はこづめ。｜リアクション

はこづめ。

　自分達の状況を理解した後、吉住志桜里と卵城秘月はお互いに顔を見合わせた。
「うーん変なところに閉じ込められたね、これが俗にいう……いや何でもない」
「誰に断ってこんな狭いのかしらね。……いっそ貴女を縮めればその分余裕ができるかしら、秘ぃ？」
「閉じ込められて3分でその方法を思いつくの、さすが志桜里君。いや、縮めた後に何か不測の事態が起こったら大変だし」
「大丈夫よ。そっちのほうが面白そうでしょ？」
「ただのイタズラじゃないか」
「だってほら」
　秘月は志桜里の指さす方へ視線を向ける。
『脱出まで悪戯し続けよう』
「こ、これは……」
　秘月はごくりと息を飲んだ。
（エロと紙一重、○○しないと出られない部屋！　神魂が流行りにのってる。というか、この手の条件は〇ッチしろがスタンダードだけど）
　驚愕していると、
「わっ」
　体をぐいっと引き寄せられた。それから靴下と靴を脱ぎはなった素足が秘月の足の間に滑り込んでくる。それから、顎をぐいっと引かれ、鼻と鼻がつくかつかないかの距離に志桜里の顔が。
「そういうこと。お安い御用よね」
「……！」
　不意打ちに少し顔が赤くなる。まさか赤面することになるなんて。
　秘月は深呼吸。
「ガチ恋距離っていうらしいわよ、これ。さぁ、どうしましょう？」
　秘月はすっと志桜里の耳元に唇を近づけた。
「かわいらしく額にごっつんことか……どうかな？」
　精一杯余裕を持って言ってみたが。
「いいわね、そ、れ」
　仕返しとばかりにその柔らかい唇で耳たぶを甘噛されてしまう。ゾクゾクと体が震えた。
　額ごっつんというか、一瞬でその先に行ってしまったような。
「固まって、どうかした？」
「！」
　脇の下にすっと手が入り、胸との境、絶妙な位置をツンと突かれる。
「ふっ」
「あら、これくらいで戦意喪失？　抵抗しないのね」
　されるがままに悪戯されつつも、肌の触れ合いが嫌なわけでは無い。むしろ、嬉しかったりする。このぞくぞく感は苦手だが。
　結構な悪戯をされているにも関わらず、箱になんの変化もない。
　秘月は思う。
（これもしかして私も悪戯しないと出れないのでは）
　箱が求めているのは悪戯し合うこと？
　意を決し、志桜里の肩を持って引き離した。
「次は私の番だろ？」
「ふふ」
　志桜里は片脚を足指で撫でつけてから握るように捕まえて、逃がさないようにしつつ左右交代で玩ぶ。
「ちょっ」
「させないわ」
「そ、そうじゃなくて、私からも悪戯をしないと」
「私が秘ぃの分までしてあげる。足癖の悪さは知ってるでしょ？　Footsieにはぴったりなことも」
　志桜里が足の指を秘月のそれに絡ませる。
　良いのだろうか。このまま心地よい肌の感触を楽しむだけで。
「いつまでかかるかは分からないもの。交互にしていたら効率が悪いでしょう？」
　秘月はその言葉を遮るように、額に唇をつけた。
「それどうかな？」
　すかさず志桜里の首元を甘噛み。
「あ」
　志桜里の、少し色っぽい声にほくそ笑む。
「こっちも、行かせてもら」
　少し離れた秘月に、志桜里が唇を重ねた。
「んんっ」
　内心で、志桜里が笑む。
（隙がありすぎよ）
　箱の中が白く輝き始めた。どうやら、脱出条件をクリアしたらしい。
　名残惜しくも、悔しくも、秘月と志桜里は目を閉じた。

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