ギャルが来た！！｜リアクション

ギャルが来た！！

　chapter.7　一件落着？　

「本当はね、俺たちが指示しちゃったんだ。そこのレディの言う通り。な、やしろん？」
「えっ？　ええっと、ああ、そう……だよ？」
　信彦は、あえて罪をかぶった。同意を求められた昌也も、咄嗟に同調し、頷く。
「今回のことは、本当に悪かったっ！　もうしないから、許してくださいっ！！」
　言って、頭を下げる信彦。彼は紳士として女性を庇い、謝罪することを選んだのだ。
「ちょ、えっ」
　これに一番目を丸くしたのは、他の誰でもない、ギャルたちである。責任をなすりつけた相手が、そのまま罪を認めてかぶってしまったのだから無理もない。

　そこに、海岸の掃除を終えた者たちも合流し、事態を把握する。
「……」
　大勢の視線が、ギャルたちに集まった。それは彼女たちを責めているようにも、嘆いているようにも見えた。彼女たちの心持ちが、そう見させたのかもしれない。
「ちげーよ」
　ぽつりと、スズナが声を発した。彼女は、気まずそうに話を切り出す。
「ウチらだよ、捨てたのは。ガチで」
　スズナは、ついに白状した。信彦の懐の深さが実を結んだのだろうか。スズナは自分たちを見つめる視線の中に、先ほどゴミ拾いをからかったひびきの姿を見つけ、また口を開いた。
「あんたさっきさ、なんでこんなとこにいるんだって聞いてきたじゃん。特別に、教えてやるよ」
　すると彼女は、バッグをごそごそと漁ると、一冊の雑誌を取り出した。目がチカチカするような表紙の、ギャル御用達の本だ。
「その本が、どうかしたのか？」
　ひびきが聞くと、スズナはページをめくって答えた。
「ここ見なよ」
　彼女が指さしたところには、「この夏アガる穴場スポット！」とキラキラした文字で書かれていた。
「なんか、載ってた場所の中でここが一番近かったから行ってみっかって来たんだよ。そしたら思ってたより盛り上がってねーし」
「……で、せめて自分たちだけでも盛り上がろうと思ったのか？」
　ひびきの問いかけに、スズナが頷いた。
「まあ、なんだ……きっと、海開きが始まったらもっと人も増えると思うぞ。それに、人が少なくても、ナンパ男と盛り上がれたんだろ？　なら、悪くない休日だったじゃないか」
　あえて昌也と信彦、そして刀の方を見ながら、ひびきが言った。ギャルたちは返す言葉もなく、ただ黙っている。
「いや、おい、俺は違うぞ！？」
　ひびきの視線を慌てて否定しつつ、刀はギャルたちに言葉をかけた。
「まあ、盛り上がるのはいいけどマナーも守るべきだってことだな。もし反省してるなら、俺たちが集めたゴミを捨てるのを手伝ってくれないか？」
　そんな提案の後、信彦も続けてお願いをする。
「そして、また来てくれるのを待ってるよ！　でも今度はゴミ袋を最初から用意しとくから、そこに捨ててくれると嬉しいな！　だってほら、また俺たちがゴミ拾いをしてたら、美しい君たちに奉仕できないからね！」
「……まあ、そんくらいやってやっけど。なんかこういうの流行ってる系らしいし？」
　スズナが言うと、残りのふたりも大人しくそれに従った。
「ありがとう」
　刀がお礼を言って、これまで集めたゴミが入った袋を渡す。
　こうして、寝子ヶ浜海岸の日常は守られた。

　——と、思われた。

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