【球技大会】冬の熱き決戦！｜リアクション

【球技大会】冬の熱き決戦！

＜３年４組　卓球ダブルス＞

　修は、あおいと揃いの鉢巻を頭に巻いた。
　鉢巻自体はクラス共通だが、二人のにはS.Aと縫い取りが入っている。
　必勝祈念の二人のイニシャルだ。
「行こう」
「うん」
　二人は頷きあい、位置について試合が始まった。
　あおいが前に立ち、アタッカーとなる。
　修はその後ろで相手の動きや表情を見て、次に来る球を予想する。
　着実に球を返すのはもちろん、相手に攻めさせないよううまく落としどころを狙う。
　そして相手の隙を、的確にあおいに伝える。
「……今だ！」
　阿吽の呼吸であおいはスマッシュを決めた。
「すごいぞあおい！」
「やったね、修くん！」
　圧倒的なスピードで二人は勝利を決める。
　目と目で頷きあい、ハイタッチを交わした。

＜１年１組　卓球ダブルス＞

　１年の仙藤蒼は、卓球ダブルスで友達の宮内詠美とペアを組んだ。
　ゲーム好きで集中力のある蒼に対し、詠美はとにかく負けず嫌いな子だ。
「詠美、練習でそこまでやらなくても……」
　練習の時もとにかく周囲がドンびくぐらいに鬼気迫る打ち込みをしていた。
　見た目だけならどちらかと言えばおとなしそうに見えるのに、中身は正反対の熱血キャラだ。

　詠美はストレートの髪を動きやすいようにポニーテールにしている。
　ミス寝子祭コンテストで一緒に踊った時と同じ髪型だな、とふと思った。

「詠美、玉は拾ってあげるから、とにかくガンガン攻めて！」
　試合前にそう声をかけると、
「うん」
　詠美は硬い表情で、敵のほうを向いたままうなずいた。
　ピーッ！
　試合開始の笛が鳴った。
　詠美はとにかく本気で攻めに攻めるので、蒼は詠美のこぼした球を懸命に拾う。
（相手は体育科の子なのにここまで食らいつくなんて、どれだけ負けず嫌いなんだか……）
　水泳部で姉にコーチを受けていた時の頑固な詠美の姿が思い出される。
（でも、ここまで来たら、もうどこまでもついていくしかない）
　試合は同点のまま、一進一退のラリーがどこまでも続く。
（無限に続くんじゃないかしら）
　そんなふうに思えるほどピンポンがはじける音が耳を撃ち続ける。
（力尽きるわけにはいかない……詠美がこれだけ頑張ってるんだもの）　

　だが、ついに終わりはやってきた。
「……！」
　力尽きたのは相手の方。
　バシッ！
　詠美が最後のスマッシュを叩きつけて、勝利をものにした。
「やった！」
　蒼は詠美とハイタッチして勝利を思いっきりかみしめた。
　ずっと気を張っていただろう詠美の硬い表情が、満面の笑みに変わっていた。