、内から外からあたたまる。ココアの程よい甘さも、湯加減も絶妙だ。
「ああ～。生き返るぅ」
「たまらないな、これは……」
「ねー」
二人揃って同時、ほうっと深く息をついた。
遠く、沈む夕日が赤く水平線を染めている。まるで別世界のよう。浮世を忘れる別天地、というやつだ。
たまにはゆったりと身体を休める時が必要なのだ。二人はいつだって、全力で駆け抜けてきたのだから。
何せ隣には、彼女が歩む。修と共に。
「お肉、どのくらいでできるのかなぁ？」
「本当はすぐにでも食べられるけどね。少し置いて、夕方に試食してみよう」
「楽しみー！」
「冷蔵庫で一日くらい寝かせると、さらに美味くなるよ。自分で作る時はそうしてみるといい」
味がじゅうぶんに染み込むまで、しばし楽しむことにする。二人は雪舞うシーサイドタウンへやってきた。お目当ては駅前の映画館だ。休日ということもあり人の出も多く、街は活気に満ちている。
「さて、何を見る？ あおいはどれが見たい？」
「『ニャリオブラザーズ・ザ・ムービー』に、『スモールマーメイド』。『ニャイルド・スピード/ファイヤーブラスト』もあるよ」
ラインナップを眺めて、あおいははしゃぎがちだ。ここ最近は特に忙しくしていたから、たまの休日、客たちの喧噪に当てられたのだろう。
あおいの選んだ『スモールマーメイド』を鑑賞することにする。キャラメルがけのポップコーンを一つ、コーラを二つ購入してスクリーンへ。大きな器に山盛りのポップコーンは二人でシェアするのが楽しい。
しばし、人魚姫の大冒険に見入る。美しい大海の風景や色鮮やかな魚たちに目を奪われ、ひたむきな人魚の恋に見ている側までも一喜一憂する。
人間の王子との逢瀬にじっと注目しながらポップコーンへ手を伸ばしたら、あたたかいものに触れた。
「！」
あおいの手だった。そろりと横を向くと、頬を赤くした彼女が指を唇に立てていた。声を失くした姫君が、王子の性急をたしなめるように。
「しーっ」
思わず咳払いでごまかした。予期せぬ不意打ちだ。
エンドロールが流れるまで、修の胸は高鳴りっぱなしだった。
映画を楽しんだ後は、タクシーで旧市街へ。参道商店街を抜け、寝子島神社の脇を通り、登山道入り口駅からロープウェイに乗れば、寝子温泉はすぐそこだ。
「あ、湯気がもくもく。すごいねぇ」
「前に乗ったのはいつだったかな。やっぱりゴンドラから眺める景色は格別だ」
「ねー」
しばし絶景を堪能し、砂掛台駅で降りた。
シーサイドタウンの街中を抜け出してきたからか、温泉街の閑静な佇まいはいささか浮ついた彼らの心を落ち着かせてくれる。まだはかなく降り続く小雪と旅館の並びの対比も、なかなかに味わい深い。
二人のお目当ては温泉でしっぽり日帰り入浴湯上り彼女の卵肌、ではなく足湯である。寝子温泉にも足湯をいただけるスポットがいくつかあり、勉強に新生活の準備にとお疲れの身体をぬくぬくの湯で癒すのだ。
「Excuse me！」
足湯に向かって坂道を歩いていると、外国からの観光客だろうカップルに声をかけられた。どうやら道を聞きたいらしいが、英語でまくしたてられ、あおいは少々慌てた様子で修を窺う。
「わわわ。どうしよう？」
「大丈夫だ。まかせて」
不安そうなあおいを背に置き対応する。こちらが学生であることは分かるだろうし、向こうも旅慣れているらしく、的確な言葉で伝えてくれた。修もダテにいつも勉学に勤しんでいるわけではない。習得した英語を駆使して何とか、道を伝えることができた。
「Thank you！ アリガトネー！」
カップルたちへ手を振り送り出すと、あおいを振り返る。
「予約した旅館への道が分からなくなってしまったらしい。近道を教えてあげたよ……どうした、あおい？」
「ふわ～。修君って、すごいんだねぇ」
ぽっかりと口を開けて呆けたように言った。修は頭をかいて頬を赤くする。彼女にそんな風に言われるのは嬉しくも、何だかむずがゆい。
「いや……大したことじゃないよ。それより、あそこが目的地だ」
「おー、いこういこう！」
老舗の温泉旅館なのだが、近年は世相に合わせて少し業態を変えているらしく、テラス席で足湯に浸かりながら飲食もできる、ちょっと変わったカフェのようになっていた。
「これは新しいな」
「こんなところがあったなんて！」
ぬくぬくほっこりの湯に足を浸す。ドリンクにはホットココアを頼んで、内から外からあたたまる。ココアの程よい甘さも、湯加減も絶妙だ。
「ああ～。生き返るぅ」
「たまらないな、これは……」
「ねー」
二人揃って同時、ほうっと深く息をついた。
遠く、沈む夕日が赤く水平線を染めている。まるで別世界のよう。浮世を忘れる別天地、というやつだ。
たまにはゆったりと身体を休める時が必要なのだ。二人はいつだって、全力で駆け抜けてきたのだから。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年06月07日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年06月14日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年06月14日 11時00分
